三つの次元が交錯するような、
不思議な感覚を覚えています。
このブログを書いているのは、
サンフランシスコの5月9日、午前3時。
しかし日本を想像しながら書いているから、
日本時間は10日、午後7時。
内容は、時系列で追いかけているから、
まだラスベガスの7日、午前10時。
三つの時間と場所を意識しながら、
ものを考え、思い出し、
事実を書いていく。
不思議な感覚です。
しかし、これは海外旅行をしなければ、
味わえない感覚でもあります。
デンゼル・ワシントンの「デジャヴ」という映画、
思い浮かべます。
クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングにも、
「デジャヴ」というアルバムがあった。
「デジャヴ」には名作が多い。
さて、過去が現在を追いかける展開。
5月7日の砂漠の中のラスベガスの朝。
ラスベガス渓谷の南西部のヘンダーソン地区。
典型的なサバーバン。
サバーバンというのは、単なる「郊外」ではなく、
新興住宅地が広がる地域。
だから小売業は、何をやっても比較的うまくいく。
しかしだから、次々に競合店が出てくる。
それも一番新しくて強いフォーマットで。
だから激戦区となる。
だから見どころ満載となる。
今回のコーディネーターは、
アクセス・インターナショナルのロバート・鈴木さん。
私は、あくまでエグゼクティブ・アドバイザー。
この後の記事の数字など、ロバートさんの解説に、
現地店長などのインタビューから得られた情報、
そこに私の知識・情報を混ぜ合わせたものになる。
ロバートさんに感謝。
店の見方は、いつものように私流。
①スミス・フレッシュフェア
全米第1位のスーパーマーケット企業・クローガーの、
ネバダ州・ユタ州などを担当するのがスミス。
ソルトレークシティを州都とするユタ州出身で、
いま約130店舗。クローガー傘下。
ラスベガスでは39店舗で、この地区の31.7%のシェアを占める。
ナンバー1シェアの企業。
そのアップスケール・タイプが、このフレッシュ・フェア。
フード&ドラッグ。
1999年オープンの8年目。
店舗面積は7万平方フィート(2000坪)。
週の売上高60万ドルというから年間30億円を超える規模。
青果部門は、スーパーマーケットの生命線。
この店では全体の10%の構成比になる。
ボリューム陳列も原則通り。
日本のスーパーマーケットのほとんどが放棄してしまった。
青果部門のトップに来るのが、
オーガニックコーナー。
見事!
担当者にカメラを向けたら、ポーズをとってくれた。明るい。
成績がいいから、明るくて元気なのです。
だから成績も良くなる。
精肉対面売り場では、大皿盛りで、
その上に肉を盛り上げて陳列している。
ミート・シーフードも、10%の構成比。
グロサリーの構成比は、35%から40%。
缶詰売り場は、客層ごと、用途ごとに、
ベースの部分を色分けして、プレゼンテーションしている。
ストアディレクターのダニーさんが、インタビューに応じてくれた。
ロバートさんとともにFMIジャパンの中間徳子さんが的確な通訳を。
ダニーさんによると、この店の従業員数は150人。
45%がフルタイマーと、多い。
「客数は日曜、土曜、月曜、金曜、水、火、木の順」
「テスコのフレッシュ&イージーが近隣にオープンしたが、
全く影響はない。
うちは前年比118%で伸びている」
「フレッシュフェア全体のアップスケールが、
最強のカスタマーサービスです」
店舗総合力のスケール(基準)を上げ続けることが、
最大の競争対策であるというコメント。
②ホールフーズ・マーケット
ご存じオーガニック&ナチュラル・スーパーマーケット。
昨年、この分野の第2位ワイルド・オーツを買収した。
その分、ちょっともたもたしている感じ。
米国の消費が減退していて、
ホールフーズにとって、正念場を迎えている。
年商65億9200万ドル、276店舗。
既存店の伸び率は、なんと7.1%。
それでも最近の3年間は既存店がずっと2桁で伸びていたから、
やや停滞感がある。
この日のこの店のオーガニック青果アイテム数は196だった。
青果部門壁面の「ショートカット・シェフ」という対面コーナー。
野菜、果物をカットし、調理するサービス。
コーヒー、お茶の売り場には、おなじみのUCCな缶。
その下の段に伊藤園の500ミリリットルペットボトル。
ホールフーズの良さは、店舗間のばらつきが極めて少ないことだった。
それが少し、崩れているように思われる。
マーチャンダイジングの問題ではなく、
マネジメントの問題に起因する。
③フレッシュ&イージー
イギリス最大の小売業は、スーパーマーケット企業テスコ。
