帰ってきました。
昨夜、遅く。
2泊3日のソウルの旅。
すると昨23日の日経新聞第二部が目に飛び込んだ。
毎年恒例の広告特集「就職ガイド」。
大学生就職希望企業調査。
韓国では読むことができなかったページ。
第一位は、東京海上日動火災保険。
第二位は、三菱東京UFJ銀行。
第三位が、全日本空輸(ANA)。
そして第四位に松下電器改めパナソニック。
ベスト10には金融保険会社が、5社。
鉄道・航空と旅行社が4社。
そして製造業1社。
小売業は、95位の高島屋。
100位のニトリ。
これは、大学3年生のアンケート調査だから、
アメリカ『フォーチュン』の「働きたい企業ランキング」とは、
全く趣旨が違う。
広告特集でもあるから、広告主への配慮も、
少しは入っているだろう。
しかし、それでも小売業が高島屋とニトリではさみしい。
商業の現代化どころか、
いまだ近代化のプロセスにあるとしか言えない。
経済不況の今。
人材採用こそ、次の時代への政策。
ここに小売商業がどんどん登場しなければいけない。
少なくともイオン、セブン&アイ・ホールディングスは、
常連でなければおかしいし、
ユニー、イズミヤ、イズミ、平和堂、オークワ
ライフコーポレーションやアークス、ヤオコーなども、
さらにファーストリテイリングやしまむら、
ヤマダ電機やヨドバシカメラ、コメリといった企業も、
ニトリと並んでベスト100には、顔を出してほしい。
菱食やパルタックも、ロックフィールドやスタジオアリスも。
私がいま、書いている『小売業大研究』という本。
編集担当の新垣さんや二宮さんには、迷惑のかけっぱなしだが、
この本を読んだら、誰もが、
小売商業に入りたくなるものにしたいと考えている。
そして小売商業、サービス業に入ったら、
一生、持っていたいと思う本にしたい。
「一生ものの本」
さて、日経のコラム「大機小機」。
「世界は悲観の極み」と表現する。
しかし、「経済が人の営みである限り、
地球上から消費や生産がなくなるわけではない」
同感。
アメリカ国内の自動車保有台数は、2億台を超える。
それが現在、年間1000万台の販売数。
このままでは、20年間、同じ車に乗ることになる。
そんなことが、長く続くはずがない。
「経済は必ず、回復する」と。
大六星と名乗るコラムニストは、そう言う。
これも同感。
だから、今、打つ手は何か。
ピーター・ドラッカーは言い残している。
「われわれは今、歴史の峠を越えつつある」
そして、
「量の成長が見込めないときには、
質の充実を図れ!」
これが、2009年の基本方針。
質の充実とは、
こんな時代だからこそ、
意欲ある、商人向きの人材の採用である。
どんどん採用して、
どんどん教育して、
どんどん競争させて、
どんどん成長させる。
21世紀は人の時代。
「知識商人」の時代。
ナレッジ・マーチャントの時代。
その知識商人候補大量採用の絶好のチャンス到来。
そう考えたい。
さて、韓国・ソウルの駆け足旅行。
コエックス・ショッピング・モール。
2000年開業。
二つのホテルに挟まれて地下街のようなモール構成になっている。
いわば核は、ホテル。
グランド・インターコンチネンタルホテルと、
コエックス・インターコンチネンタルホテル。
コエックスは、地下2万6000坪の韓国最大の総合アミューズメント&ショッピング施設。
アミューズメントの核は、メガボックス。
地下1、2階にある複合映画館。
16のスクリーン、大型館、中型館、小型館で、トータル4336席。
映画は全席指定。
とりわけ3Dシミュレーション劇場では、
座席がスクリーンの動きに合わせて動く。
海洋探検館「アクアリウム」は韓国最大規模のテーマ型水族館。
