日本からアメリカにやってくる。
初日は、実に長い。
日本で出発の朝、6時に起床すると仮定しよう。
今回の私のように、正午近くの便に乗って11時間半。
すると例えばダラスの午前9時ごろに到着。
それからオースティンなどに乗り換えてやってくると、
正午過ぎになる。
この時間は日本では、深夜の2時過ぎ。
そこから視察をして、
夕方にホテルに入り、
セミナーで語り、
夕食をとって、
酒を飲み、
部屋に帰って、
ブログを書く。
夜の12時に書き終わったとして、
日本時間は午後2時。
日本からのフライトの中で、
少しでも寝ておかないと、
32時間くらいぶっ続けで起きていることになる。
私の場合、飛行機で少し寝る。
1時間か2時間くらいか。
あとは起きている。
しかし、アメリカに来て初日に頑張って、
その晩、ぐっすりと寝ると、
まったく元気に動き続けることができる。
ところが今回は、違った。
初日夜には、すんなりブログを書いたが、
その後も部屋で仕事をした。
結局、テキサス時間午前4時に寝た。
そして7時前に起きた。
それでも、バスの中でも語り続け、
店舗はくまなく見て歩き、
時にはインタビューし、
質問に答え、
何より頭をフル活動して、
考察する。
アメリカが私に、
異様な刺激を与えてくれる。
さて、そんな長い初日の次の日。
オースティンは、からりと晴れ上がった。
いや、灼熱の夏のような気候。
朝、8時出発で、まず、
ホールフーズの旗艦店を再訪。
陳列作業が終了していて、
見事の一言。
ホールフーズの2009年実績。
売上高80億3200万ドル。
100円で円換算すると8032億円。
伸び率は0.9%と落ち込んだ。
2008年はワイルドオーツを買収したから20.6%伸びた。
既存店伸び率は、マイナス 3.1%。
これもピークの2004年度には20.8%もの劇的伸長率を示した。
粗利益率は、34.3で堅持。
純利益は1億4700万ドル、147億円。
期末店舗数は、284で、
期中新店15、閉鎖店6。
この面ではノーマルな成長。
しかし現場には明らかに活気が戻っている。
CEOのジョン・マッケイが「基本に戻ろう」と呼び掛け、
アソシエーツがそれに応えた。
写真でお楽しみいただこう。
本社の下の旗艦店。
店を入ると圧巻の青果部門。
朝8時、開店時品揃え100%が完成していた。
葉物野菜とニンジンを組み合わせた典型的な前進立体陳列。
オーガニック野菜もピンピンとしていて、美しい売り場になっている。
下段キャベツの陳列。見てください。
青果部門はワンウェイコントロールになっている。
これも美しい前進立体陳列。
バナナは必ず青果部門の最後にある。
マグネットの役割を果たす。
天井は高く、ダクトがむき出しだが、ホールフーズらしく、美しい。
プロペラ方式のファンがゆっくりと回っている。
鮮魚売り場は作業通路が一段と高くなっている対面方式。
氷の上に生魚を美しく並べる。
スモークシーフード売り場。
この商品が美味。
そのうえサンプルを要求すると、いやな顔一つ見せず、
本当にどれでも食べさせてくれる。
シーフードの前にはフードコート。店内主要カテゴリーの前には、
必ずフードコートが設けられている。
広い通路と美しい店内、美しい商品陳列。そのなかで試食もするが、
完食もしてもらう。
それがホールフーズの政策。
オーガニック満載の乳製品売り場。
そして精肉部門に続く。ここにもフードコートがある。
精肉も対面売り場で、顧客の注文に応える。
コーヒーの売り場。
コーヒーからケーキ、菓子の対面売り場につながる。
ビールは専用のセラーがあって、冷やして売られる。
水のプライベートブランド。
パッケージからもおわかりのようにファイターブランド。
競争的価格を出す、価格パワーを持つ商品。
ホールフーズがディスカウントを始めた。
それを象徴する商品。
店舗左奥から見た広大なデリの売り場。
左が寿司、右が対面の丼もの売り場。
生ジュースとアイスクリーム売り場。
デリ売り場は、朝食、昼食、夕食向けに店舗入り口にある。
朝一番からにぎわっている。
オールフーズ旗艦店が元気になった。
わたしはそれだけで嬉しくなった。
まさに世界最高峰の店の復活である。
次に訪れたのが、
HEBが展開するアップグレード・フォーマット。
「セントラルマーケット」
その第一号店。1994 年オープンの店。
HEBの2009年度年商150億ドル、1兆5000億円。
売上げ伸び率2.4%。
店舗数317店。
3つの戦略的フォーマットを持つ。
第一が、フード&ドラッグ(H.E.B Food Store)。
生鮮食品の強さの上に、ドラッグストアをコンビネーションさせた。
店舗面積は1400坪から2500坪。
平均1週間70万ドルの売上高で、
そのうち、トップの20店舗は週100万ドルを稼ぐ。
すなわち年間約50億円。
第二の戦略フォーマットが、セントラルマーケット(Central Market)。
都市部の超大型グルメスーパーマーケット。
青果部門は全米有数のパワーを持つ。
そのうえでプリペアード・フードとグロサリーのスペシャルティ・プロダクト。
第三が昨日訪れたHEB プラス(plus)。
フー ド&ドラッグに、さらに非食品をプラスアルファしたコンビネーションタイプ。
11万~20万スクェアフィート(3000~5600坪)で、
1 週間80万~100万ドルの売上高。
円換算すると40億円から50億円の年商。
さて2番目のセントラルマーケットの第1号店、
最近、リニューアルした。
「アルゼンチンへのパスポート」と題したキャンペーンで、
店中がアルゼンチンモード。
青果部門の初めにオーガニック。緑色のPOP。
ワンウェイコントロールの店。
両サイドに高めの什器。
青果から鮮魚へ。器用な手さばきで魚をおろす。
精肉売り場は畜種別の対面コーナーが主力。
ワイン部門にはアンデス山脈の大きなボード。
アルゼンチンのキャンペーンの一環。
バルク売り場も、アップスケールタイプの店には不可欠。
チーズ売り場。すっきりしたデザインだが、
私はリニューアル前のほうが断然、好きだ。
ケーキ売り場も対面。
ワンウェイで顧客を引っ張るために対面コーナーを随所に設ける。
フレッシュパスタのコ-ナー。
最後にテイクアウトのデリ売り場。
この先に広大なフードコートが広がる。
さてどうだろう。
不思議なことに、魅力が半減した。
私の目にはそう映った。
なぜか。
古都の寺。
例えば奈良の薬師寺。
五重塔が二つある。
一方は焼失して、それが復元された。
もう一方は、奈良時代から残った国宝。
この場合、古いほうが圧倒的に良い。
セントラルマーケット第一号店のリニューアル。
新しい五重塔のような感じになっている。
誠に残念。
それでも、商品も人も変わらない。
だから徐々に、良くなっていくのだろうが、
店そのものは、この場合、
古いほうが良かった。
店とは不思議なものだ。
もしかしたら、
生きているのかもしれない。
人間のように、
生物のように。
生きているものの皮をはいで、
無理やり新しいものにするのは、
その生命力を 削ぐことになる。
もちろん古くて老衰しそうな生物に、
新しい血を降り注ぐことは必要だ。
その判断が、実はとても 難しい。
「むずかしいからおもしろい」
さて話は オースティンに戻る。
セントラルマーケットの前で全員で写真。
その後、私たちは急遽、予定を変更して、
「HEBプラス」の最新店に行った。
それが良かった。
HEBという企業の今後の姿勢を表していた。
[明日に続く]
<結城義晴>