精読、通読、乱読、斜め読み。
本の読み方にもさまざまある。
まず何を読むか。
これが大切であることは間違いない。
食事をするときに、
何を食べるか。
これと同じ。
食事にも、食べ方がある。
一口一口味わって食べる。
よく噛んで食べる。
あるいは、がつがつとかき込む。
いろいろなものをつまみ食いする。
間食する。
本の読み方は、食事と同じ。
しかし最近はどうも、
「精読」が少なすぎる気がする。
本自体、簡単に読めるもの、
短くてわかりやすいものが、
多くつくられ、流通し、
店頭に並ぶようになった。
私も、そんな本を書いたり、
読んだりしているから、
そんな風潮を批判すると、
天に唾することになるが、
それでも「精読」する本はたくさんあるし、
「精読」が必要だと思う。
そのうえで、
よく考える必要がある。
よく噛んで食べること。
一口一口味わって食べること。
それが必要だと思う。
さて、昨日から、
コーネル大学RMPジャパン。
第二期の5回目の講義。
あっという間に、
もう半分が終わろうとしている。
コーネル・ジャパンは、読書でいえば、
膨大なる体系の大全集を、
1年かけて「精読」するようなもの。
今回は、そのマーケティングとマーチャンダイジング編。
12時15分から第一講座。
テーマは、「脱コモディティ化・マーケティング戦略」
講師は、早稲田大学商学学術院教授の恩蔵直人さん。
この10年、コモディティ化は進んでいる。
その研究成果を実証してくれた。
そのうえで、「脱コモディティ」の4つの戦略が提示された。
①独自価値戦略
②品質価値戦略
③カテゴリー価値戦略
④経験価値戦略
最後にリーン消費対応の考え方を恩蔵さんは語ったが、
これが小売業、流通業における購買プロセスの革新へとつながる。
私は、コモディティ市場の有益性を主張するものだ。
コモディティ・マーケット抜きには、
消費生活は営めない。
そのうえで、脱コモディティのマーケティング戦略も求められる。
第二講座は、「マーチャンダイジングの基本」。
講師は、大塚明先生。
日本スーパーマーケット協会専務理事。
元㈱ヤオコー常務。
スーパーマーケットの実務に関しては、
マーチャンダイジングから店舗運営、人事、
ロジスティックス、情報システムと、
ほとんどすべてを経験した。
ご本人によると、「店舗開発と社長職以外は、
全部やらせていただきました」となる。
しかし「フレッシュ・ヤオコー」という宅配事業では、
社長業も十二分にこなしたため、
スーパーマーケットの全実務を体験したといってもいい。
私はそう思っている。
その経験をもとに、
「マーチャンダイジングの基本」を語ってくれた。
第三講座は、「青果部門のマーチャンダイジング」
講師は、藤井俊雄先生。
ダイエーで、青果部門のバイヤーを務め、
この道40年の大ベテラン。
現場からの青果物マーチャンダイジング改革を語ってくれた。
第四講座のタイトルは、「変革から進化へ――水産は?」
講師は、日本水産㈱代表取締役社長の垣添直也さん。
日本はもちろん世界中を見渡しても、
垣添さんほど、水産物に対する高い見識を持つ人は見当たらない。
豊富な資料をもとに、
水産物の生産と流通・小売りに、
鋭い問題提起をしていただいた。
詳細は、コーネル大学ジャパンのホームページを、
参照していただきたい。
来週頭から、順次アップされる予定。
コーネルは大全集を精読するがごとき勉強であると言った。
まさにそれが、実感された一日だった。
最後に、『メッセージ』より。
「良く噛んで食べる」
人間ドックに入って出てきたら、
金属疲労のごとく、
いっせいにチェックが入れられた。
全身疲労の四十九歳。
要は、体重を減らせ、痩せろ、節制せよ。
そこで、考えた。
「良く噛んで食べる」
これだけに徹しよう。
そうすればすべて上手くいく。
まず消化がよくなる。
胃腸の負担が軽くなる。
歯が丈夫になる。
顎も発達する。
食べ物の味が分かるようになる。
食べる時間は長くなるが、総体的に量が減る。
量が減れば、少しだけお金もかからなくなる。
その分、美味しいものを食べようと努力する。
うん、すべてよくなる。
健康になるはずだ。
しかし困った。
「良く噛んで食べる」とは、
いったいどうすることなのか。
そこで再び、考えた。
「心の中で数えながら噛む」
最低四〇回、あるいは四十八回。
この習慣をつける。
「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち」
「に、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち」
「さん、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち」
「し、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち」…………
このくらいで、たいていのものは、
心地よく口の中から消えていく。
きちんと噛むために、適当なかたまりを、
順序よく口の中に入れるようになる。
食物の堅さにも関心を払うようになる。
すべてよくなる。
ときどき、舌や唇を噛んでしまうこともあるが。
しかしみたび、考えた。
この私の「食べるマニュアル」は、
果たして、
食事時だけのものなのか。
実は、これが何にでも使える。
事実も、問題も、「良く噛んで食べる」
苦情も、報告も、「心の中で数えながら噛む」
目がさめている限り、何でも。
今年の標語。
Practice comes first!
これも、よく噛んで食べる実践でなければならない。
<結城義晴>