ヨドバシカメラ横浜で、買物した。
携帯電話のカメラとパソコンをつなぐ
カードリーダーとSDカードを入手するためだ。
このブログをつくるために必要なツール。
若い店員の的確で丁寧な説明に、感心した。
あの商品のSKU数。
次々に開発される新製品。
その知識を集積しておくだけでも、
相当の教育と勉強が必要だ。
しかし逆に、ヨドバシカメラでも随分、
セルフサービスが進んだことを、強く実感した。
陳列の基礎技術も習得し、進化した。
よく知る顧客には、セルフサービスで対応する。
知らない顧客には、コンサルティングセールスをする。
そこでさらに、かつての「ステップ」という会社を思い出した。
パソコン販売のディスカウンターとして、名を馳せた企業だ。
ステップ社長・寺田由雄の唱えた
「5つのノー」も有名になった。
5つのノーとは、
説明しない
展示しない、
交換しない、
解約しない、
無料サービスしない。
「ステップ」と寺田由雄は、
超のつくスピード成長を果たし、時代の寵児となった。
そして突然、倒産した。
「5つのノー」は、諸悪の根源のように排撃された。
パソコンが普及し始めたとき、
買いに来るのは、プロかオタクだった。
いや、寺田由雄のカスタマーだった。
寺田由雄の特定顧客だった。
だから、驚くほどの安値を出せば、
それで事足りたし、カスタマーは熱狂した。
「ステップ」は朝、10時に店を開け、
午後2時には売切れで、店を閉めた。
「5つのノー」でも、顧客は満足した。
寺田をヒーローのように信奉した。
しかし今、ヨドバシカメラは、
パソコン売場で、二つの売り方を組み合わせる
セルフサービスとコンサルティングセールス。
パソコンが想像もつかないほどに、大衆化を果たしたからだ。
大衆化の果てに生ずる現象は、
コモディティとノンコモディティの明確化・分化。
前者にはセルフサービスがふさわしい、
後者にはコンサルティングセールスが必要。
「ステップ」の倒産とともに、
「ノーサービスはやはりダメだ」となった。
しかし私は、この寺田由雄の「5つのノー」を完全否定しなかった。
経営の割り切り方のひとつとして、私はむしろ、好きだった。
「ステップ」の成長のなかで、「5つのノー」は確かに機能した。
「交換しない、解約しない」が成立するのは、一瞬である。
独占に近い売り手市場のときだけだ。
しかし、「説明しない」は、
コストコの隆盛を見れば、成立与件は十分にある。
ただし、サンプル陳列は現在のウォルマートのように徹底すべきだ。
「展示しない」は、
インターネット販売においては当たり前である。
「無料サービスしない」は、
実は商売の大原則である。
誤解しないで欲しいのだが、
「サービス」と呼んで、顧客に何らかのことを提供する場合は、
有料でなければならない。
こう考えると、
寺田由雄の「自分の顧客(カスタマー)」への「ノー」は今も、
コモディティ販売の中に、生きていることが分かる。
そして、私たちに、
コモディティが、カスタマーをつくることを教えてくれる。
寺田由雄に対して、私は次の言葉を贈った。
「成功は長期的には失敗の種子を内包している。
それが現実化するのは、
あらゆる原則には例外があることを、
成功が忘れさせるからだ」(高坂正堯)
<結城義晴>