日経新聞一面のシリーズ「デフレと闘う(中)」
ファーストリテイリング柳井正会長兼社長の言葉から始まる。
「最後は0円になるんじゃない?」
ジーンズの値下げ合戦。
そのとおり、ジーンズメイトは4店舗のオープンセールで、
1600本のブランド品をただで配ったと、この記事は報じる。
これが事実だとすると、
もう、おしまい。
倉本長治の言う「不況は商人を鍛える」とはいかない。
朝日新聞ではヤオコー会長の川野幸夫さんが語っている。
日本スーパーマーケット協会会長になると露出度も格段に上がる。
「安さだけがお客様のニーズではない」
さらに、続ける。
「今年は『安売り大会』の1年だった。
今後は知恵を出し、
付加価値の高い商品やサービスを、
提供していくことが大事だ」
12月13日の日経MJの「底流を読む」
日本経済新聞社編集委員の田中陽さんが書いている。
「今年11月、高値更新したり、上値の軽い展開の銘柄があった」
やはり株式の専門新聞らしい表現。
それは、加藤産業、菱食、伊藤忠食品。
そう、食品卸売業。
これらの企業の9月期決算など見ると、
いずれも良い成績。
「デフレ⇒小売りからの圧力⇒卸売業の利益低下」
そうではなかった。
田中さんは、理由を考察している。
「ナショナルブランドは儲かる」
卸売業は、
ナショナルブランドのマージンミックスと、
売場提案、売り方提案で、
利益を上げている。
田中さんは、結論する。
「NBとPBとの新しいバランスを、
築き上げる時が来ている」
小売業や卸売業、
そしてメーカーも、
利益の源泉となる技術は、
「プロフィット・ミックス」である。
経営の本質は、ここにある。
とりわけ卸売業は、
それが社会的機能であるとすら、
私は思う。
デフレと闘うなんてことを過剰に意識しなくとも、
本来の仕事を果たし、
本来の利益創出の技術を駆使すれば、
現状を克服できる。
もちろん、この仕事と技術は、
これまでと同じではないし、
「鍛えられた技術」でなければいけないが。
さて昨日は、立教大学池袋キャンパス。
産官学共催の「としま公開ビジネス講座」。
この中の、産は巣鴨信用金庫、
官は東京都豊島区、
そして学は立教大学大学院ビジネスデザイン研究科。
場所は、8号館8202教室。
広報コピーは、以下のようになっている。
「としま公開ビジネス講座」は、
豊島区を地元とする「立教大学」および「巣鴨信用金庫」と、
「豊島区」の産学官が一体となり、
地元中小企業を支援する目的で、
前期と後期の全6回のセミナーを開催しているものです。
質疑応答の可能な勉強会形式でのセミナーで、
大学と地元中小企業との連携を強化することを目的としています。
私は、そのトリとなる第6回目の講師。
テーマは「中小企業のサービス・マーケティング」
これまでのテーマと講師は以下。
第1回 5月27日(水) 18:30~20:00
「中小企業の事業承継戦略」
講師:岸本光永(立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授)
第2回 6月18日(木) 18:30~20:00
「中小企業のマーケティング戦略」
講師:笠原英一(立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授)
第3回 7月16日(木) 18:30~20:00
「中小企業の経営戦略」
講師:大久保隆弘(立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授)
第4回 10月 8日(木) 18:30~20:00
「中小企業の知財戦略」
講師:柴田徹(株式会社ビズ・ビタミン代表取締役社長)
第5回 11月 12日(木) 18:30~20:00
「中小企業の事業承継と税制」
講師:高山昌茂(立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授)
私のテーマにはサブタイトルがついている。
「店は客のためにあり、
店員とともに栄える」
ご存知、故倉本長治商業界主幹の言葉。
サービス・マーケティングの根底にあるのは、
顧客満足と従業員満足の両立であることは間違いない。
ピーター・ドラッカー先生は、言っている。
「サービスこそ、産業の米である」
私はまず、中小企業の範囲を明確にするところから入った。
中小企業基本法第二条に示されている。
ちょっと面倒だ。
業種別に範囲が違うからだ。
①製造業、建設業、運輸業その他の業種
⇒資本の額(資本金)又は出資の総額が3億円以下の会社、
並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
②卸売業
⇒資本の額又は出資の総額が1億円以下の会社、
並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
③サービス業
⇒資本の額又は出資の総額が5000万円以下の会社、
並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
④小売業⇒資本の額又は出資の総額が5000万円以下の会社、
並びに常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
別に、この範囲の会社以外は大企業かといえば、
まったくそれは当たらない。
しかし「中小企業のサービス・マーケティング」ならば、
これは大事な範囲となる。
その後、 講義は進んだ。
「すべてのビジネスがサービス業化しなければならないこと」
そのために「お客様の声を聞くこと」
「ロイヤルカスタマーづくりに邁進すること」
そして「カスタマー・サティスファクション」
「エンプロイー・サティスファクション」
「お客様のために いちばん大切なこと」
最後に二つほど質問。
こういった講座に勉強に来る人は、
いくつかに分かれている。
困っている人、
向学心に燃えている人、
自分の事業の成果や政策の是非を確認に来る人。
最後の人が、質問をすることが多い。
とても良い質問で、
私も勉強になった。
ご清聴とグッド・クエスチョンに、心から感謝したい。
講義が終わって、自分の研究室に戻る。
そして後片付けや土曜日の講義の準備。
立教のキャンパスは美しい。
心が和まされる。
今、その中心は、クリスマスツリー。
池袋に足が向く人は、ぜひ立ち寄ってください。
名物のクリスマスツリーがお待ちします。
<結城義晴>