そのテスコが5年間の調査・研究の末に、
米国に出店した話題の「フレッシュ&イージー」
現在ロス、ラス、フェニックスに65店。
私はノブ・ミゾグチさんと一緒に、
昨年11月9日、ロサンゼルスでオープンしたばかりのこの店を、
一挙に3店、視察した。
ミゾグチさんはシアトル在住の、
「商人舎オーガニック/ナチュラル研究会座長」
その時、私は、
「50%ほどの売り場構成比を占めるプライベート・レーベルが、
いかに顧客に受け入れられるかがポイントである」
と指摘した。
すなわち、ストアロイヤルティを、
プライベートブランド・ロイヤルティは超えることができない、
という結論に至った。
7カ月後の現在、果たしてそれはどうなのか。
それが最大の関心事だった。
青果部門は、ケース陳列。
これはイギリスと変わらない。
回転するか否かが問われている。
ゴンドラは、ラック方式。
アイテムが絞り込まれていて、
限定品揃え型のグロサリーストアである。
コンセプトそのものは、オープン時と全く変わらない。
しかし、目立つことがあった。
プライベート・レーベルのフェース数は依然、多いが、
売り場で目立つのは、ナショナルブランドの安売り。
極めつけは、店頭。
左がコカコーラ、右がネスレのパレット陳列。
本来のコンセプトならば、ここに、
「フレッシュ&イージー」のプライベートブランドを持ってくるべきだ。
ホールフーズなど、堂々と入口でPB展開をしている。
ということは、フレッシュ&イージーが、
いまだストアロイヤルティを築き上げるのに、
典型的なナショナルブランドを前面に押し出している、
ということだ。
この店では、未だ、道遠し、の観あり。
(ロサンゼルスでは違っていたのだが)
④ウォルマート・ネイバーフッド・マーケット
ウォルマートが1998年にスタートさせたスーパーマーケット。
今年の1月決算時点で134店。
1年間に22店増。
昨年1月にニューデザインストアを開発したが、いまだ微々たる存在。
約1000坪のフード&ドラッグ。
ヘルスケア・ビューティケアに力を入れるも、
今夏、マーケットサイドというさらに小型の新フォーマットを実験し、
このタイプを止めるか、転換するかの瀬戸際にきている。
フレッシュ&イージーとは、道路を隔てている。
これはフレッシュ&イージーが仕掛けてきていることを示す。
仕掛けられたからか、そんなにひどくはない店となっている。
ウォルマートは不思議な会社だ。
競争が好きな企業といえる。
店頭入り口にも、プロモーションの仕掛けがある。
だが、「エブリデーロープライス」という点では、
フレッシュ&イージーも同様の政策をとっているから、
この点では、変わらない。
両店の、この時点での勝負、
水入り、再勝負となる。
それも低次元の。
しかしこの両店を視察して痛感したこと。
「店舗を小型化していくことの、難しさ」
増やしたり、大きくしたりする行為は、
比較的にやさしい。
「小さく、狭く、濃く、深く」
これは私が主張している標語だが、
この仕事が困難を極める。
米国と英国の、小売業では最高の頭脳を集めているはずの、
ウォルマートとテスコにおいて、然り。
普通の頭脳の集団は、
小型化などに挑戦しないほうがいい。
大型化は、易しいのだ。
⑤スーパーセンターHE5タイプ
ラスベガス最後の店は、王者ウォルマート・スーパーセンター。
その環境対策店舗HE5型という。
今年3月18日オープン。
ダラスとデンバーの環境対策プロトタイプ。
そのダラス型を普及版にアレンジした店。
ファサードも地域に合わせた色づかい。
マーチャンダイジングは、スーパーセンターそのもの。
ただし、消費不況に対応して、
ベーシックな商品の低価格を前面に出している。
オーガニックなど絞り込んで、
ロープライスを徹底的に訴える作戦。
マグネット売場のミルクコーナーも、
御覧のように目立つ。
リーチインケースは省エネタイプ。
リーチインケースの多用そのものが、省エネルギー。
ファションは、現在、消費環境から売れてはいないが、
商品とプレセンテーションは各段にレベルアップした。
一目瞭然。
ウォルマート・スーパーセンターにとっての最大の問題は、
やはり、じりじりと迫っている自らの飽和だけのようだ。
ラスベガスでは、ナンバー1企業の取り組みを見た。
スーパーマーケット1位のクローガー系スミス。
オーガニック&ナチュラルスーパーマーケット1位のホールフーズ。
そしてイギリス1位テスコと世界1位のウォルマート。
みんなすごい会社ばかり。
でも第1位が、それぞれ悩みばかり抱えている。
その自分の悩みに対しては、こんなもんだ。
なんか、安心するよなァ。
皆さん?
<ロサンゼルス編に続く、結城義晴>