結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2007年10月24日(水曜日)

磯見精祐さんを悼む

10月23日、12時から、
磯見精祐(いそみまさすけ)さんの告別式が、
執り行われました。
鎌倉、浄土宗の名刹「長谷寺」。
ここは磯見家の菩提寺で、代々のお墓があります。
磯見精祐氏告別式1
秋晴れの、すっきりとした日。
磯見さんは、最後まで磯見さんでした。
磯見精祐氏告別式2
76歳とはいえ、現役の執筆者が逝去されることは、
極めて珍しい。

お亡くなりになる前の日にも、
論理的に、整然と、お話されたとかで、
磯見さんならでは、と感心させられました。
今後も、ずっと健筆を振るって欲しかった。
私は、本当にそう思いました。

慶応大学を卒業され、東宝入社。
奥様のたま子さんは、その東宝の女優さんでした。
その後、流通業界へ転進され、
グリーンスタンプ、西友ストアー(当時)、ユニーで要職を歴任。
ダンディーで、ヒューマニストで、正義感が強い読書家・批評家。
ニコニコ微笑みながら、ズバリ、言うことは言う。
とりわけ経営トップには辛口。
磯見精祐氏告別式3

西友時代、ずっと磯見さんの上司で、
尊敬の的だったはずの故上野光平先生は、
63歳で逝かれました。
西友の実質的な創業者。
初期のチェーンストアで、
ビッグになった企業の中の、
最初の専門経営者。
そして流通産業研究所所長・理事長。
類まれなる文章家・読書家。

その最後の病床。
上野さんは、語りました。

「わたしは少しもたじろがない、
たとえ死が訪れようとも、
やりたいことはやった、
これだけやらせてもらって
幸せだった」

磯見さんは、
上野光平を追い続けていました。

死の床でも、
上野さんの「少しもたじろがない」という言葉を、
噛み締めていたに違いありません。

私が、磯見さんと再会したのは10年ほど前だったと思います。
磯見さんが、現役引退され、
㈱商業界会館をお尋ねくださったのです。

以来、ほぼ毎月1回、商業界会館3階クラブ室で、
2時間あまりのディスカッションの時間を共有してきました。
そして、自然に磯見さんは経営評論家として、
商業界が発刊する雑誌の常連執筆者となっていったのでした。

その間、磯見さんは、
杉山昭次郎先生を座長とする「杉山ゼミ」を興し、
自ら事務局長の役目を担ってくださいました。
このゼミから『ヤオコー・スタディ』という未刊の労大作も誕生しました。

現在は、「商業経営問題研究会」となって、
毎月1回の研究会が開催されています。
今後は、ユニー時代の後輩の高木和成さんが、
磯見さんに代わって、
この会を継続発展させてくださいます。

磯見さんの研究対象は、チェーンストアのマネジメント。

磯見語録。

「企業は、目的達成のために人の働きが組織化されたものであり、
人の働きの動因は『仕事のやりがい』であり、
その源泉は組織行動目標への共感である」

私は、磯見さんから、
「マス・カスタマイゼーション」の概念を教わりました。
それを、私は苦心惨憺のうえ、
「特定多数のマーケティング&マネジメント」と名づけました。
さらに、この概念が、商品面では、
「コモディティとノンコモディティ論」へと発展しつつあります。

いわば、私のライフワークの一つに啓示を与えてくださった人こそ、
磯見さんなのです。

磯見さんからの、私宛の最後のメール。
「結城義晴様 
われわれの間で話し合っているうちに
『結城さんに感謝する会』になりました。
結城さんのことですから、
業界団体、大企業を網羅する『結城さんを励ます会』が
開催されると思っておりますので、
われわれはまずささやかでも、
われわれの気持ちをあらわす『感謝の会』にしようということにしました。
その日取りはこれまでのやり取りで
10月19日(金)にさせていただくことにしました」
(2007年9月27日 16:25)

磯見さんのご入院で、この会は延期となりましたが、
最後まで、そのことを気にかけてくださったようで、
私への書きかけのお手紙が、絶筆となりました。

そして「感謝の会」予定の日の翌日、
磯見さんは、逝かれたのでした。

ご冥福をお祈りします。

私はご霊前に誓いました。
いつか、磯見さんのスタイルで、
私が唱えている「商業の現代化」を論理化することを。

合掌。

<結城義晴>

2007年10月23日(火曜日)

