しみじみと「店」の話。
小売業にとって、
店舗は,
すべてを生み出す源である。
たった1店舗「アイクス」のクレド。
土地を手当てし、
建物を建て、
売場を整え、
商品を並べる。
人を配置し、
宣伝をし、
接客をして、
販売する。
外食業も、
サービス業も、
宿泊業も、
基本的にこの構造は変わらない。
卸売業は、
その店を営む小売業や外食業に、
品揃えを提供する機能を有する。
品揃えを実現させるために、
商品の情報を供給し、
商品そのものを配送する。
製造業は、
商品をつくる。
そして商品を顧客に届ける。
だから商品と顧客を結びつける活動を、
活発に行う。
これをマーケティングという。
マーケティングが、
製造業から生まれたのも、
なるほどと頷ける。
その、小売業の店。
最初の小売商人は、
「店」を持つことができなかった。
だから「店」にあこがれた。
「店」に恋い焦がれた。
たいていは、自宅を店にした。
自宅が狭く、
みすぼらしく、
立地が悪いと、
行商や引き売りのほうが、
顧客にとって、
便利であった。
やがて、資金がたまると、
店を持つ。
土地を手当てし、
建物を建て、
売場を整え、
商品を並べる。
人を配置し、
宣伝をし、
接客をして、
販売する。
フランチャイズチェーンで、これを始める者もいる。
店と商売のパッケージを、
料金を払って提供してもらう仕組み。
ウォルマートの創業者サム・ウォルトンは、
まさにこの例であった。
最初の店が好循環を始めると、
まずは店を大きくすることを考える。
誰でも。
当然ではある。
しかしこれは、
土地を拡張し、
建物を拡大し、
売場を広げ、
品揃えを充実させ、
在庫を増大させ、
人を増員し、
接客を増やして、
販売額を高くすることである。
これには、一つの危険が伴うが、
店を大きくする勢いに乗って、
成功する。
こうして、適正規模の店が出来上がる。
私は、この1店舗の店を、
「生存単位」と名付けている。
生存単位の議論は、
すべてに共通するテーマとなる。
そして実は、この生存単位の店が、
一番強い。
崖っぷちにある店。
後がない店。
店を経営する人間が命をかけた店。
どんなに大きな店がやって来ようと、
生存単位の店は、潰れない。
もちろん「生存単位の店」には、
イノベーションがなければならない。 常に、自分の顧客を見続け、
その顧客に応える用意がある店。顧客の要望に応え続けると、
場合によっては、
さらに店を大きくしなければならなくなることもある。
店の場所を移転しなければならないこともある。
遠くからやってきてくれる顧客のために
同じタイプの店を、他の場所に、
出さなければならなくなる場合もある。
そうして今度は、支店経営に移ってゆく。
支店経営では3店までが一つの単位となる。
これを「最小競争単位」と呼ぶことにする。
最小競争単位の3店は、
三角形の位置に配置する。
地理的条件の制約があって、
直線で配置せざるを得ない時には、
真ん中の店を、核とする。
これが「最小競争単位」である。
そして、この競争単位も強い。
もちろん最小競争単位でも、
常に顧客を向いたイノベーションが必要である。
イノベーションとは、
「顧客を向いたうえで、自らを変える」行為である。
「社会正義にのっとって、自らを変える」行為である。
生存単位、最小競争単位は、
逆に、最もイノベーションしやすい。
イノベーションのスピードが速い。
生存単位と最小競争単位は、
そんなマネジメント単位であると認識すべきである。
問題は、このイノベーションに近い単位の組織が、
いかにモチベーションを維持し続けるかということになる。
しかし、モチベーションの維持が可能ならば、
私はこの単位が、最も確実に、
人間としての幸せを提供してくれるものだと思っている。
今、様々な企業において、
会社の売却や合併、統合が盛んに行われている。
私は、ここで、
商人としての幸せと社会貢献という二つの観点から、
ものを考えたいと思う。
私は、30年間、様々な商人を見てきた。
社会貢献の大きな商人。
幸せな商人。
どちらをも獲得した商人。
どちらもかなえられなかった商人。
社会貢献を果たした商人。
幸せになった商人。
しかし、幸せ基準で見る限り、
生存単位と最小競争単位こそが、
やはり最良であると思う。
<つづく、結城義晴>