リーマン・ブラザーズの米国連邦破産法11条適用で、
地球をぐるりと回った経済危機。
アメリカでは、1929年のブラックマンデーになぞらえられた。
世界大恐慌の再来かと。
負債総額6130億ドル(64兆円)で史上最大。
アメリカ証券会社第4位の経営破綻。
しかし、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備理事会が、
37兆円の資金供給をして、
世界経済破綻を食い止める策に出た。
だから日本の一般市民などには、
さして影響がないようにも見える。
実体経済に生きるものは、影響を受けにくい。
私も、ジャーナリストであるから、
いっさい、株は持たないことにしている。
だから個人的には、自分の資産への影響は全くない。
ご承知のように、リーマンの経営破綻は、
米国サブプライムローン問題に端を発する。
信用度の高いプライムローンに対して、
信用力の低い人向けの住宅ローンを、
サブ(準)プライム(優良)という。
要は、もともと信用のないものを証券化して、
そこに格付け機関が、偽りの信用を付加して、
なおかつ「安易に儲かる金融商品」としたもの。
それにリーマンも、
他の大手金融機関も乗った。
もちろん日本の金融機関や投資家も。
最初は低金利で、住宅ローンなどを貸し付け、
一定期間が来ると急激に上がる仕組み。
だからもともとサブプライムローンは、
信用の置ける「金融商品」であるはずがない。
しかし、みんなで渡れば怖くない、とばかりに、
馬鹿な金儲けに走った。
それがサブプライムローン問題。
さてここで最大の問題は、
世界で150兆ドルとも、170兆ドルともいわれる金融経済の危機が、
50兆ドルの実体経済にどのくらいの影響を及ぼすかということ。
金融経済は、貨幣経済とも言われるが、
実体経済が縮んでいるのに、
貨幣経済が膨れる。
困った現象が起こっていた。これが、景気は悪化するのに、
物価が上がるという問題の源。
「スタグフレーション」という。
私は、貨幣経済の急膨張を、
「現代のバベルの塔」にたとえたが、
リーマンの破綻は、これに当たるのだろう。
人間が、神をも恐れず、
天に届くかというバベルの塔をつくり始めたとき、
神は、一瞬にして人間どもの言語を通じなくさせて、
バベルの塔の計画を破綻させた。
言語とは、人間の信用を築くもの。
「信用」の破綻が、人間の浅ましさを自覚させ、
大それた行いを戒める。
サブプライムローンには、そんなたとえ話が、似つかわしい。
さて、実体経済のひとつが、消費。
すなわち、世界の生活者の消費マインドに、
一部の貨幣経済破綻が、
どこまで影響を与えるか。
それが日々の商売をも左右する。
私たちの「実ビジネス」に関連するのは、この一点だ。
そして、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんが言うとおり、
「自分の力の及ばないところで起こる大変化」が起こった。
それに耐えるためには、
「実ビジネス」に徹するしかない。
「原理・原則、全うせよ」である。
昨日は、千葉県・茨城県のスーパーマーケットをぐるりと視察。
そこで感じたこと。
店は本来、地域に根付いている。
どんな店も。
お客様は、ローンを組んで家やマンションを買う。
あるいは敷金・礼金を払って、住むところを借りる。
すなわち投資して、その地域で生きる。
だから自分の住んでいるところは、
本来、よくあってほしいと切望しているはず。
つまり、自分の住んでいる地域の店には、
もともと愛着を感じるものなのだ。
自分が住んでいる家から一番近い店は、
誰しも、「自分の店」と思いたい。
ところが、店の側が、
一人ひとりのお客様のその気持ちを忘れる。
自分に引き戻して考えれば、すぐに分かることを、
仕事となると、すぐに忘れる。
お客様が、自分の店と考えたい、その当の店の側が、
お客様の気持ちを否定してしまう。
お客様と店との間にあるもの、
それが相互の「信頼」であり、「信用」である。
千葉県・茨城県の店店には、
そんな可能性が、すべてにあった。
可能性は与えられていた。
可能性を、「実体経済」に変えていた店は、
少なかったが、あった。
それが、残念でもあったが、嬉しくもあった。
リーマンの破綻と、
千葉県・茨城県の店。
「相互信頼」「信用」という意味で、
つながっている。
私たちは、「実体経済」の担い手として、生きる。
それだけは変わらない。
変えてはいけない。
<結城義晴>