「72歳の革命家」【第3回】結城義晴の述懐
横山清さんは、
ジャーナリストとしての結城義晴に、
「クリティカル・マス」というテーマ資源を与えてくださった、
私の恩人だ。
話をしているといつも、
その「人間力」のようなものに圧倒されてしまう。
人間としての器は、
北海道からはみ出てしまうほどに大きな横山さんが、
北海道で小売商売をやっているものだから、
「クリティカル・マス」が見えてしまったのに違いない。
それを私は、
「範囲の経済」と「コモディティ概念」に結びつけて、
商業マーケティングの理論構築に腐心している。
たぶん私のライフワークのひとつになると感じている。
それほど私は、横山さんに恩を受けた。
「正規軍は勝たなければ負けである。
ゲリラは負けなければ勝ちになる」私の著書『メッセージ』の言葉は、
実はお断わりしつつ、
塩野七生さんから借りて、
流通業の競争を語ったものだが、
横山さんはとても気に入ってくれた。
「日本のスーパーマーケット業界はこれまでローカルチェーン天国だった」
これも私の言葉に、俊敏に反応してくれた。
ジャーナリストとしての私は、
いつしか横山清という鋭い読者の目を意識し始めていた。
逆にジャーナリストとしての私は、
イノベーター横山清をいつも注目するようになった。
「私たちは最初に地獄を見た」
「16%の荒利で、3%以上の税前利益を出す店を、
20店舗以上つくることができた。
これは極めて先進的な体験でした」
「そよ風のようだけど、
毎日吹き続けるようなイノベーションが必要だと思う」
今回は横山さんから、実に率直な言葉が漏れた。
それは、横山さん自身が経てきた道と、
これから日本の商業が経験するだろう道程とを、
つなぐもののように思えてならない。
「八ヶ岳連邦経営」
「新北海道価格のNHK」
そして極めつけの「大夢(タイム)」
ビジョンを的確な言葉にする知性とユーモア。
若くして北海道大学の名寮長を務めた根っからのリーダーシップ。
さらに世間に逆流し続ける反骨精神。
「イノベーションというよりは、
レボリューションに近いものが来ると思う」
イノベーター横山清は、もしかしたら、72歳にして、
革命家になりかけているのかもしれない。
<㈱商業界社長 結城義晴>