お正月なので、
私の好きな詩を。
このブログで、
詩の連発なんて。
意外ですかね。
でもいいかな。
初売りが始まって、
仕事に入っている人も多いとは思いますが、
感じ取ってみてください。
詩人の言葉を。
その先にあるお客さんの心を。
まず、「かぞえうた」から始めよう。
いちじく
にんじん
さんしょに
しいたけ
ごぼうに
むくろじゅ
ななくさ
はつたけ
きゅうりに
とうがん(日本わらべうた)
商売の基本は、
数字です。
昔の人は、
こうやって子供に数字を教えました。
生活感覚で、
数字を楽しみました。
基礎的な野菜が並んでいます。
ただそれだけ。
このわらべうた、
なぜかとても好きなのです。
「つけものの おもし」
つけものの おもしは
あれは なに してるんだあそんでるようで
はたらいてるようで
おこってるようで
わらってるようで
すわってるようで
ねころんでるようで
ねぼけてるようで
りきんでるようで
こっちむきのようで
あっちむきのようで
おじいのようで
おばあのようで
つけものの おもしは
あれは なんだ(まど・みちお)
わたしがもっともそんけいし、
としとったら、ああなりたいとおもってる詩人。
わたしは、
にほんのしょうぎょうのせかいで、
つけものの おもし
に なりたい。
「利益」
海を売って十円もうけ
山を売って十円もうけ
空を売って十円もうけ
健康を売って十円もうけ
人買いをした山椒太夫
安寿・厨子王の昔よりも
もっとあくどい会社のあきない。
としよりを売って十円もうけ
子供を売って十円もうけ
明日を売って十円もうけ
もとでの安い薄利多売、
海を売って十円もうけ
山を売って十円もうけ
空を売って――。(石垣りん)
強烈な女性。
働く女性。
こんなのもある。
「くらし」
食わずには生きてゆけない。
メシを
野菜を
肉を
空気を
光を
水を
親を
きょうだいを
師を
金もこころも
食わずには生きてこれなかった。
ふくれた腹をかかえ
口をぬぐえば
台所に散らばっている
にんじんのしっぽ
鳥の骨
父のはらわた
四十の日暮れ
私の目にはじめてあふれる獣の涙。(石垣りん)
でも、私、大好きなんです。
こういうの。
意外なのもひとつ。
「はるかぜ」
ああ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
空は曇ってはなぐもり、
風のすこしく荒い日に。ああ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
部屋にあるのは優欝で、
出掛けるあてもみつからぬ。
ああ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
鉋の音は春風に、
散って名残はとめませぬ。
風吹く今日の春の日に、
ああ、家が建つ家が建つ。(中原中也)
よいですね。
中也のこんな感じ。
新春気分。
「ああ、店が建つ店が建つ」
私も詩ってみましょうか。
一方、こんなのも好きです。
「言葉のない世界」
1
言葉のない世界は真昼の球体だ
おれは垂直的人間言葉のない世界は正午の詩の世界だ
おれは水平的人間にとどまることはできない
2
言葉のない世界を発見するのだ 言葉をつかって
真昼の球体を 正午の詩を
おれは垂直的人間
おれは水平的人間にとどまるわけにはいかない(田村隆一)
そうそう、そのとおり。
私、影響、受けてる。
「出発」
おまへは信じない 私の生を
私は出発する 雨の中を暗い岸壁に私の船が着く
……そして私の生の幻影が
黙って私は手を振る
それなのに おまへは信じない
私の生を 雨の中の私の出発を(田村隆一)
今の、私の心境。
ぐっと気分を変えましょう。
おおきな
おおきな
ホームランあのそらの
あのそらの
むこうまで
ボールが
ボールが
とんでゆく
おおきな
おおきな
ホームラン(詠み人知らず、少年ソフトボールの応援歌)
とにかく大声で歌うと、
元気が出てくる。
子供たちが、
声を揃えて、
一生懸命歌う。
すると、試合に負けていても、
みんなに元気が出てくる。
最後に、もう一度、戻る。
「かぞえうた」
ひとつの空を
ふたつの風が
みっつの足で
駆けてゆくよっつの雲が
いつつの腕で
むっつの光
通せんぼ
ななつの海に
やっつの思い
ここのつ虹が
架かったら
とおの声で
とおの顔で
とおの人が
笑ったよ(味曽 司こと結城義晴)
軽い感じで、
数えてみる。
それもよし。
気は長く、
心は丸く、
腹立てず、
人は大きく、
己は小さく。
そして、みたび、年賀状。
「志定まれば、気盛んなり」(吉田松陰)
言葉を使って、
言葉のない世界へ。すべての詩人に感謝。
。<結城義晴>
【出典】
「つけものの おもし」<『いわずにおれない』集英社刊>
「利益」「くらし」<『石垣りん詩集』思想社>
「はるかぜ」<『中原中也詩集』彌生書房>
「言葉のない世界」「出発」<『田村隆一詩集』思想社>