結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年09月10日(木曜日)

過去最低の8月のビール出荷量とコンビニの「値引きが広がらぬ訳」

8月のビール出荷量、過去最低。  
ビールメーカー大手5社の発表。
課税出荷数量は前年同月比6.0%マイナスの4270万ケース。
ちなみに1ケースは大瓶20本で換算する。

ここでいうビールは、発泡酒、第3のビールを含めたビール類全体。
前年同月を割り込むのは2カ月連続で、
7月8月という真っ盛りの夏、
私が毎日飲んで大いに貢献したにもかかわらず、
日本のビール類、売れ行きの不振にあえいだ。

理由は、第一に景気と消費の低迷、
第二は、全国的な気温低下と天候不順。  

コンビニの売り上げ低迷と、理由は全く同じ。

ちなみに、5社とは、
アサヒビール、キリンビールの2強と、
サッポロビール、サ ントリー、
それに沖縄のオリオンビールが加わる。

日本のビールメーカーはこの5社と、
各地の地ビールメーカーとなる。

私が唱える「複占化」の概念は以下。
「規模と量を追いかける企業グループは、
3社の状態が続き、やがて2社になる。
それを追わない企業群は、逆に個性豊かに多様化する」  

キリンとサントリーが統合へ向かう。
アサヒとサッポロはどうするか。
オリオンビールは、もともと、
個性豊かに多様化する「ニッチ」の側。

だから「ビール大手5社」などと表現しないほうが、
オリオンビールのためには、いいと思う。

さて、朝日新聞の経済欄。  
日経新聞にも「経済」欄があるが、
その上で「企業」欄がある。
朝日新聞には、ない。
その日経の企業欄も、
「企業総合」と「企業」とに分化している。
だから、この分野では、朝日を凌駕している。

分類が、細かくなれば、専門化が進む。
専門化が進めば、情報の価値は高まる。  

(専門化が進むから分類が細かくなるのだが…)  

一方、分類が細かくならない場合には、
目立つ記事でカバーしようとする。

売場の商品やその分類と同じ。

英語でいう“Assortment”は、
「品揃え」などと訳されているが、
分類の概念を深く内包している。

細分化が進むほど、品揃えは豊かになる。
シンプルな品揃えの店や売り場は、
超売れ筋だけを並べる。
これもまあ、その業態やその店のアソートメントには違いない。

しかし、分類の概念こそ、
専門化を促すものであることは、
間違いない。

経済面では、そのシンプル分類の朝日新聞。
「コンビニ店 弁当値引き 広がらぬ訳」の記事。  
二つの理由をあげる。
①加盟店の自重
②本部の「圧力」  

セブン-イレブン本部の発表では、
見切り・値引き店は1万2000店のうちの約100店となる。

①の理由は、
「一定の利益を上げている加盟店主は、
『値引きは不利益』と自制する」  

値引きの、手続きも面倒ではある。
商品を引き上げ、バックルームで新価格を登録する。
廃棄する場合には、元の価格に再登録しなければならない。

ただでさえ、人手不足のコンビニ店で、
利益の上がる店では、
こんな煩雑なオペレーションをしてまで、
値引きするメリットはない。

ちなみに、値引き・見切りの数値は、
どんな店も、しっかり押さえねばならない。
貸借対照表の資産勘定と損益計算書上の売上総利益を、
正しく把握するためだ。  

かつての小売商のどんぶり勘定は、
いまや、許されない。

②の「本部圧力」に関して朝日は、こう書く。
「セブン本部は、
値引き反対派の声を集めた加盟店向けの広報誌の号外を、
8月4日付で発行した」  

本部の情報統制であるという。
だから、値引き店が増えない。

ここで重要なのは、
値引き店が増えていくことではなく、
顧客の満足と店舗の利益が増えていくことだ。  
その意味では、各店舗ごとの政策は、
各店舗に任されている。

「みんなで渡れば怖くない」という感覚が、
値引き店の中にあるのかもしれないが、
それは、ビジネス上は意味がない。

もちろん、ゴミ問題、食料問題、環境問題、
それらを解決する視点から論じるとすれば、
値引き店を増やすよりも、
全体のコンセプトとシステムの総ざらいが必要だろうことは、
既に指摘した。

もうひとつ。
チェーンストアは、
フランチャイズチェーンだけでなく、
コミュニケーション・ネットワークを重視する。  
多数の店舗を、多数の地域に展開するならば、
その店舗ネットワークの中の情報交流は、必須だからだ。

本部から店舗への一方通行は、
これまた長続きしないことが判明していて、
双方向のコミュニケーションが必要だが、
店舗同士の横のネットワークもあるべきだと、私は思う。

一般マスコミでは、この問題は、
売れ筋記事に仕立て上げられつつある。
だから本部には悪代官のような役回り、
加盟店には被害者のような印象が与えられる。

しかし、ビジネスとして見れば、
本部と加盟店はあくまで対等で、
だからこそ双方向のコミュニケーションが、
不可欠なのだと思う。

夏のビールとコンビニ。
どちらも低迷した。

全体のパイが縮んでいるときこそ、
その全体がよく見えてくる。  

だから、今こそ、
「よく見るよろし」  

<結城義晴>  

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