ウォルマートが西友をTOBで100%完全子会社にする

「ウォルマートが日本から撤退する」

この噂は、何度も、
さまざまな人によって、語られた。

しかしそこには、
多分に、感情的な要素がこめられていた。

あるいは、敵対的意図をこめて。
あるいは、期待をこめて。

しかし、私は、ずっと言い続けている。

「本体の業績が極端に悪化しない限り、撤退はない」

これ、私の読み。

昨22日、ウォルマートは、記者会見を開いた。
シニアバイスプレジデントのブレット・ビックス。
西友CEOエドワード・カレジェッスキー。
そして、「株式公開買い付け(TOB)で、完全子会社化する」
と発表。

「従業員と取引先に安心してもらえる」
こう、目的を語る。

つまり、本腰を入れているんだぞ、
という意思を示すために、完全子会社とする。

重要なことだ。

今回、約1000億円の投資。
これまで、1470億円を西友に使っている。
従って、総額2470億円。

しかし、1999年に、ウォルマートが、
イギリスのアズダを買収したときには、
100億ドル(当時の価格で1兆3000億円)が投資された。
すぐにアズダは、セインズベリーを抜いて、
イギリス第2位に躍り出た。

安く買って、価値を高くする。

これが商売の基本だが、
ウォルマートはそれを、やろうとしているだけである。

現在、ウォルマートにとって、
国際部門は、もっとも収益の伸びが良い部門である。

米国内は、ご存知、
スーパーセンターの「飽和」に向かって突き進んでいる。
新しいフォーマットも固まっていない。

だから、国際部門のうち、世界第2位の市場である日本は、
ウォルマートにとって、極めて重要なのである。

日本は、「自助努力」によって、成功することのできる市場。
彼らは、そう考えている。

現在、ウォルマートが成功している国。
カナダ、メキシコ。
北米大陸の両隣。
そしてイギリス。
流通先進国。

もう一つの先進国は、日本。
だから日本に、活路を求める。

しかも、コストコは日本で着々と、
成功を収めている。

「自助努力」が不足している。
こう、考えている。

 

しかし、投資の仕方としては、極めてまずい。

アズダのときのように、一挙に1兆円の投資くらいがいい。
小出しにしてきた日本のやり方は、上手くはない。

今回、通算2479億円の投資で、
全株式を買い取ろうというのだから、
安い買い方だったのかもしれないが、
価値を高める買い方ではなかったと思う。

西友の劇的改革は、これから本格化する。

感情的にはならず、
敵対的意図もこめず、
期待もこめず、
市場の立場から、
顧客の立場から、
西友を見ていかねばならない。

<結城義晴>

2007年10月22日(月曜日)

仕事の「お約束」をつくろう

Everybody! Good Monday!

商人の知恵比べの月。
こう位置づけて、スタートした2007年10月。
しかし喧伝されるのは、それに反することばかり。

ミートホープに端を発するかのように、
赤福、比内鶏など、続出。

でも先週、ある地方卸売業の社長に言われた。
「結城先生、
日本の流通業、
いったいどうなるのですか。
こんなに大手の横暴があっては、
私たち生きていけない」

「大手の横暴」
「優越的地位の乱用」
これはいけない。

具体的な事実が上がってきたら、
このブログでも、
問題にしましょう。

しかし自分のことを考えると、
「貧すれば、鈍す」になってはいけない。

「貧すれば、鈍す」
悲しいことです。
恐ろしいことです。

美しい知恵比べと醜い知恵比べ。

美しい知恵は、ジワーッと浮き上がってきて、
真のネットワークをつくっていく。

醜い知恵は、隠そうとしても、必ず、
いつか、表面化する。
隠している時間が長くなればなるほど、
判明したときには重大になる。

食品スーパーマーケットでも、
かねてから、生鮮食品の「リパック」が、
問題視された。

現在はそんなことはないだろうが、
「貧すれば、鈍す」になりかねない。

では、どうするか。

お約束することです。

小売業のお店ならば、お客様と。

卸売業や製造業ならば、お取引先と。
その先のお客様と。

社長ならば社員と、
部長ならば部員と。

店長ならば、店舗の仲間と。
アソシエーツと、
コリーグと、
フェローと。

お約束を、考える。
お約束を、箇条書きに文書化する。
お約束を、仲間に知らせ、納得してもらう。
お約束を、繰り返し、声に出す。

別に会社がやらなくとも、
自分の部署でやればいい。

自分がリーダーとなっているところで、
お約束を明文化する。

キャッチフレーズを考えれば、なお、気が利いている。

志を、定める。
志を、公開する。
志を、共有する。

これを、クレドをいう。
マニフェストという。

ウォルマートには独特のルールや標語があります。

例えば、有名な「サンダウンルール」
<日が暮れるまでに解決せよ>

そして「10フットルール」
<10フィート以内にお客様が近づかれたら、挨拶しよう>

こんなのもある。
「イート・ワット・ユア・クック」
<自分で調理したものは自分で食べよ>
⇒<自分で始めた仕事は、自分でやり遂げよ>

これらは決して、上の方から、
押し付けられたものではない。

下から、横から、
時には上からも、
湧き上がってきたものです。
サム・ウォルトンは、推奨しました。
“Force ideas to bubble up!”<アイデアを沸き立たせよ>

