経費について。
財務上は、一般管理費、販売費という。
英語では、“expenses”あるいは“cost”。
前者は「出費」の意味、後者は「原価」の意を含むことがある。
ここでは、expenses。
私の『メッセージ』という本の中で、
「利益を上げる5つの法」という短文がある。
「うまいよ、うまいよ」
利は元にあり。
仕入れ・調達説。
「安いよ、安いよ」
利は売りにあり。
薄利多売説。
「つましく、つましく」
利は内にあり。
コスト説。
「お得です」
利はこの品にあり。
商品開発説。
「豊かさをどうぞ」
利は他の品にあり。
マージン・ミックス説。
利益を生み出す五法。
これらをすべて組み合わせる。
そしてまっ正直に商売する。
この3番目の、「コスト説」、
「利は内にあり」
これが経費問題のことである。
この3番目の、「コスト説」、
「利は内にあり」
これが経費問題のことである。
どう考えたらよいのか。
秋たけなわ。
食欲の秋。
売ろう、売ろうとすると、売れない。
儲けよう、儲けようと考えると、儲からない。
経費を考える。
コストカッターという異名をつけられた日産のカルロス・ゴーン。
「これまで心がけてきたことは、
どちらの方向にも行き過ぎないことです」
これが、コストに対する最も重要なコメントだと思う。
使いすぎない。
切り詰めすぎない。
どうすべきなのか。
ウォルマートの創業者サム・ウォルトン。
競争相手よりもよりよく経費管理せよ
Control your expenses better than your competition.
競争相手という基準を設定した。
これが行き過ぎないことの目安。
例えば、コストコのようなメンバーシップホールセールクラブ。
経費率9%。
サムはコストコ創業者のソル・プライスに学んだけれど、
ウォルマートは、コストコと経費の低さを競わない。
同じフォーマット、
同じマーケットで競争している相手。
その相手よりも、経費を低くコントロールする。
コントロールということは、
高くする場合もある、ということだ。
クリスマス商戦など、
効果が上がるときには、惜しまず、投入する。
人件費も、販促費も。
ピーター・ドラッカー先生。
「コスト管理とは、
コスト削減ではなく、
コスト予防でなければならない」
さすが。
「カット」ではなく「プリベンション」。
「コストが自動的に下がることはない」
だから、「コスト予防」は絶え間ない課題である。
リーダーは、定期的に、コスト点検をしなければならないし、
コスト予防を実行しなければならない。
不断の点検と予防をしてこなかった組織には、
カルロス・ゴーンのような人間が必要となる。
そのゴーンも、「どちらの方向にも行き過ぎない」という。
不断の点検と予防を繰り返すと、
組織構成員のほとんどが、
コスト意識を持つようになる。
それが、自分自身のためであると自覚するようになる。
「イクスペンス」の「コントロール」を脅威として捉えず、
「機会」として、「チャンス」として考えるようになる。
仕事をする者にとって、
経費管理は脅威ではない、
経費管理は機会である。
何度、こう言っても、自覚はしない。
経費の点検から始まる一連の行為を繰り返し行い、
その成果を、数値で示し、
その目的と恩恵を知らしめることによって、
人々は「経費予防」に目覚めるのである。
<結城義晴>