8月のビール出荷量、過去最低。
ビールメーカー大手5社の発表。
課税出荷数量は前年同月比6.0%マイナスの4270万ケース。
ちなみに1ケースは大瓶20本で換算する。
ここでいうビールは、発泡酒、第3のビールを含めたビール類全体。
前年同月を割り込むのは2カ月連続で、
7月8月という真っ盛りの夏、
私が毎日飲んで大いに貢献したにもかかわらず、
日本のビール類、売れ行きの不振にあえいだ。
理由は、第一に景気と消費の低迷、
第二は、全国的な気温低下と天候不順。
コンビニの売り上げ低迷と、理由は全く同じ。
ちなみに、5社とは、
アサヒビール、キリンビールの2強と、
サッポロビール、サ ントリー、
それに沖縄のオリオンビールが加わる。
日本のビールメーカーはこの5社と、
各地の地ビールメーカーとなる。
私が唱える「複占化」の概念は以下。
「規模と量を追いかける企業グループは、
3社の状態が続き、やがて2社になる。
それを追わない企業群は、逆に個性豊かに多様化する」
キリンとサントリーが統合へ向かう。
アサヒとサッポロはどうするか。
オリオンビールは、もともと、
個性豊かに多様化する「ニッチ」の側。
だから「ビール大手5社」などと表現しないほうが、
オリオンビールのためには、いいと思う。
さて、朝日新聞の経済欄。
日経新聞にも「経済」欄があるが、
その上で「企業」欄がある。
朝日新聞には、ない。
その日経の企業欄も、
「企業総合」と「企業」とに分化している。
だから、この分野では、朝日を凌駕している。
分類が、細かくなれば、専門化が進む。
専門化が進めば、情報の価値は高まる。
(専門化が進むから分類が細かくなるのだが…)
一方、分類が細かくならない場合には、
目立つ記事でカバーしようとする。
売場の商品やその分類と同じ。
英語でいう“Assortment”は、
「品揃え」などと訳されているが、
分類の概念を深く内包している。
細分化が進むほど、品揃えは豊かになる。
シンプルな品揃えの店や売り場は、
超売れ筋だけを並べる。
これもまあ、その業態やその店のアソートメントには違いない。
しかし、分類の概念こそ、
専門化を促すものであることは、
間違いない。
経済面では、そのシンプル分類の朝日新聞。
「コンビニ店 弁当値引き 広がらぬ訳」の記事。
二つの理由をあげる。
①加盟店の自重
②本部の「圧力」
セブン-イレブン本部の発表では、
見切り・値引き店は1万2000店のうちの約100店となる。
①の理由は、
「一定の利益を上げている加盟店主は、
『値引きは不利益』と自制する」
値引きの、手続きも面倒ではある。
商品を引き上げ、バックルームで新価格を登録する。
廃棄する場合には、元の価格に再登録しなければならない。
ただでさえ、人手不足のコンビニ店で、
利益の上がる店では、
こんな煩雑なオペレーションをしてまで、
値引きするメリットはない。
ちなみに、値引き・見切りの数値は、
どんな店も、しっかり押さえねばならない。
貸借対照表の資産勘定と損益計算書上の売上総利益を、
正しく把握するためだ。
かつての小売商のどんぶり勘定は、
いまや、許されない。
②の「本部圧力」に関して朝日は、こう書く。
「セブン本部は、
値引き反対派の声を集めた加盟店向けの広報誌の号外を、
8月4日付で発行した」
本部の情報統制であるという。
だから、値引き店が増えない。
ここで重要なのは、
値引き店が増えていくことではなく、
顧客の満足と店舗の利益が増えていくことだ。
その意味では、各店舗ごとの政策は、
各店舗に任されている。
「みんなで渡れば怖くない」という感覚が、
値引き店の中にあるのかもしれないが、
それは、ビジネス上は意味がない。
もちろん、ゴミ問題、食料問題、環境問題、
それらを解決する視点から論じるとすれば、
値引き店を増やすよりも、
全体のコンセプトとシステムの総ざらいが必要だろうことは、
既に指摘した。
もうひとつ。
チェーンストアは、
フランチャイズチェーンだけでなく、
コミュニケーション・ネットワークを重視する。
多数の店舗を、多数の地域に展開するならば、
その店舗ネットワークの中の情報交流は、必須だからだ。
本部から店舗への一方通行は、
これまた長続きしないことが判明していて、
双方向のコミュニケーションが必要だが、
店舗同士の横のネットワークもあるべきだと、私は思う。
一般マスコミでは、この問題は、
売れ筋記事に仕立て上げられつつある。
だから本部には悪代官のような役回り、
加盟店には被害者のような印象が与えられる。
しかし、ビジネスとして見れば、
本部と加盟店はあくまで対等で、
だからこそ双方向のコミュニケーションが、
不可欠なのだと思う。
夏のビールとコンビニ。
どちらも低迷した。
全体のパイが縮んでいるときこそ、
その全体がよく見えてくる。
だから、今こそ、
「よく見るよろし」
<結城義晴>