イトーヨーカ堂創業者。
セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。
伊藤雅俊さん、現在、83歳。
今年、84歳の年男でいらっしゃるそうだ。
昨28日、東京・二番町の本社でお会いした。
日本セルフ・サービス協会は今年、50周年を迎える。
その記念誌の特別インタビュー。
私が聞き手兼書き手。
従って、同協会の三浦正樹専務理事と同行。
三浦さんも、優れた聞き手。
二人がかりで、「化け物級」に対峙した。
ちなみにこの「化け物級」なる言葉、
日本リテイリングセンター渥美俊一先生や、
イオン岡田卓也名誉相談役、
ライフコーポレーション清水信次会長に対して、
そしてあの世代に対して、
私が使わせてもらう「尊敬語」。
お許しを。
さて、午後3時30分のお約束、
ぴったりにインタビューが始まったと思ったら、
まず三浦さんと私に、
伊藤さんから質問攻め。
そして、丁寧にメモを採る。
すぐさま、目の前でホッチキスでとめて、整理する。
しかし私、後で気づいた。
あらかじめ質問事項をお送りしておいた。
8項目。
最初の質問攻めは、
その質問項目に答えるための、
予備知識を得ることを目的にしていたのだ。
しかも予備知識を得る質問が、
自らの財産になってゆく。
私たちは、精一杯答えた。
だから、伊藤さん、私のインタビューに、
次から次から惜しげもなく、貴重な資料を提示しつつ、
万遍なく答えてくださった。
約2時間。
あっという間に過ぎた。
この姿勢、伊藤さんは事実を大切にする人。
データを重視しつつ、物事を判断する人。
商人の典型でありながら、
科学者のような側面を持つ。
マーチャント&サイエンティスト。
それを自ら「才覚と算盤」と言った。
誰にも、商人であることと、
科学者であることは、
必要だと思う。
例えば、学校の先生も、
プロスポーツ選手も、
アーティストも。
プロフェッショナルとして、
それでお金を稼ぐのならば、
それで給料をもらうのならば、
商人であるとともに科学者でなければならない。
私はずっと、「商人の魂を持ったジャーナリスト」を標榜しているが、
「商人の魂と科学者の眼を持ったジャーナリスト」
でなければいけない、と伊藤さんから教えられた。
だからピーター・ドラッカー教授とも、
伊藤さんは本当に親しかった。
ドラッカー教授の父上が、
オーストリア皇帝から授けられた表彰状を見せてもらった。
現物をプレゼントされたのだという。
インタビューの内容は、
この50年間についての伊藤さんの時代の見方が前半。
ジョン万次郎の半生を、
伊藤さんは盛んに言った。
それは150年前のこと。
だから50年など「つい、こないだのこと」。
しかしこれから50年は、「まったく分からない」。
今が、その大分岐点。
「今年、潮目が変わった」
「先は見えない」
そんな時代だ。
だから、「お客さんに支持されることだけを考えて商売する」
これである。
「お客さんに売ることを、
楽しみにしていればいいんじゃないかな」
「大きくなると、
大きな顔をするようになる。
小さい人に対して大きな顔をする。
僕は、小さい人にも大きい人にも、
変わらないでしょ。
小さい人ほど、
ちょっと大きくなると、
大きな顔をする」
そして、
「こころから、ありがとう」
これが大事。
これから、私、原稿を書く。
ゆっくりと熟成させて。
内容は、日本セルフ・サービス協会50周年記念誌に。
ご覧頂きたい。
6月6日に記念式典が開催される。
そこで配られる。
協会に加盟していない方は、
6月6日以降にお問い合わせいただきたい。
最後に、伊藤さんは科学者の眼を持つ。
だから、現在の商業に対して、
本当に厳しい見方をしている。
私には、それが一番、印象に残った。
別の言い方をすれば、
私が最近盛んにいう「イノベーション」である。
イノベーション無き者は、こうなる。
「1990年の大手20社のうち
7社がつぶれた」<伊藤雅俊>
<心から、ありがとうございました。結城義晴>