故田村弘一さんの告別式があった。
享年70歳。
㈱グリーンファクトリーの現役社長。
元㈱クイーンズ伊勢丹社長、㈱パレ社長など歴任。
スーパーマーケット・トレードショーのブースでお会いし、
㈱スズキヤの中村洋子社長と一緒に写真を撮った。
それが最後のお別れになった。
ご冥福を祈りたい。
合掌、黙祷。
今朝、東京・池尻の東邦大学付属病院で検査と診察。
私の場合は、右目。
10歳の夏休み、右目に針金が刺さり、
白内障で水晶体摘出手術
その後、㈱商業界社長の53歳の5月に、
突然の網膜剥離で、手術。
さらに、一昨年、㈱商人舎を立ち上げたばかりの3月に、
緑内障で眼圧が高まり、二度の手術。
それからちょうど二年。
今朝の視野検査、眼圧検査と診断のあと、
北善幸医師は言った。
「結城さんの場合、命よりも右目の寿命は短いでしょう」
「あと20年か、25年か」
「右目の視力がゼロになることもあります」
私は聞いた。
「ゼロというのは、真っ暗になることですか」
「はい」
私は、思った。
絶対に命は、右目より長生きさせる。
それに私には左目がある。
大切に、生きよう。
『週刊エコノミスト』は「特集・百貨店沈没」。
『週刊東洋経済』は「百貨店・スーパー大閉鎖時代」。
有楽町西武マリオンの閉店は、
一般マスコミ人にとって、
よほどインパクトのある事件だったようだ。
私の場合に置き換えると、
会社が私の寿命。
有楽町の店は、私の右目。
右目が見えなくなることは辛い、悲しい。
しかし、人間の命がもっと大切。
右目にも寿命があるし、
人間にも寿命がある。
店にも寿命があるし、
会社にも寿命がある。
そして業態にも寿命がある。
東洋経済記者のインタビュー。
「西武有楽町店は顔的存在だったと思うのですが」
それに答えて、
セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さん。
「顔でも何でもない。
今までやってきたこと自体が不思議だった」
「開業以来一度も黒字化したことがなく、
規模が小さいからファッションビルにもならない」
鈴木敏文さんへの質問は、
頓珍漢な事を聞くに限る。
あるいは怒らせる。
そうすると、いい答えが返ってくる。
鈴木さんは冷徹な人だ。
右目でも、胃袋でも、
たとえ顔であっても、
不必要なものは容赦なく手術する。
しかし、それが一番、
人間の命を大切にすることになる。
マスコミは、ともするとノスタルジックになる。
それが大衆受けするからだ。
小売業ももちろん、大衆を顧客にしている。
しかし、ノスタルジックな商売は成り立たない。
不思議なことだ。
あくまでもリアリズム。
リアリティこそ、商人のよりどころだ。
ところで『東洋経済』と『エコノミスト』。
前者は全面展開しすぎて、
週刊誌としては散漫になってしまった。
「大閉鎖時代」と時代をとらえようとしたから、
百貨店もアパレルも総合スーパーも、
スペースをとって取り上げた。
そのために、一般読者からすると、
特集テーマと同じ「総合の隘路」に陥った。
一方、『エコノミスト』は百貨店の沈没に絞り込んだ。
巻頭記事に私のコメントも入れてくれた。
週刊誌としてはこれでよいかもしれない。
しかし、もっともっと、鋭い切り口が必要だ。
それこそ、「顔を切っても命は守る」くらいの意気込みを、
特集の中に塗りこめるべきだ。
自ら「毒」をもたねば、
マスコミ自体、生き残れない。
日経MJで㈱カスミ社長の小濵裕正さんが語っている。
「デフレがいけないとか安売りがいけないとか、
経済学者が言うのはわかるが、
スーパーの経営者が言ってはいけない」
「1円でも安く売り、
1円でも利益を出す仕組みをつくるのが、
チェーンストア」
「安く売ったらつぶれるというのなら、
経営者をやめなければいけない」
このリアリティが、本物の商人だ。
リアリティとノスタルジー。
雑誌も店も、
マスコミ企業も小売企業も。
実は、同じところに立っている。
再び、田村弘一さんに、黙祷。
<結城義晴>