ボクは、
うとうと、
していました。
最近の定位置。
椅子のうえ。
ふと気がつくと、
なにか、届いたようです。
いったい、
なんでしょう。
届けられたのは、
ボクの食事。
「銀のスプーン」といいます。
ユウキヨシハルのおとうさんへ。
届けもの。
左の大きいのが、
ビスケット。
右上がゼリー、
右下が缶詰。
さて、どんな味なのか。
ビスケットのフクロを、
開けてもらいました。
ボクは、生まれたときから、
ビスケットしか食べません。
それも「シーバ」というブランドだけ。
ときどき、おとうさんがワインを飲むとき、
チーズをひときれ、もらってべたりしますが。
こんかいは、
おとうさんのすすめもあって、
新しい味を、
試食することにしました。
ボクは、いちおう、
新しいものには、
キョーミがあります。
ビニールのフクロを開けてもらったら、
新しいにおいが、してきました。
ちょっと、かんがえます。
試食しなければならないことは、
よくわかっているんですが。
すこし、まよいます。
ニンゲンもネコも、
食べることには、
「保守的」です。
「コンサバティブ」というそうです。
でも、おもいきって、
食器に、鼻づらをつっこむ。
「んー」
もいちど、鼻づらをつっこんで…。
「バリバリバリ」
もいちど。
「バリバリ」
「むむっ」
「バリ…バリ…」
「……」
「ああ、コンサバティブ!」
「さて、さて、どうしたもんだ」
「でも、ありがとうございました」
「ごちそうさまでした」
かくて、ジジの試食はおわりました。
スギヤマさん、ありがとう。
缶詰とゼリーは、
やはり「ノー」でした。
ビスケットは、
食べました。
シーバとの併用になるようです。
ジジは、保守的です。
生まれてこのかた、
ひとつのメニューしか食べたことがありません。
そのジジが新しい味を受け入れたことは、
かなり大きなチェンジです。
人間も、同じようなものかもしれませんが。
<『ジジの気分』(未刊)より>