この1週間は、溜まりに溜まった原稿執筆。
毎日毎日、テーマを考え、
パソコンや原稿用紙に向かう。
雑誌やウェブサイト、そして単行本。
もちろん自身のブログも書く。
担当者や編集者の皆さんには、
本当に迷惑のかけっ放し。
しかし、私も56歳になった。
30代、40代のように量産は出来ない。
書き始めたら、速いが、
「何を書くか」に悩む。
たいていの場合、テーマもスタイルも、
全部、任されている。
だから「何を」が最大の問題となる。
量産していた頃は、
「何を」は明確だった。
雑誌の編集部に属していて、
あるいは編集長をやっていて、
特集や編集企画の中で、論文や記事を書いた。
だから量産できた。
その訓練のおかげで、
「どう書くか」は、すぐに決まる。
というか、あまり考えない。
次々に浮かんでくる。
私の講演や講義を聴いたことのある人は、
お分かりになるだろうが、
よく、脱線する。
それが面白かったりする。
ものを書いていると、
そんな脱線のアイデアが湧き上がってくる。
そして、長話となる。
「どう書くか」は、すなわち“how”。
「何を書くか」は、“what”。
私にとって、今、“what”が問題となる。
デジャブのような感覚がある。
これも編集長をやっていた頃。
昭和49年の大規模小売店舗法が施行され、
出店規制が強化されていた時期。
店舗やショッピングセンターの取材記事は、
「どう書くか」に焦点があった。
ところが、大店法の規制がゆるくなって、
新店舗が続々とオープンするようになると、
どの店を採り上げるか、
つまり「何を書くか」が焦点となった。
私たちにとって、現在、
ものを書くためのテーマや材料があふれている。
様々な人々が、そのテーマを採り上げて、
文章を書いている。
だから「何を書くか」によって、
その人の人間性や個性が表れる。
もちろん“how”が重要でないことはない。
しかし、現在は“what”が大事なときだ。
ただし、[毎日更新宣言]のブログは、テーマに困らない。
毎日の出来事を、そのまま捉えて、書く。
さて、今年、1月から9月までの9カ月間、
1万㎡以上の大型店舗の出店届出件数は76件に止まった。
日経新聞が一面で採り上げた。
「まちづくり三法」完全施行からほぼ1年。
その効用が表れ、さらに衣料品をはじめとする消費不振で、
大型店出店届出が、激減した。
しかし、中型店はそれほど減ってはいない。
まちづくり三法の規制を受けない7000㎡以下の店舗。
同じ9カ月間に443件の届出。
だからスーパーマーケットにおける「既存店と新店」との闘いは、
これからも激しく継続されることになる。
そして、同じフォーマット同士の競争の方が、
世界中で共通のことだが、中身は厳しい。
イオンのマックスバリュ・グループは2009年度も約80店の計画、
ライフコーポレーションは2011年2月までに32店の新店構想。
しかし、「レッド・オーシャン」の同質競争は、
くれぐれも避けてもらいたいところだ。
互いに「ブルー・オーシャン」を目指して欲しい。
それがお客のためでもある。
コンビニのローソンは移動店舗を始める。
ネットスーパーの実験も進む。
これらは、「ブルー・オーシャン」を視野に入れている。
だが「青い海」といっても、
競争構造を根本的に変えるような海もあれば、
小さなブルー・オーシャンもある。
7月から9月の四半期、日本のGDPが前期比で、
マイナス0.4%となった。
4月から6月の四半期は、
マイナス3.0%。
続けて四半期のGDPが落ち込んだのは、
7年ぶり。
私たちは、太平の世に慣れ親しんできた。
第二次オイルショック後の1980年代には、
36カ月連続で景気後退した。
バブル崩壊後の1990年代前半は32カ月。
これからの2年ほどの期間にも、
この二つの時期と同じことが起こるのか。
私たちは、再び同じ道を歩むのか。
しかしスーパーマーケットなど中型店が、
この長期不況に入るときに、
出店にブレーキをかけていないことが、
果たして、それ自体、
「ブルー・オーシャン戦略」となるのか。
再びデジャブの感覚を感じる私には、
赤いものが見えている。
「どうつくるか」ではなく、「何をつくるか」。
“how”ではなく“what”。
それが問題となる時代だからである。
<結城義晴>