会社の中に、様々な、独特のお約束がある。
それらがすべて、会社の大方針とつながっている。

お約束が、「個」を守る。
お約束を「個」が守る。
お約束が、「全体」を守る。
お約束を「全体」が守る。

社会のルールと同じことです。
憲法と同様です。
私たちは、ルールや法律を守る。
だから私たちは、ルールや法律に守られている。

ここで私がお勧めする、私たちの「お約束」は、
自分でつくることが出来る。
ここがよいところ。

しかしこの「お約束」も、
美しい知恵であることに、
違いありません。
醜い知恵は、ご免です。

Everybody! Good Monday!
「お約束」をつくろう。

<結城義晴>

 

訃報です。

磯見精祐(いそみ まさすけ)さん。享年76。
経営評論家。㈱商業界『販売革新』『食品商業』常連執筆者。
10月20日午後11時25分、間質性肺炎のため、ご逝去。
通夜は、10月22日(月曜日)午後6~時7時。
告別式は、10月23日(火曜日)午後12時~1時。
喪主 磯見たま子(妻)さん。
通夜と告別式の場所は、長谷寺(鎌倉市長彌3-11-2、電話0467-22-6300)。

私は、故上野光平先生の流通産業研究所時代から、
磯見さんにお世話になりました。
グリーンスタンプ、西友、ユニーと参謀的なお仕事を重ねられ、
その後、経営評論家としてご活躍。
「マス・カスタマイゼーション」の概念や、
『商売十訓』の中の「イノベーション」は
「創意を尊びつつ良いことは真似よ」であることなど、
私は、得がたいご教授を受けました。
心より、ご冥福を祈ります。
合掌。

2007年10月21日(日曜日)

ジジの成長 [日曜版]

こんなに
大きく
なりました。

ただ
それだけ。

 

もっと
大きく
なるのでしょうか。

じぶんでも
わからない。

でも
ちょっと
うれしいかな。

<『ジジの気分(未刊)』より>

【生まれてから10カ月後の12月13日】
2006 12 113
はじめての
冬。
寒かった。
でも、
ふかふかだから
だいじょうぶ。

 

【1年と2カ月経ちました。2007年5月6日】
ジジ2007年5月6日
春です。
いい天気。
ごきげんです。

【そして今日、10月21日】
ジジ2007年10月21朝
あさのごはんのあと。
満腹。
冬に向かって、
太ります。

だから、
おとうさんがかえってくると
今日もまた、
銀色のゴミ箱の上に、
のぼります。

このときは、
ちょっとだけ、
からだを
小さくします。
ジジゴミ箱の上

そして、
アイ・コンタクト。
これが、
ポイントです。

2007年10月20日(土曜日)

競争相手は誰ですか

「メトロキャッシュ&キャリー・ジャパンの競争相手は誰ですか」

ちょうど5年前、
私はCEOのドクター・ハンス・ヨアヒム・クァーバーに尋ねた。
代わって日本社長のアントン・クナイフが答えた。

 

「競争相手はありません」
          ●
キャッシュ&キャリーというフォーマットは日本には存在しない。
業者向け会員制現金卸しのワンストップショッピング業態の完成型は,
日本にない。
だから直接のコンペティターは今のところ日本には見当たらない。
これが彼らの回答であった。

しかし、顧みるとこれは、
既存の食品現金問屋の群れを、
侵略対象としていることを意味する。
視野を広げると,
「食品問屋すべてを競争相手にする」との宣言でもある。

年間100兆円を扱う日本食品卸売業界の
「業態化」の未整備状況を突いているとも判断できる。
          ●
それにしても「コンペティターはいない」とはよく言ったものだ。

