アメリカ合衆国の金融政策が歴史的転換を見せる。
米国の中央銀行の役回りを担う連邦準備制度理事会(FRB)が、
事実上のゼロ金利政策と量的緩和政策を決定。
FRBは日本でいえば、日銀。
Federal Reserve Board、
またはBoard of Governors of the Federal Reserve System。
全国の主要都市に散在する連邦準備銀行を統括する。
この政策は、何よりも金融の信用収縮にストップをかける目的。
米国史上初のゼロ金利。
1990年代以降、金利自由化が進み、
「市場重視政策」がとられてきた。
その大転換。
16年ぶりに日本の政策金利を米国が下回った。
そのため金利が安くなったドルを売り、円を買う傾向が高まり、
またしても円高ドル安。
13年ぶりに1ドル87円台に突入。
激変の世界経済である。
そんな昨日、千葉県幕張のイオンタワー。
イオン㈱社長の岡田元也さんを訪問。
岡田さんは、今年4月17日の商人舎発足の会の発起人。
だから、他の発起人の皆さん同様に、
「商人舎ファミリー」と呼ばせていただいている。
さまざまなパーティで顔を合わせることもあるが、
ゆっくりお話しする機会もなく、
年末のお忙しいときに、時間をとっていただいた。
午後1時から、1時間半ほど。
インタビューではない。
友人としての懇談。
だからまず、私の方の近況報告とお礼。
コーネル大学リテイルマネジメントプログラムには、
ずいぶんと関心を持っていただいた。
私たちは、産業内大学をつくろうと構想した。
この志は、次代のリーダーの養成を目的としている。
志の部分では、岡田さんも同志といえる。
私にとって、この1年ほどは、激変のときであった。
岡田さんにとっても、ものすごく「考えた」1年であったという。
イオンを持ち株会社にした新体制を築いた。
三菱商事との提携発表は、一昨日のことだった。
これは、世界戦略へのスタートを意味した。
真意は、なかなか伝わりにくい。
しかも日本の商業を代表するイオンの意思決定。
政治、行政、産業界、流通業界。
岡田元也の腹の中を探りつつ、動向を注視した。
その中で、岡田元也は、
考えに考えた。
父君の岡田卓也さんの本『岡田卓也の十章』にある。
「考えて考えて考え抜け」
それが岡田元也のこの1年ほどだった。
偶然にも、私も、この1年、
考えに考えた。
そして私は「商業の現代化」という志に至った。
岡田さんは、
「新時代のイオンをつくる」
この思考に没頭した。
「これまで、迷ったことは一度もない」
決断の人、岡田元也。
その岡田さんが、考え抜いた。
そんな時代なのだと、私は感動した。
三菱商事との提携。
イオンは、中国やアジアに、
もうひとつ「新しいイオンをつくろう」と考えた。
ウォルマートやカルフール、テスコと、
真正面から闘う。
そのためのベストパートナーを選んだ。
それが三菱商事だった。
視野は世界に向けられている。
私は、ドラッカー先生がジャック・ウェルチに言った言葉を使った。
ゼネラルエレクトリックの社長だったジャック・ウェルチに。
「あなたは、いま、
ドキドキ、ワクワクする仕事をしていますか。
自分でドキドキワクワクする仕事が、
あなたの会社には、どれだけありますか。
自分でドキドキワクワクする仕事だけしなさい。
ドキドキワクワクしない仕事は、
他人に任せなさい」
さすが、ドラッカー先生。
ここからジャック・ウェルチの、
有名な「選択と集中」の政策が生まれた。
岡田さん、その言葉に反応した。
「ドキドキ、ワクワク、
それからジリジリですかね」(ニヤリ)
しかし、この「ドキドキ、ワクワク、ジリジリ」の果てに、
この冬から、また走り始める。
岡田元也の疾走。
「社長はすべてを自分でつくる。
もしくはやめるしかない」
岡田さん、社長哲学で、
私との濃密な時間を、結んだ。
刺激的なひとときだった。
私も、疾走しなければ、と思った。
「疾走していなければ、失速する」
亡き宿澤広朗の言葉を、思い出した。
岡田元也さんに感謝。
<結城義晴>