4340坪の規模、総500種類4万匹の魚。
ターミナル型の「オーシャンキングドーム」では、
頭上を大きな魚が泳いでいく様が見える。
さらに「キムチ博物館」など文化施設もある。
そしてカジノも。
商業機能の代表は、現代百貨店。
現代財閥系の現代百貨店グループで、売上高は百貨店の第2位。
ソウル・京畿道地方を中心に店舗展開。
外食と専門店が圧倒的に多い。
マクドナルドは、広大な店舗。
セブン-イレブンも、韓国の店としては広い。
ただし、問題点は、地下街モールのため、
天井が低く、快適さに欠けること。
韓国商業全体の問題点。
ショッピンググセンターの基本がないこと。
ロッテワールド。
敷地面積約4万坪施設の延べ床面積18万坪。
室内型テーマパークとして世界最大規模。
周辺は、マンション群。
室内テーマパーク、
野外の「マジックアイランド」、
スケート場「ロッテワールドアイスリンク」、
「ロッテワールド民俗博物館」、
「ロッテワールドシネマ」、
それにホテル、免税店、百貨店、総合スーパー、専門店モール。
商業施設の核は、ロッテ百貨店。
ロッテ百貨店は韓国百貨店最大手。22店舗。
経営母体はロッテショッピング。
韓国ロッテグル-プに属し、
総合スーパーのロッテマート、
食品スーパーのロッテスーパーを傘下に置く、
流通・小売業第二位グループ。
地下一階の食品売り場は、特に充実。
韓国の青果部門の葉物の充実ぶりは、特筆モノ。
シェフが調理する惣菜のコーナー。
スウィーツの対面売り場。
上階には、フルラインの品ぞろえ。
ロッテ百貨店の反対側にロッテマートがある。
総合スーパー業態。
地下1階、地上5階の6フロア。
1階には無印良品の店舗。
トイザらスも入る。
青果部門の野菜はフレッシュ。
月曜日だが、客数は多い。
ロッテマートでも、葉物の品揃えと鮮度感は高いレベル。
肉売り場にも、必ず店員が付いて、販売サービスする。
店舗奥主通路には、惣菜コーナーが続く。
レジ付近も、にぎやかな感じがする。
ロッテワールドは、テーマパークやアミューズメント機能に、
ショッピング機能が敷設されている。
その意味で、いかにも20世紀的なゾーンという印象。
つまり、「なんでもあります」式の機能満タン主義。
一方、都心部の新世界百貨店。
首都圏に本店を含めて5つの百貨店があり、
その他、馬山店と光州店で7店舗。
サムソングループの小売部門としてスタートし、
「独立宣言」を発した。
㈱新世界は総合スーパー「E-MART」を、韓国内に100以上展開。
2006年9月には韓国ウォルマート16店舗を買収。
現在、新世界グループは韓国流通業界の売上規模首位に立っている。
こちらは洗練されていて、国際レベル。
店舗面積は狭いが、吹き抜けスペースも設けられて、快適。
店内は、「春の色」で統一されている。
マネキンもご覧のように、飾り付けられている。
地下一階の食品フロア。
野菜は、やはり、鮮度感に満ちている。
とびきり高いが、とびきり良質の商品でいっぱい。
しかし、売り場に店員がうじゃうじゃ、いる。
小売業は人海戦術。
それが韓国のある種の常識。
1階は、百貨店らしく化粧品売り場。
百貨店としては、日本の伊勢丹のような存在。
マーケティングとマーチャンダイジングで、韓国商業を先導している。
韓国商業は、日本以上に大手寡占が進む。
しかし、カルフール、ウォルマートが、
相次いで進出し、相次いで撤退。
コストコだけは、ここでも業績順調。
部分的な突出と部分的な遅滞。
それが不思議な感じを与える。
外国資本にとって、利益が上げにくいマーケットであることは確かだ。
商業は、ドメスティックな産業だ。
韓国と日本を比べて、いつもそう感じさせられる。
<結城義晴>