正直に言おう。

私は常に、自分の競争相手を見つけ出し、
密かにライバル心を燃やしつづけてきた。

生まれてからずっと。
そして今も。

それが私の生きるエネルギーだったように思う。

最初は仕事の同僚、先輩。
次は隣の部署の人間。
その次は他社の同業者。
その次は一流の先達たち。

同じ道を走っている者を、
次々にコンペティターにして、
追いつき追い越せと、自らを叱咤する。
それが自分を成長させる。
良い仕事に結びつく。

巨人なら阪神。
早稲田なら慶応。
矢吹丈なら力石徹。

小さな時から、
始めから、
強い好敵手が存在するほど、
両者の競争の舞台となるマーケットは爆発する。
拡大する。
           ●
「競争相手は誰ですか?」⇒「お客様」 

「競争相手は誰ですか?」⇒「自分自身」

私には、これらの答えに、
ある種の意図が感じられてならない。

それ自体美しく聞こえるが、
結果として市場の縮小を誘導する発想のようにも思える。

かといって「競争相手は目前の同業者」という現実が、
私たちの前に大きく横たわっていて、
「競争相手は存在しない」というメトロの発言との落差を,
私たちに自覚させる。

だから、私の結論はいつもこの言葉にたどりつく。

「戦略上はすべての敵を蔑視せよ。
戦術上はすべての敵を重視せよ」

           ●
改めて、あなたに問おう。
「競争相手は誰ですか?」
「あなたは競争相手のことをどれだけ観察していますか?」
「どれだけ知っていますか?」
「あなたは競争相手を通して、
自分の本質をどれだけ理解していますか?」

「あなたには真の競争相手がいますか?」

あなたも、
わたしも。

競争相手を、
どこの、
誰に、
設定しているか。

それによって、
自分の志が、
判明する。
自分自身のこれからの生き方が、
見えてくる。

<結城義晴>

2007年10月19日(金曜日)

7兆5000億円惣菜市場に物申す「生で食べさせよ」提案

惣菜デリ情報満載100号記念
10月18日、東京丸ビル8階。
『惣菜デリ情報満載便』100号記念セミナーが開催された。
日本フードサービス専門学院発行。
ご存知、林廣美先生が主催。

巻頭には、林先生の言葉がある。
「惣菜ビジネスはまだまだ発展拡大する。
揚げ物、焼き物、弁当、サラダという
単純なカテゴリー分類から始まった惣菜ビジネスが、
中華メニュー、エスニック、イタリアン、デザートなどなど
新しいカテゴリーを飲み込んで、
拡大発展を続けて売上げを押し上げている」

そしてこう予測する。
「これからの惣菜新カテゴリーは“オーガニック”だろう」

私も、このセミナーの最後に、
スペシャルゲストとして、林先生とのトークに出講。
勉強になった。

100号記念といえば、
発刊開始は9年前。
私が『食品商業』編集長を務めていた頃。
当時の惣菜産業の市場規模は、5兆8000億円。
現在、7兆5000億円。

当然といえば当然だろうが、
これこそ消費トレンドの大潮流で、
少子高齢化社会といえども、
この傾向はとどまるところを知らない。

まだまだ伸びる。

他のマーケットは縮んで、このマーケットが伸びる。
だから、マーケットシェアは、さらに大きくなる。
社会的使命が、重くもなる。

そこで、安全性と健康の問題が、クローズアップされる。

「食育」やオーガニックが、重要課題となる。

100号記念セミナーは、こんな切り口で開催された。

まず、社団法人日本惣菜協会会長・石田彌氏。
「食生活向上に寄与する中食事業の未来に大切なもの」

農林水産省消費安全局情報官補佐食育推進班・勝野美江氏。
食事バランスガイドの実践」

さらに日本医療栄養センター所長・井上正子氏。
「一歩リードする、健康メニュー提案」

そして、『惣菜デリ情報満載便』編集長・井原美恵子氏。
「取材を通して考えるこれからの商品開発」
1万3000メニュー分析から見た商品ニーズは、面白かった。

さて、最後が、林先生と私のセッション。
林先生は「生を食べる」という主張。

これ、優れた感覚。
生に近い形で、食べてもらうという提案。
青果ならば、サラダ。
魚も、刺身やカルパッチョなど。
肉でもタタキ。
日配でも、そのまま食べてもらう商品だらけである。

