2009年4月1日です。
一年前、私は緑内障の手術で10日ほど入院し、手術を受けました。
時間が過ぎるのは早いものです。
今年も、もう3カ月も過ぎてしまいました。
世界不況の影響で、消費不振に陥ってからも、
食品だけは何とか維持されていたものが、
この2月3月と、その頼みの食品まで落ち込んでいきます。
そして、どの企業も、どの店も、
ベーシック・アイテムのディスカウント。
同質化の競争にのめり込んでいきます。
ベーシック・アイテムしか売れないから仕方ありません。
そこで2月の商人舎標語を、
「最良のベーシック」としました。
そして4月の商人舎標語。
「差異が価値を生む」
東京大学経済学部教授の岩井克人先生。
その著『ヴェニスの商人の資本論』の中で語っています。
「差異のないところに価値は生まれない。
差異こそ価値を生み出す」
岩井先生は、『会社は誰のものか』というベストセラーでも、
この差異性を強調しました。
今月こそ、岩井先生の考え方を拝借して、
そして同質化のレッドオーシャンの中で、
ずぶずぶになりそうな商業の世界に、
「差異が価値を生む」のスローガンを提案しましょう。
しかしここで大切なこと。
差異性は、差別化とは違うということ。
「差異性の違い」と、「差別化の違い」は、違う。
「この違いとあの違いは、違う」
語呂あわせみたいな表現ですが、確かに大きな違いがあります。
「差異性」はその企業やその人物の先天的なもの。
根本に根差しているもの。
独特で、他にないもの。
それに対して「差別化」は、後天的なもの。
他の真似ができるもの。
他から真似される危険があるもの。
「差異が価値を生む」とは、
自己の本質的な独自性が、
他との違いを実現させることによって、
価値を生み出す、ということ。
ワインの味は、その土地、その気候、その風土によって違います。
結果として生まれる味や色の違いこそが、
そのワインの価値となるのです。
コーネル大学の業態論。
基本フォーマットとポジショニングによって、
店舗バナーが生まれる。
店舗バナーとは、店舗を「ブランド」と考えて、
そのブランドが確立されるということ。
このポジショニングは、次の要素で出来上がっています。
①店づくり、レイアウト、内装・照明の差異性
②売り方、商品設計の差異性
③コミュニケーション
④プロモーション
⑤ノン・ファンクショナル・ベネフィット[パーソナリティ・イメージ]
この五つの要素の違いによって、
バナーが確立される。
すなわち、ポジショニングとは、他との違いなのだということなのです。
「差異が価値を生む」
いかがでしょう。
「最良のベーシック」の意味も、
差異のあるベーシックこそ、
その店の最良なのです。
さて、4月のアウトライン。
2008年の月別の消費金額を見ると、
4月は12月に次いで第二位のポジションにあります。
お客様の財布のひもが緩みやすい月ということ。
しかし、食品や外食はつつましい。
食料費は11位、外食費は10位。
4月初旬は、入学・進学・就職・転勤など、
お客さまの生活が大きく変わる局面が増える。
住宅関連品や日用雑貨など、買い替え、買い足しのシーズン。
そして各地で、花見の季節に突入。
花見は、盛り上がりたい。
落語に「長屋の花見」という噺がありますが、
どんなに貧しくても、花見は楽しめる。
「節約、倹約。もったいない」の気分の中で、
花見を存分に楽しむ。
それが日本人です。
そして4月中旬からは、ゴールデンウィークに向けた態勢づくり。
12月の年末商戦、7月のお盆商戦と並んで、
重要なシーズン。
「節約、倹約。もったいない」と「最良のベーシック」の、
二大潮流の中でも、「失敗を恐れない」。
それがゴールデンウィーク。
その準備が4月下旬。
勢い余るくらいの勢いで、5月に突入したい。
今月も、頑張りすぎずに頑張って。
「差異が価値を生む」
あなた自身の差異、
あなたの店の差異、
あなたの会社の差異。
それを見つめなおし、
表現するときです。
<結城義晴>