昨3月24日、
イオンは、「温暖化防止宣言」を発表した。
2012年度までに、総合スーパー、スーパーマーケット約1000店で、
「レジ袋の無料配布を中止」する。
「無料配布の業界慣習」を顧客の理解と協力のもとにやめていく。
それは二酸化炭素削減を目標にするのであり、
それが地球温暖化対策の一助になる。
こういう考え方だ。
この発表がなされているちょうどその時、
私たちは、商業経営問題研究会を開催していた。
通称RMLC[リテールマネジメントラーニングサークル]。
そしてゲスト講師は、そのイオンの
専務執行役デベロッパー担当・林直樹さん。
場所は、東京麻布台の商業界会館2階。
午後1時30分から4時まで。
充実したレクチャーとディスカッションの時間。
林さんのタイトルは、
「イオンのショッピングセンター戦略」。
この話の中で、林さんは、
イオンの「温室効果ガス排出量削減の目標値」を明示してくれた。
全店目標であるから、
これはたいへんな仕事となる。
イオンの業界リーダーとしての心意気が感じられる目標値だ。
もちろんグローバル10を目指す「経営の質」の面での向上が、
その目標にある。
現在、日本にはモール型ショッピングセンターが111カ所ある。
イオンはそのうち86カ所、約76%のモールを展開している。
イオンの大型ショッピングセンターは、2核1モールを原則としている。
両サイドに二つのアンカーストア。
アンカーというのは、船の碇(いかり)のこと。
集客力の中心となる。
そんな大型の店が二つあって、
その間をモールがつなぐ。
テナントの専門店がズラリと並ぶ。
これが基本。
基本に忠実なモール型SC、意外に少ない。
現段階のイオンの場合、核店はジャスコの総合スーパーと、
百貨店や大型専門店、家電店など。
サブの核店をどこにするのかが、課題の一つ。
このモール型デベロッパー事業は、
営業利益7%を目標に据えている。
ちなみにスーパーマーケットを核とする近隣型SCは、
5%の営業利益が目標。
ただしSC事業は、営業利益は出るが、
キャッシュフローが出にくい。
これが問題点。
店舗はお金を回すのが、利益の源泉であるが、
SCはお金を寝かす。
だから店舗からは回転差資金が出るが、
SCは逆ザヤになりかねない。
地方のスーパーマーケットが、
自らSCを開発運営して失敗するのは、
このためだ。
せっかく、何十年か前に、かけ売りの商売をやめて、
スーパーマーケットという回転差資金の出る商売に、
やっと転換してここまで来ながら、
またSC開発で資金が回りにくい商売に手を染めてしまう。
この矛盾の繰り返し。
イオンは、そこでイオンモールという別会社をつくった。
本体のデベロッパー事業には、
林さんのようなエースを投入している。
さて、この秋、イオンは武蔵野線沿線の新駅に、
街づくりを構想した最大のモールを作る。
林さんの話も、そこに時間が割かれた。
このSCは現在のイオンの力を最大に発揮した
注目の「エコストア」でもある。
よどみなく、日本のショッピングセンターの現状と、
イオンの戦略を語ってくれた林さんにRMLCメンバーから拍手。
その後、質疑応答。
RMLCは、前身の「杉山ゼミ」の時代、
故磯見精祐座長の時代から、突っ込みが激しいことが特徴。
今回も、同様。
しかし、林さん、ここでもよどみなく、
誠実に答えてくださった。
難問にも、即答できるということは、
すでに社内で、こういった議論が済んでいるということ、
あるいは常にこういった議論が戦わされているということを示す。
改めて、イオンの社風の一端を垣間見た気がする。
「説得と納得です」
これはデベロッパーとしての開発業務のときの心得だが、
社内、グループ内においても、
「説得と納得」
これがきちんと行われている。
林直樹さんに、心より、感謝。
次回のRMLCは4月23日です。
通常ならば、4月17日なのですが、ご存じ、
「商人舎発足の会」がこの4月第3木曜日
に開催される。
全員集合です。
よろしくお願いします。
<結城義晴>