結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年09月11日(金曜日)

サントリーのオレンジーナ買収とイオンの「ザ・ビッグ」を斬る

サントリーが「オレンジーナOrangina」を買収する。  
オレンジーナは、年商約1300億円のフランスの飲料メーカー。

代表的な商品は「シュウェップス」「オアシス」などで、
ヨーロッパでは抜群のブランド力を持つ。

フランス第一の新聞「ル・モンド」は書いた。
「オレンジーナは、日出ずる国へ」  

このル・モンド紙の記事は、やや悲しげ。

ウォールストリート・ジャーナルによると、
買収相手は、米投資会社ブラックストーン・グループと、
英投資会社ライオンキャピタル。
つまりオレンジーナは、
2006年に米英の両社に買い取られていたわけ。

買収金額は3000億円。
日本の食品製造業のM&Aとして、
過去最大の案件。

ル・モンドは、表現している。
「サントリーがキリンとマリアージュ(結婚)し、
「コカ・コーラやアンホイザー・ブッシュを凌ぐ飲料メーカーとなる」

アンホイザー・ブッシュは、
バドワイザー、ベックなど300のブランドを抱える国際企業。

サントリーのキリンとの統合は、
こうして国際的な評価を得ていく。

メーカーの世界では、グローバリゼーションは当たり前の趨勢。

私の持論「複占」は、まず国内で進む。
キリンとサントリー、アサヒにサッポロ。

それは次に、世界に乗り出していくことを意味している。

コモディティを主体にし、
ノンコモディティを次々に生み出し、
それが瞬く間にコモディティに変わるのを眺めながら、
規模の拡大を進める製造業は、
既に、「国内複占化から世界化」に進んでいるのだ。

余談だが、ル・モンドは面白い。
日本の連立政権の記事には、次の表現が明記されている。
民主党(中道左派)
社民党(左派)
国民新党(右派)  

もちろん自民党は右派。

何でも、はっきりさせ、
必ず、立場を明確にする。

これが欧米の感覚であり、
グローバリゼーションの中の常識でもある。

さて、イオンは、
総合大型スーパー業態の「ジャスコ」を、
一部、ディスカウントタイプに変える。  

今流に、わかりやすく言えば、
セブン&アイ・ホールディングスが、
「イトーヨーカ堂」を「ザ・プライス」に転換するのと同じ。

「またか」と思った人もいるだろう。
「イオンよ、お前もか」と感じる人もいるだろう。

東京の昭島店。
店名は「ザ・ビッグ」。

「ザ・プライス」に対して、
「ザ・ビッグ」。  

ただし、この業態、突然、降ってわいたわけではない。

かつて、広島に「みどり」という会社があった。
マックスバリュ西日本に買収されてしまったが、
この「みどり」が、バブル崩壊後の価格破壊全盛時代に、
「ザ・ビッグ」をオープンさせた。

私は、㈱商業界の『食品商業」編集長だったが、
広島に取材に行った。

食品が強い総合スーパーを改装した店舗。
店長はじめ部門主任の皆さんに、
丁寧にインタビューに応じていただいたことが、忘れられない。

私、このとき、写真を撮ったが、
それが感光してしまって、使えなくなった。

そこで店長に電話して、
店側で新たに写真を撮影してもらって、
大至急で送ってもらった。
それを記事に使った。

その時の記事にも結論を書いた。

「ディスカウントの五原則」  
①利は「元」にあり。[調達法]
②利は「売り」にあり。[薄利多売法]
③利は「内」にあり。[コスト法]
④利は「この品」にあり。[商品開発法]
⑤利は「他の品」にあり。[プロフィット・ミックス法]
  ☆しかし、品質は維持・向上させよ。  

ザ・プライスもザ・ビッグも、
なにも新しいものではない。

アメリカで「コルベット」が、
ディスカウントストアを始めてから、
あまたの企業がこの業態に挑戦してきた。

ずっと続けてきたのはウォルマートとターゲットだけ。

ここでも「複占」となっている。

「ザ・プライス」と「ザ・ビッグ」での複占は、
全く考えにくいが、どちらにも、
「五つの原則」の徹底が、
なければならないことは、確かだ。

「勝ちに、不思議の勝ち在り。
負けに、不思議の負け無し」  

成功には、不確定の要素がなければならないが、
失敗には必ず「五原則の欠如」がある。

<結城義晴>  

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