今回は、珍しく、
時差ボケというか、
疲労蓄積というか。
それとも安堵感というか、
満足感というか。
貨幣経済危機の米国の緊張感というか。
そんなものが私の頭と体に溜まっています。
ノーベル経済学賞のポール・グルーグマン博士は、
米国の住宅バブル崩壊と金融危機を予言し警告を発していました。
そして「国家の破綻は回避できるが、不況は長期化する」と、予告。
フリードリヒ・フォン・ハイエク博士、
ミルトン・フリードマン博士から始まった「小さな政府」路線に、
ひずみが出ていることを指摘。
世界経済の論議も、新しい局面を迎えます。
グルーグマン教授の言葉のように、
「米国の国家的危機は回避」されそうなものの、
「長期化する不況」は避けることができません。
だからこそ「節約、倹約。もったいない」
そして「楽して儲けるな!」なのです。
さて、アメリカ報告の続き。
今日は、The Great Atlantic & Pacific Tea Companyの最新店。
「大西洋と太平洋を結ぶお茶の会社」という大仰な名前。
そんな名前を持つスーパーマーケットチェーン。通称A&P。
その最新店のカメラレポート。
いい店です。
ところが、問題あり。
A&Pは1970年代まで、米国最大のスーパーマーケットでした。
当時の第2位がセーフウェイ、第3位クローガー。
ちなみに米国チェーンストアランキングは、
以下のようになっていました。
1 シアーズ・ローバック
2 A&P
3 セーフウェイ
4 JCペニー
5 クローガー
6 モンゴメリーウォード
いわゆるGMSが3社、スーパーマーケットが3社
A&Pはシアーズに続いて第2位。
このころは2000店を超える巨大チェーンストアだった。
しかし1980年になると、A&Pは第7位で、
スーパーマーケット順位はセーフウェイに抜かれて第2位。
1990年は第9位で、スーパーマーケット第4位。
2000年はベスト20のランク外。
そして、2008年は、第54位。
第52位ホールフーズと第53位トレーダージョーの次。
感慨深いものがある。
なぜか。
一言でいえば、
イノベーションが、
企業の中から消え失せてしまったからです。
それを招いたのは、官僚化した組織。
「変わりたくない」という幹部・社員の気分が、会社に蔓延した。
現在は、
A&P 102店
Waldbaum’s 63店
A&P Liquor 26店
Super Fresh 76店
The Food Emporium 32店
Food Basics USA 9店
Pathmark 139店
合計447店のチェーン。
それぞれの店舗の形態を「フォーマット」という。
名前を「バナー」という。
今回訪れたのは、「A&Pフレッシュ」という最新フォーマット。
ところは秋真っただ中のニュージャージー。
店舗入り口は、青果で華やかに。
野菜果物は、店の顔。
店内は、まったく新しいパターン。
天井のデザインが、斬新なイメージをつくり出す。
店舗中央にデリの売り場が、円形に設けられている。
店舗右側のコーナーがベーカリー。
このあたり、焼きたてのパンの香りがかすかに漂う。
奥壁面は、シーフードからミートへ。
従来の「コの字」型のレイアウトが、基本になっているが、
「コの字」にカーブが付けられた最新タイプ。
コストがかかりすぎるとか、回遊しにくいとかの理由もあるだろう。
しかし、斬新な空間を、顧客が求めていることも確か。
そのあたりの折り合いを、どこに求めるか。
ウェグマンズやホールフーズが好例だ。
中央のデリのコーナー。
回り込んで、オリーブの対面売り場。
さらに回り込んで中央のデリ売り場。
店舗中央をぐるりと回ると、
惣菜とサービスデリが買い回れるように設計されている。
そして、コスメティック・ファーマシーの売り場。
このコーナーは、サークル型につくられていて、
カラーコントロールも行き届いて、快適。
日用雑貨売り場も美しい。
しかし、私はデザイナー優先の売り場に見えた。
えてしてこういう店は、オペレーションに支障をきたしやすいもの。
表面はきれいだが、品揃えや鮮度が堅持されなければ意味がない。
最後にレジのコーナー。
しかし、10月11日土曜日の午後。
ドライグロサリーのゴンドラには、あちこちに、穴があいていた。
店舗のリモデルをしている。
そのためのレイアウト変更。
形だけ斬新でも、
買いやすい売り場づくりになっていなければ、
顧客は買わない。
だから売り場変更しなければならなくなる。
A&Pには「フード・エンポリアム」というアップスケールタイプがある。
これも、ウェグマンズやホールフーズには遠く及ばない。
この「フレッシュ」という新フォーマットは、
セーフウェイの「ニューライフスタイル・タイプ」をモデルにしているが、
形つくって、魂入れず。
A&Pの苦悩は続く。
リモデルが成功することを祈るばかりだ。
「自ら、変われ!」私は、言い続けている。
しかし、形が変わっても、
お客様に受け入れてもらえなければ、
意味がない。
どう、変わるのか。
それが問題。
まずは、人間のビヘイビアが変わらねば。
<結城義晴>