結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年10月01日(水曜日)

[商人舎10月の標語] 「だから」を廃し「にもかかわらず」を貫け!

今日から2009年10月です。

商人舎「今月の標語」

「だから」を廃し、
「にもかかわらず」を貫け。

ちょっと長いけれど、いかが?

昨日書いた上野光平さんの言葉。

上野さんは、実質的な西友の創業者。
戦後スタートした日本の革新的な小売業。
みな、チェーンストア・システムを採用した。
その論理的な支柱が、上野光平だった。
のちに流通産業研究所所長・理事長を務める。

この新興勢力は、
大半が、オーナー経営者だった。
ダイエーの中内功。
イトーヨーカ堂の伊藤雅俊。
岡田屋、ジャスコ、イオンの岡田卓也。
ニチイの西端行雄。
ユニーの西川俊男。
イズミヤの和田満冶。
ヨークベニマルの大高善雄。
関西スーパーの北野祐次。

しかし西友の上野光平だけは、サラリーマンだった。

オーナーは西武百貨店の社長の堤清二。
西友を上野光平に創業させて、
西武流通グループを構築し、
「西のダイエー、東の西友」と呼ばれた。

その上野光平、しばらくすると、
ダイエー中内からヘッド・ハンティングされかけた。
しかし、中内さんには丁重にお断りした。

サラリーマンを貫いたのだ。

上野さんが、昭和50年代に、ダイエーのトップになっていたら、
日本の商業の歴史は、まったく違うものになっていた。

その上野さん、昭和43年の毎月の社内誌の巻頭言に、
このことを書いた。

「だからの論理」と
「にもかかわらずの論理」が、
ある。

「だからの思考パターン」と
「にもかかわらずの思考パターン」。

「だから、だから」と思い、口にする人。
「にもかかわらず」と考え、行動する人。

私たちの周辺には、どちらもある、どちらもいる。
私自身、どちらにも変わる。

「なになにだから」と言いわけしたくなる。
「……だから」と自分を納得させたくなる。
これを「だからの論理」という。

一方、「なになににもかかわらず」と言ってごらんなさい
「……にもかかわらず」を口癖にしてごらんなさい。

そうすると、自分が全く新しい人間になることができる。

「景気が悪い。だから売上げが上がらない」
「天気が悪い。だから客数が少ない」
「条件が悪い。だから結果が悪い」
「会社が悪い。だから自分は認められない」
「上司が悪い。だから……」
「世間が悪い。だから……」

これを全部、「にもかかわらず」に置き換える。
「にもかかわらずの論理」

「景気が悪い。にもかかわらず、……」
「天気が悪い。にもかかわらず……」
「条件が悪い。にもかかわらず」

「にもかかわらずの論理」から問題解決は生まれる。
「にもかかわらずの論理」からオクシモロンは解決される。
「にもかかわらずの論理」から現状は打開される。

10月に入ったとたん、
「世界恐慌」という言葉まで飛び出した。
政権末期を迎えている米国ジョージ・ブッシュ大統領は、
9月30日、声明を発表。
「アメリカ経済は危機的な局面を迎えている」と。

その根拠は、世界の株式時価総額が20兆ドル目減りしたことにある。

このブログの愛読者には、お分かりと思うが、
世界には、実体経済と貨幣経済がある。
実体経済は全世界の国家と地域の国内総生産を足し算したもの。
それが50兆ドルある。
ちなみに日本の実体経済は、約5兆ドル。
世界の10分の1。

世界の貨幣経済は1年前まで、約150兆ドルだった。

貨幣経済に最も大きく占めるのが、株式時価総額。
それがこの1年で半減した。
すなわち40兆ドルが20兆ドルに。
約2000兆円への半減。

この貨幣経済と実体経済のギャップが、
スタグフレーションの元凶
だった。

景気が悪化しているのに、
物価が上昇する。

このアンバランスな経済構造は、
貨幣経済と実体経済のギャップによって生じていた。

従って、株式時価総額の減少は、
実は、スタグフレーションからの脱却には、
効果がある。

ここで、貨幣経済によって儲けていた者が、損をする。
それは、むしろ、正常化への道かもしれない。

私はこの貨幣経済の「異常な膨張」を、
旧約聖書の「バベルの塔」になぞらえた。

神が、人間の暴挙を戒めている。

この時点での最大の問題は、
貨幣経済の破綻が、
実体経済に影響を与えること。

金融関係の企業が、危機に陥ると、
中小企業への融資が激減する。
場合によっては、なくなる。
そして実体経済を担う中小企業が追い込まれると、
実体経済が、縮む。

これが一番困る。

根本の問題は、
社会から「信用」が減ることだ。

ここで、商業の出番。
サービス業の本番。
商業は、「にもかかわらずの論理」で、
この危機を乗り越えなければならない。
「信用」の目減りを防がなくてはいけない。

10月は11月、12月の年末商戦への足場を築くとき。
この10月が、2008年を制する。

「だからの論理」を廃し、
「にもかかわらずの論理」を貫く。

さあ、正念場。
いざ、10月へ。

<結城義晴>

[追伸]
9月は30日間しかありませんでした。

にもかかわらず、
このブログへのアクセス数、ページビュー数は、
過去最高を記録しました。

ありがとうございました。
心より、感謝いたします。

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