「ウォルマートが日本から撤退する」
この噂は、何度も、
さまざまな人によって、語られた。
しかしそこには、
多分に、感情的な要素がこめられていた。
あるいは、敵対的意図をこめて。
あるいは、期待をこめて。
しかし、私は、ずっと言い続けている。
「本体の業績が極端に悪化しない限り、撤退はない」
これ、私の読み。
昨22日、ウォルマートは、記者会見を開いた。
シニアバイスプレジデントのブレット・ビックス。
西友CEOエドワード・カレジェッスキー。
そして、「株式公開買い付け(TOB)で、完全子会社化する」
と発表。
「従業員と取引先に安心してもらえる」
こう、目的を語る。
つまり、本腰を入れているんだぞ、
という意思を示すために、完全子会社とする。
重要なことだ。
今回、約1000億円の投資。
これまで、1470億円を西友に使っている。
従って、総額2470億円。
しかし、1999年に、ウォルマートが、
イギリスのアズダを買収したときには、
100億ドル(当時の価格で1兆3000億円)が投資された。
すぐにアズダは、セインズベリーを抜いて、
イギリス第2位に躍り出た。
安く買って、価値を高くする。
これが商売の基本だが、
ウォルマートはそれを、やろうとしているだけである。
現在、ウォルマートにとって、
国際部門は、もっとも収益の伸びが良い部門である。
米国内は、ご存知、
スーパーセンターの「飽和」に向かって突き進んでいる。
新しいフォーマットも固まっていない。
だから、国際部門のうち、世界第2位の市場である日本は、
ウォルマートにとって、極めて重要なのである。
日本は、「自助努力」によって、成功することのできる市場。
彼らは、そう考えている。
現在、ウォルマートが成功している国。
カナダ、メキシコ。
北米大陸の両隣。
そしてイギリス。
流通先進国。
もう一つの先進国は、日本。
だから日本に、活路を求める。
しかも、コストコは日本で着々と、
成功を収めている。
「自助努力」が不足している。
こう、考えている。
しかし、投資の仕方としては、極めてまずい。
アズダのときのように、一挙に1兆円の投資くらいがいい。
小出しにしてきた日本のやり方は、上手くはない。
今回、通算2479億円の投資で、
全株式を買い取ろうというのだから、
安い買い方だったのかもしれないが、
価値を高める買い方ではなかったと思う。
西友の劇的改革は、これから本格化する。
感情的にはならず、
敵対的意図もこめず、
期待もこめず、
市場の立場から、
顧客の立場から、
西友を見ていかねばならない。
<結城義晴>