昨日は初夏の天気。
今日は三寒四温の春先の天候。
くれぐれも、お体には気をつけて。
今週は、月曜日に商人舎オフィスに出たきり、
4日間連続で出張。
だから土曜日の今日、オフィスに出て、
一日仕事。
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の結城ゼミ長・名古屋文彦さんが、
事務所を訪れてくれて、いくつかのサジェッションとディスカッション。
商人舎は、知識商人の集う舎人(とねり)。
いつでも、誰でも、大歓迎。
ただし、結城義晴不在多し。
さて、昨日の続き。
ということは、一昨日のコーネル大学RMPジャパン3月第二日目の後半。
コ―ネル・ジャパンは、10月開講。
毎月1回、2日間にわたって講義が展開される。
だから3月は、6回目。
すなわち後半の最初。
ここから現場実習などが、
次々に繰り広げられる。
「現場第一・実践躬行」が私のポリシー。
その3月は、情報と物流を学ぶ。
インフォメーションとロジスティックスに関して、
机上の勉強では、それこそ机上でしか役立たないことになってしまう。
初日が、ヤオコー狭山物流センターで、常温物流を学習。
二日目の朝4時から、今度は低温物流を学習。
ご存知、ヤオコーは「ライフスタイルアソートメント」を標榜する。
だからヤオコーのロジスティックスは、
ライフスタイルアソートメント型物流である。
しかし、世の中には、それとは違う哲学の小売業がある。
その物流はどんな思想とどんな仕組みをもつのか。
対極的な仕組みの勉強が必要となる。
そこで出番は、北辰商事㈱、ロヂャースとなる。
ヤオコーの南古谷店からロヂャース岩槻共配センターまで、バスで45分。
到着したらもう、副社長の太田順康さんが待ち受けていて、
バスに乗り込んできた。
マイクをつかむと、レクチャーが始まる。
「このセンターは、1.8%の経費でできている」
ディスカウントの雄ロヂャース。
だから徹底した低コストオペレーションの思想が、
物流にもセンター運営にも貫かれている。
ロヂャース岩槻共配センターは、
㈱日本アクセスが、
「特定得意先向け常温物流センター」として誕生させた施設。
敷地5427坪、延床6730坪、鉄骨造り3層。
この常温センターは、通過型のトランスファーセンター(TC)機能と、
在庫型のディストリビューションセンター(DC)の機能を持つ。
TCは、主力9社以外全量スキャンを施す。
DCは全品買い取り在庫で、発注はセンター側が行う。
まず、通過型の商品入荷。
すぐにベルトコンベアに載せられ、
ケースソーターラインにつながる。
ケースごとに、全品スキャンされ、店別仕分けされる。
一方、在庫機能には3種類の最新設備が入っている。
第一が、自動倉庫。
三層の立体自動倉庫で、
高い保管効率を実現させている。
2階部分にピッキングステーションがある。
ここでは、コンピュータ画面を見ながら、
人力での店別積み込みがなされる。
そして1階のソーターレーンに流れる。
第二は、ピックトゥー自動倉庫。
こちらもケース単位だが。
両サイドの在庫スペースから、
店別にピックアップする機能がある。
ラックの上部にランプと数字が出てきて、
その数量をベルトコンベアに載せると、
これまたソーターラインに繋がっていて、
店別仕分けされる。
第三が、在庫ゾーンでパレットラックエリア、中置ラックエリアと呼ばれる。
ここにもソーターラインにつながるベルトコンベアが敷かれている。
すべてのラインが中二階のセンサーを通り、
1箱ごとに数字が印字される。
すごい勢いで、ケースが流れ、
ソーター仕分けされていく。
最後は、人間の手でカートラックに積まれ、
11トントラックへ。
センター内はフォークリフトで商品が動かされる。
ロヂャースの特徴は、単品量の多さ。
当然ながら、フォークリフトが大活躍する。
現場でも、太田さんのレクチャーがつづく。
以上の機能は、実は普遍的なもので、
どのセンターでも行われている。
このセンターの最大の特徴は、「ピースソーター機能」にある。
ロチャ―スは非食品が強いディスカウンターでもある。
