日本百貨店協会発表の2月全国百貨店売上高は、
前年同月比11.5%の激減。12カ月連続のマイナス。
1965年1月の統計開始以来最大の落ち込みとなった。
こちらアメリカでも、経済危機と消費不振の影響が、
店頭に如実に出た。
昨17日は、朝から10店を駆け巡った。
アリゾナ州フェニックス、スコッツデールなどなど。
ウォルマートの歴史的小型店舗も視察した。
まず、オーガニック・スーパーマーケットのナンバーワン。
ホールフーズ・マーケットの新店。
新店だけに、集客に腐心。
「ブレークファースト」の提案に懸命。
だから朝の8時台から、きちんと品ぞろえし、
必死で顧客を招きいれようとしている。
しかし、この不況は、ホールフーズから、少しだけ客足を遠のかせた。
もう一店、別のホールフーズ。
オープン後、1年半の店。
こちらは昼時に訪れた。
ホールフーズのデリとイートインコーナーは、
どの店も、ランチタイムには賑わう。
しかし、残念ながらこちらも、客数は少ない。
珍しくインタビューに応じてくれたのは、
マーケティング部門のアン・マリーさん。
フルタイマーだが、大学院生。
やがて、フードマーケティングの教授になりたいとか。
業績は芳しくないようだが、ホールフーズという会社の自己評価。
「自分が自分でいられる職場」
これが働きたい企業ランキング上位にいる理由。
(詳細なインタビュー内容は、帰国してから「結城義晴の店・人・商品」のブログにて)
客数は少なくとも、店は頑張って維持されている。
私は、ホールフーズはまだまだ、経営内容が悪化しているとは考えていない。
世界最高のオーガニック・スーパーマーケットである。
一方、この分野のライバルのトレーダージョーズ。
こちらは、健康を前面に打ち出した店だが、
リミテッドアソートメントで、しかも低価格。
だから、依然、絶好調。
やや小型の200坪くらいの店だが、
あのトレーダージョーズの魅力満載。
トレーダージョーズとコストコは、
悪い店を見たことがない。
ウォルマートを筆頭に、やはりこの3社が不況に強い企業ということになる。
私の名づけたWTCである。
今回のメンバーも、いちばん買い物をしたのがトレーダージョーズ。
さて、名の通った企業の動向も大切だが、ローカルチェーンはいかに。
バシャスはアリゾナのスーパーマーケット企業。
160店ほどのチェーンストア。
オーソドックスな店づくり。
しかし顧客からは、見放された感じ。
なぜか。
イノベーションがないから。
変わっていないから。
いわゆるコンベンショナルタイプ。
伝統的なスーパーマーケット。
私、10年前のアルバートソンズを思い出した。
あのアルバートソンをコピーした店舗とするなら、上出来だ。
しかし今は、まったく響かない。
顧客たちは、ホールフーズを経験した。
トレーダージョーズを体験した。
その上で、ウォルマートを知っている。
だから伝統的な店には、魅力を感じなくなった。
そのバシャスの高級路線の店・AJファイン。
こちらも閑古鳥。
ダウンタウンの繁盛店には、顧客が集まっているのだろうが、
郊外型の高級スーパーは、悲惨。
店づくりや商品は、以前と変わらない。
しかし、高い。
それだけで、顧客は離れる。
デリ売り場も、写真で見るだけならば、良さそうだろうが、
顧客はいない。
かくて、ローカルチェーンは、まさに蛻変が求められる。
HEバットやウェグマンズの学習が必須。
もう一つ、
地元のスプラウツ・ファーマーズマーケット。
こちらは、八百屋さんに徹して、比較的に頑張っている。
なにか、明らかな特徴がなければ生き残ることはできない。
無個性、優等生、伝統型。
これでは、不況の中のサバイバルに耐えられない。
さて、小型店ブームを引き起こしたフレッシュ&イージー。
イギリスのテスコがアメリカ版として開発した新フォーマット。
私は、この店を、割と評価している。
初めからチェーンストアをつくろうとしている。
それに徹している。
プライベートブランドも、徐々にではあるが、
顧客から支持されつつあるように感じた。
そして話題のウォルマートの小型店マーケットサイド。
昨年10月オープンの500坪型食品スーパーマーケット。
浅野秀二先生と店内で談笑。
そしてインタビュー。
カスターさんとステファニーさんが応じてくれた。
どちらもアシスタントマネジャー。
「アフター5の顧客をターゲットにした店」
予算には達していないが、徐々に予算に近づいている。
マーケットサイドをもう1店。
昨年10月に一挙に4店開店して、
現在、データ収集と修正中。
こちらは、プリペイドフードが充実している。
絞り込んだグロサリーは、ウォルマートの価格。
そしてすぐに食べられるデリ、ピザなど。
さらに、プリクックアイテム。
私は、この店を、
「アメリカのコンビニ」と見た。
アメリカにもコンビニエンスストアはある。
しかし、日本のコンビニが日本の市場で果たす役割はない。
ウォルマートがつくったマーケットサイドは、
日本のコンビニの機能をアメリカで新たにつくろうとした試みである。
アメリカ人には、便利で新しいコンセプトに映るだろう。
しかし、まだ未知数。
さて最後に、
ウォルマートのネイバーフッドマーケット。
1000坪タイプのフード&ドラッグ。
1998年にスタートして、10年経過するも、
いまだ150店。
マーケットサイドの開発を機に、
やめるのではないかともみられていたが、
意外にも、俄然、良くなった。
なぜか。
不況の影響。
近隣型のスーパーマーケットで、
ウォルマート価格を出す。
だから客数が今、増える。
すると生鮮の鮮度がよくなる。
そして、客数が増える。
ネイバーフッドマーケットは好循環に入った。
スーパーマーケットは売れれば売れるほど、
易しい商売になる。
全くその通り。
さてウォルマート、どうするのだろう。
マーケットサイドとネイバーフッドマーケット。
不況の風を追い風にして、
ウォルマートが行く。
そんな印象を抱いた2日目。
マーケットサイドの評価、
フレッシュ&イージーとの比較。
小型店問題の解明は、
帰国してから様々な雑誌や商人舎ブログで書き続ける予定。
乞う、ご期待。
かくて夕方の講義にも力が入った。
明日は、ロサンゼルスへ向かう。
<結城義晴>
今日も、最後まで読んでくださって、
ありがとうございます。