そう考えると、
スーパーマーケットで販売する生鮮3品、日配は、
みな惣菜となる。
それが「食育」に直結する。

「高い値段のトマトはなかなか買われない。
しかし、高い塩や油は、喜んで買ってくれる。
だから、新鮮なトマトに、
おいしい塩をぶっ掛けて食べてもらう。
この提案」

惣菜デリ第一人者の林博美が主張する「生で食べさせる」。
このパラドックス。林式。

私の主張は、以下。
「テーマは資源。
資源は最大限活用すべき」

食育は、現在、国是ともいうべきテーマ資源である。
2005年に『食育基本法』が制定された。
少子高齢化社会は進行している。
アメリカのオーガニック・ブレイクを見る限り、
日本市場にもこの影響は、必ず出る。

アメリカでは、オーガニック商品が急ピッチで生産されている。
3年後には、彼の国で、それは在庫過剰になる。
そして、日本に入ってくる。
それが、「食育」というテーマ資源と結び合う。

いまや、私の確信に近い市場予測。

漫才にたとえて、
林廣美、ボケ。
結城義晴、ツッコミ。
このセッションであったはずが、
終始、林先生に質問を浴びせられ、
私が、答えるという展開。

でも、勉強になったし、面白かった。

わざわざ聴きに来てくださった皆さんに、感謝。
中央化学㈱川勝利一さんと㈱むすんでひらいての原田政照社長には、
特に感謝。
もちろん林先生、竹石忠さんにも心より感謝。

<結城義晴>

2007年10月18日(木曜日)

経費管理は、経費削減ではなく、経費予防である

経費について。

財務上は、一般管理費、販売費という。

英語では、“expenses”あるいは“cost”。
前者は「出費」の意味、後者は「原価」の意を含むことがある。

ここでは、expenses。

私の『メッセージ』という本の中で、
「利益を上げる5つの法」という短文がある。
メッセージ
「うまいよ、うまいよ」
利は元にあり。
仕入れ・調達説。 

「安いよ、安いよ」
利は売りにあり。
薄利多売説。

「つましく、つましく」
利は内にあり。
コスト説。

「お得です」
利はこの品にあり。
商品開発説。

「豊かさをどうぞ」
利は他の品にあり。
マージン・ミックス説。

利益を生み出す五法。
これらをすべて組み合わせる。
そしてまっ正直に商売する。

この3番目の、「コスト説」、
「利は内にあり」
これが経費問題のことである。

この3番目の、「コスト説」、
「利は内にあり」
これが経費問題のことである。

どう考えたらよいのか。

秋たけなわ。
食欲の秋。

売ろう、売ろうとすると、売れない。
儲けよう、儲けようと考えると、儲からない。

経費を考える。

コストカッターという異名をつけられた日産のカルロス・ゴーン。
「これまで心がけてきたことは、
どちらの方向にも行き過ぎないことです」

カルロス・ゴーン
これが、コストに対する最も重要なコメントだと思う。
使いすぎない。
切り詰めすぎない。

どうすべきなのか。

ウォルマートの創業者サム・ウォルトン。
競争相手よりもよりよく経費管理せよ
Control your expenses better than your competition.

競争相手という基準を設定した。
これが行き過ぎないことの目安。

例えば、コストコのようなメンバーシップホールセールクラブ。
経費率9%。
サムはコストコ創業者のソル・プライスに学んだけれど、
ウォルマートは、コストコと経費の低さを競わない。

同じフォーマット、
同じマーケットで競争している相手。

その相手よりも、経費を低くコントロールする。

コントロールということは、
高くする場合もある、ということだ。

クリスマス商戦など、
効果が上がるときには、惜しまず、投入する。
人件費も、販促費も。

ピーター・ドラッカー先生。
「コスト管理とは、
コスト削減ではなく、
コスト予防でなければならない」

さすが。

「カット」ではなく「プリベンション」。

「コストが自動的に下がることはない」

だから、「コスト予防」は絶え間ない課題である。
リーダーは、定期的に、コスト点検をしなければならないし、
コスト予防を実行しなければならない。

不断の点検と予防をしてこなかった組織には、
カルロス・ゴーンのような人間が必要となる。
そのゴーンも、「どちらの方向にも行き過ぎない」という。

不断の点検と予防を繰り返すと、
組織構成員のほとんどが、
コスト意識を持つようになる。
それが、自分自身のためであると自覚するようになる。

「イクスペンス」の「コントロール」を脅威として捉えず、
「機会」として、「チャンス」として考えるようになる。

仕事をする者にとって、
経費管理は脅威ではない、
経費管理は機会である。

何度、こう言っても、自覚はしない。

経費の点検から始まる一連の行為を繰り返し行い、
その成果を、数値で示し、
その目的と恩恵を知らしめることによって、
人々は「経費予防」に目覚めるのである。

<結城義晴>

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