その非食品に関して、全商品の単品別検品を行っている。
カテゴリーが示されている。
写真のように、全商品をケースを開封して取り出し、
1品ずつスキャンしている。
その1品ずつが、ソーターで店別仕分けされる。
大型商品は、こちらのゾーンで単品検品される。
これらの商品群は、実は数量間違い、品目間違いが多い。
だからロヂャースでは、センター内で、
これらのカテゴリー全品のスキャンと検品を集中して行う。
ここでの入荷データとPOSデータを付け合わせることで、
店舗への誤配が減る。
以前は、部屋いっぱいの誤配商品が出た。すなわちロスである。
しかし現在、年間2万円分しか出なくなった。
そのポイントがこの全品検品にある。
太田さんは言う。
「例外を認めない。
それがローコストオペレーションの鍵だ」
返品、値引き、償却等の手書き伝票を廃止している。
結果として、ロヂャース共配センターでの破損率は下がり続ける。
センター見学が終わると、
3階の会議室で、太田さんの講義。
「ロヂャースの自動発注システムについて」。
ロヂャースは、このセンターを活用しながら、
総発注数に対して80.7%を自動発注によって、店頭に並べている。
このセンター通過商品が自動発注の対象となる。
自動発注は、店舗での作業において、
定型の発注業務が不要になるという仕組み。
太田さんの持論。
店でやるべき作業とやってはいけない作業を区別し、
それを徹底すること。
棚単位納品や通路単位納品は、ロヂャースではやってはいけない。
センターへの逆流も、ロチャ―スではやってはいけない。
結果として、低経費のロジスティックスが完成する。
太田さんは言う。
「物流部門の長はナンバー2の仕事。
商品部長よりも店舗運営部長よりも上位者であるべきだ」
そしてセンター長はトップ直轄である。
いかにセンターの機能を重視しているか。
そしてそれがロヂャースの5.5%の売上高経常利益率を支えている。
太田さんの講義を聞き終えて、昼食を済ませると、
ロヂャース大宮店へ。
ここで、自動発注の現場実態を体験する。
そのカギを握るハンディターミナル。
このハンディターミナルですべてのシステムが使える。
最大の機能は、在庫管理と自動発注。
商品や棚のバーコードをスキャンすると、
平日用最大陳列量、土日用最大陳列量、発注点、
そして現在の在庫数が出てくる。
最大陳列量と発注点はあらかじめ決められていて、
発注点を割ると、自動的に発注がなされる。
このハンディターミナルは、在庫管理、
および、イレギュラーなことが起こった時の、
修正の道具である。
定型の商品、私の言葉でいえば、コモディティアイテムは、
平日と土曜日曜の最大陳列量を決めておいて、
過剰在庫にならないようにする。
発注点陳列量は、欠品に陥らない数量。
その発注点を割ったら、自動的に発注される。
もちろん品目ごとに発注単位数量が決まっていて、
最大陳列量を超えないように設計されている。
これによって、コモディティグッズの定型での発注作業はなくなる。
現場では、異常値が発生したり、イレギュラーなアクションを行うときのみ、
業務が発生する。
そして特売以外のイレギュラーを発生させない方向で、
マーチャンダイジングを組み立てるのがロヂャース流である。
3階会議室で、質疑応答。
太田さんは、どんな質問にも答えてくれた。
心から感謝しつつ、固い握手。
太田さんはコーネル大学RMPジャパン第1期生級長。
コーネル卒業生は「コ―ネリアン」と呼ばれるが、
そのリーダーである。
長い長い1日が終わり、
バスの中。
みんなホッとした顔つき。
今回もとてもいい研修だった。
ヤオコー、ロヂャース。
多くの企業の皆さんにご協力いただいてコーネル・ジャパンは成り立っている。
近い将来の業界のリーダーを育てる。
この目的は、私たちが、必ず果たさねばならない。
そのリーダーに求められるのは、
「知識商人」としての知恵と意思決定能力である。
ヤオコーのロジスティックス、
ロヂャースの物流。
両者を学んだうえで、自分で考え、判断する。
リーダーには孤独な意思決定が待っている。
そのための能力開発が、コーネルの目的である。
<結城義晴>