小沢一郎不起訴、朝青龍引退。
残る者、去る者。
人物往来の昨日だった。
しかし、語る言葉なし。
一昨日は、コーネル・ジャパンの講義が開催されたが、
私は、実に忙しかった。
コーネルの講義が終了した後の夜8時。
東京・神谷町のイタリアンレストラン「ラ・ターナ・ディ・バッコ」。
小さな食事会が大きな知的成果を上げた。
㈱成城石井社長の大久保恒夫さんと私。
大久保さんは、ご存知、
コーネル・ジャパン第一期生副級長にして、第二期講師。
それから、㈱義津屋代表取締役の伊藤彰浩さん。
㈱USP研究所代表取締役所長で、コーネル・ジャパン講師の當仲寛哲さん、
そして㈱フランチャイズアドバンテージ代表取締役社長の田嶋雅美さん。
この会、盛り上がった。
ワインを堪能し、イタメシを満喫した。
それ以上に、会話が弾み、
経営の極意が語られた。
大久保さんも私も、語りまくった。
私、最近は大久保さんと飲むと、いつも飲みすぎる。
なんというか、
「心が融ける」。
當仲さんも田嶋さんも、大いに語ったし、
伊藤さんが張り切って持論を展開した。
その大久保さんと私との「二人のビッグセミナー」
商人舎2周年記念と銘打って、3月9日(火曜日)開催。
テーマは「2010知識商人の経営の流儀」
是非のご参加をお願いしたい。
さて、昨日のコーネル大学RMPジャパンの講義。
私たちの教室は東京・市ヶ谷の法政大学ボアソナード・タワー25階。
そこから見下ろす東京・新宿方面の市街とその先に浮かぶ富士。
朝一番の9時からの講義は、林廣美先生。
講座タイトルは「惣菜・日配・ベーカリーマーチャンダイジング」
林先生は、NHK「ためしてガッテン」などテレビでも有名。
商人舎ホームページでは、2008年9月から、
「林廣美の今週のお惣菜」のブログを連載してくださっている。
デフレが惣菜を大きく変革させている。
しかし弁当も惣菜も、売れるものは決まっている。
弁当では、①鶏のから揚げ弁当、②とんかつ弁当と、
順位は決まっている。
一方で、メーカーの活発な技術開発で、
スーパーマーケットの惣菜が「日配化」している。
結果として、日本のスーパーマーケットの惣菜には、
オリジナリティがなくなった。
「お湯ポチャをもってこい」というバイヤーが多い。
酢豚のお湯ポチャなんて商品もある。
煮物も100%メーカー製。だから売場はできるが、煮物は売れない。
その中で、店全体を惣菜化する必要がある。
惣菜は今や、唯一の差別化の売り場。
品質を上げて価格を下げる。
その方法はある。
これは林先生の持論。
アメリカのスーパーマーケットでは、
手づくり商品とマスプロダクト商品が、
はっきりと違う売り場に構成されている。
そして手づくりは「デリ」売場に大切に売られている。
これを学ばなければいけない。
デリだけではない。
チーズも、手づくりチーズはデリ売り場、
プロセスチーズは肉売り場。
ワインもデリの売り場には手づくりワイン。
インストアベーカリーはデリ売り場に近接し、
工場で作った大量生産品はパン売り場。
その意味では、再びアメリカに学べ。
惣菜の認識を変えろ。
アメリカ人は、自分で料理を作らない代わりに、
手づくりを大切にする。
経営者こそ、林先生の声に耳を傾けてほしい。
第二講座、講師は宗像守先生。
ご存知、日本チェーンドラッグストア協会事務総長。私の同志。
昨年6月の『薬事法改正』の立役者。
テーマは「改正薬事法によって変わるマーケットとマーチャンダイジング」
講義の第1は、改正薬事法の内容と施工後の状況を、
誰よりもわかりやすく、誰よりも生々しく。
第2は、「少子高齢化社会とヘルスケアマーケットの拡大」
第3は「ヘルス&ビューティケアの概要と可能性」
第4は、スーパーマーケットが、
「ヘルス&ビューティケアマーケットをどう攻略するか」
いちばん最後に、業態論の展開まで示唆してくれた。
いい講義だった。
あっという間にお昼。
富士はくっきりと姿を現していた。
午後は、パネルディスカッション。
テーマは「商品開発の理論と実践」
ゲストは、デイモンワールドワイド日本支社副社長のピーター・トーマスさん。
そして、食品流通研究会会長の井口征昭さん。
ピーターさんは、
「消費者洞察を活用した商品開発」のテーマで、
80分のレクチャー。
まぎれもない事実としての、プライベートブランドの普及。
欧米の小売業ブランドも、
ラベルの張り替えから、「ブランド化」への転換が進む。
その実態と、その手法と、
ケーススタディを、丁寧に語ってくれた。
テスコ、ウェグマンズ、HEB、そしてウォルマート。
商人舎アメリカ視察セミナーのメリッサ・フレミングさんの講義に通ずる。
当然ではある。
HEBはデイモンのコンサルティングを受けている。
今年の秋にも、ピーターさんを招いて、
商人舎公開PBセミナー第2弾を開催しなければと、
勝手に考えた。
ピーターさんの後は、井口さんの講義。
「PB開発の進め方」
まず井口さんは、企業理念の確認が必要と説く。
「無印良品」開発の中心に居た井口さん。
だからこそ、企業理念の重要さを痛感している。
その後ブランドとデザイン、
品揃え、品質分析、配合決定、
工場視察、メーカー選定、
包装デザイン・原価決定、そして販売計画。
経験に基づく手順とプロセスが解説された。
最後の手厳しい指摘。
一昨年、昨年と日本中がPBブームに湧いた。
しかし、その先陣を切ったイオンやセブン&アイホールディングスの収益性が、
PBによって改善されたとは言えない。
まじめに、ブランド確立の努力を続けねばならない。
第二期生からも積極的な質問が飛んだ。
㈱平和堂の夏原陽平さん。
㈱関西スーパーマーケットの柄谷康夫さん。
ピーターさんも、熱心に答えてくれた。
井口さんも、私も、丁寧に解説した。
このパネルディスカッション自体の解答は、
この二日間のコーネルの講義全体が提示していた。
恩蔵さんの語ったコモディティ化。
そのためのリーン消費対応と脱コモディティ化戦略。
それはまさに、PB戦略の基盤となっていなければならない。
大塚さんの品揃えの基本。
この中にいかにPBを位置づけるか。
そして青果、水産、惣菜の、
それぞれのマーケットでの変化と革新。
それが小売業の商品開発に凝縮されて、
個別の企業の価値をつくりだす。
まさに「差異が価値を生む」
同質化したPBを、
同じレベルの技術を持つメーカーにつくらせても、
「お湯ポチャ惣菜」にしかならない。
今こそ、考える時だ。
自分で。
それがコーネル・ジャパンの教えるものである。
成城石井・大久保さんのPBに対する考え方。
極めて明快だが、その奥深いものは、3月9日に明らかになる。
<結城義晴>