昨7月9日、東京・帝国ホテル。
日本スーパーマーケット協会が10周年を迎え、
その総会、記念式典、パネルディスカッション、懇親会など、
盛大に開催された。
この模様、2回にわたってお届けする。
10周年の節目に、
清水信次さんから川野幸夫さんに、
会長がバトンタッチされた。
清水さんは、㈱ライフコーポレーション会長。
川野幸夫さんは㈱ヤオコー会長。
清水さんは、この協会を創設し、
10年間会長職を務めて、
まれにみる強力な牽引車ぶりだった。
川野さんが会長に就任するとともに、
専務理事は、大塚明さんに交代した。
ライフコーポレーションの並木利昭さんが、
これまでの専務理事。
ライフ常務の並木さんから、
ヤオコーの常務だった大塚さんへのバトンタッチ。
専務理事も、まさに適任の交代。
並木さん、お疲れ様でした。
さて、この協会は、
通常会員と呼ばれるスーパーマーケット企業104社。
その年商合計は6兆円を超える。
賛助会員は504社。
私はこの協会を、
日本のスーパーマーケット業界全体の、
「政治・行政部」と位置付けている。
政治や行政府に、大義を背負って、
正々堂々とモノ申す協会。
それを清水さんが果たしてきたし、
これからも果たしてもらわねばならない。
だから清水さんは、
名誉会長兼政治局局長の役回りとなる。
それも大局長。
これからもお元気で、お願いしたいものだ。
さて、総会で、そんなことが決まったあと、
記念式典では、10年を振り返るビデオ上映、
そして会員各社のユニフォーム・ファッションショー。
14社の社員が、ユニフォーム姿を披露して、
拍手喝采を浴びた。
そのあと、恒例のパネルディスカッション。
毎回、会長・副会長が勢揃いして、討論する。
私が、コーディネーター。
これも恒例。
今回は、10周年ということもあって、
特別ゲストをパネラーに迎えた。
日本チェーンンストア協会の亀井淳会長。
イトーヨーカ堂社長。
パネラーは、清水信次名誉会長、川野幸夫会長、
そして横山清日本セルフ・サービス協会名誉会長。
㈱アークス社長にして、全国スーパーマーケット協会理事長。
日本スーパーマーケット協会では副会長職にある。
日本の小売業の代表的協会の会長・名誉会長による豪華討論会。
私が設定したテーマは、
「10年後の考察」
もちろん10周年だからだ。
10年のことを、英語で「ディケード」という。
特別な単語があるくらい、特別な時間単位なのだと思う。
その10年を区切って、「来し方と行く末」を考える。
サブタイトルは、
「日本流通業の現状を整理し、
今後の10年間を展望する」
まず、コーディネーターの問題提起。
パラダイムの転換のときであること。
そしてこの10年間に、消費産業・商業の時代に入ってきたこと。
それはウォルマートが石油産業・自動車産業を追い抜いて、
世界最大の年商という社会的機能をもつに至ったことに象徴される。
川野さんが、見事に整理してくれた。
「お客さまは、十人一色の時代から、
十人十色に変わった。
そしていまや一人十色になった。
消費は多様化、個性化、高度化していく。
だから総合を狙った百貨店、総合スーパーは苦しくなった。
食品スーパーマーケットも、食品のよろずやではだめ。
専門化されたスーパーマーケットにならなければならない。
専門化とは、どんな色のスーパーマーケットか、
どんな商いをするのか、ということ。
スーパーマーケットの本格的競争時代に入る」
「日本のスーパーマーケットは年商17兆円。
そのトップのライフは4500億円で、2.5%。
その意味で寡占化は進んでいない。
産業のライフサイクルでみると若い業態ということができる。
私たちの役割をしっかり果たしていくことによって、
まだまだ伸びるし、内需拡大に貢献することができる。
日本スーパーマーケット協会は、
リーダーとしてその役目を果たしたい」
力強い発言だった。
つづいて、横山さん。
「最近は景気12年説というのがある。
1997年に金融ビッグバンが起こって、
金融界ではメガバンクが4行しか残っていない。
小売業界は、これからが正念場だ。
いままででの論理構成では底が抜ける。
この10年から学びたい」
「これまでは焼畑農業ならぬ焼畑商業だった。
これからは新しいパラダイムを、
自分たちでつくっていかねばならない。
バブルが崩壊した時に『価格破壊』と言われた。
しかし今、『価格革命』が必要で、それがサバイバル戦略となる。
いま、アークスは北海道で10%のシェアだが、
縮むマーケットで『縮小拡大』を図りたい」
この考え方は、くしくも私のこの朝のブログと同期した。
「あなたは小商圏でトヨタやユニクロになれるか」
その後、横山さんは持論を展開。
「食品スーパーマーケットの協会が大同団結して、
政治や行政にアピールしていく。
年商17兆円のスケールを訴えていくことが大事」
横山さんのユーモアな語り口に、パネラーたちからも、
微笑みが漏れる。
さて亀井さん。
「お客さまの目線から見続けてきた。
百貨店同様に総合スーパーは、数字が悪くなった。
日本チェーンストア協会加盟企業も、
10年前は年商16.6兆円で、現在は13.3兆円。
売場面積は10年前が1834万㎡で、いまは2333万㎡。
売上げが落ちて、売り場面積が増えた。
すなわち生産性が大きく後退した。
ここで変わらなければ、存在価値がなくなる。
イトーヨーカ堂は、何を目的の店にするのか。
ショッピングセンターのアリオでは、
物販とサービスを半々の構成にした。
つまりサービスビジネスの充実だ。
現金下取りセールも、
お客さまの背中をちょっと押して差し上げること。
お客さまの『もったいない』の気持ちも、
一緒に引き取らせていただくということ」
亀井さんは、みずからアリオの開発をし、
農業法人の取り組みを展開した。
「農業と情報を共有化することで、
イトーヨーカ堂として、
環境問題に取り組んでいる」
亀井さんの発言を聞きながら、うれしそうな会長と名誉会長。
そして最後は、清水さん。
予想通りの切り出し。
「10年後といっても、10年後には私はこの世にいない」
清水さんは今年初めに、大手術をし、
元気に蘇った「化け物級」の経営者。
だからきっと10年後もこのパネルディスカッションには登壇している。
私は固く信じている。
清水さんが今回主張したことは一点に集約される。
「人材がすべてを左右する」
「だから根本から教育をやり直さねばならない。
その教育とは、正しい現在地を教えること。
そして三つのこと。
一、己を知る
二、足るを知る
三、終わりあることを知る
その意味で企業には『人を得る』ことが大切だ。
ライフコーポレーションには岩崎高治という人を得た。
協会にも、川野幸夫という人を得た」
「それだけ」
見事な総括だった。
これまでの10年、
これからの10年。
その考察。
「人を残す」
これがコーネル大学ジャパンの目的。
私の総括も、すべて、人に帰する。
最後に「商業現代化」を標榜する結城義晴のまとめは、
ピーター・ドラッカー先生の考えの上田惇生先生版の整理。
現代化とは「ポストモダン」のこと。
「ポストモダンの七つの作法」
1.見る、そして聞く
2.分かったものを使う
3.基本と原則を補助線として使う
4.欠けたものを探す
5.自らを陳腐化させる
6.仕掛けを作る
7.モダンの手法を使う
今回も、いいパネルディスカッションだった。
4人のパネラーの皆さんと、
800人の聴衆に、心から感謝しよう。
<明日に続きます。結城義晴>