商人舎Basic原理原則コース。
二日目の24日月曜日は、午前中、
スーパーマーケットを5店舗訪問し、
インタビューや見学、調査で、中身の濃い研修。
午後は、隣接する3つのショッピングセンターをめぐり、
商業集積のあり方、集積されるフォーマットの違い、
その役割など学習。
三日目は、ウォルマート環境対策店舗HE6型を皮切りに、
9店舗を訪れ、ギャラリアと称する大型商業集積を視察。
昼食は「イン&アウト」のハンバーガー。
この二日間で30店にも及ぶ店舗、ショップを訪れた。
今日は、その中から全米小売業ランキング上位10企業のダイジェスト。
その業績は、どんな原因で変化するのか、
どう読み取ればいいのか。
それが今日のテーマ。
第1位は何といっても、
世界小売業第1位でもあるウォルマートストアーズ。
売上高40兆8214億円、純利益1兆4335億円。
(以下1ドル100円換算で、円表示)
このブログでも常連の企業で、
ウォルマート抜きに米国小売業は語れない。
そのウォルマートは「Thousands of Rollbacks」を展開中。
強力なインパクトを周辺に与え続けている。
ウォルマートを第一の基準にして、
米国小売業が動いている。
だからウォルマートに勝る長所を持つ企業が、
成績を維持し、
ウォルマートに勝る部分が見当たらない企業は落ち込む。
それが顕著な特徴。
第二位は、スーパーマーケットのクローガー。
このエリアではスミスの店名で25.9%のシェアトップ。
クローガーは残念ながら、ほとんどの要素において、
ウォルマートに飲み込まれている。
生鮮食品やデリといった部門の個別の売り場、商品では、
勝っているものの、
米国スーパーマーケットにとって重要なグロサリーで、
ウォルマートに大きな格差をつけられた。
それがクローガーの最大の問題点。
全米第3位は、 コストコ。
年商7兆2483億円、純利益1282億円。
店舗数は、544店。
いつ、どの店に行っても、
コストコに閑古鳥が鳴いていることはない。
もちろんここラスベガスの店も大繁盛。
メンバーシップホールセールクラブという特異なフォーマットは、
「差異が価値を生む」という考え方そのもの。
ウォルマートのサムズ・クラブも、
コストコには遠く及ばない。
だからコストコは、今のところ、
数少ない安泰企業だと思う。
第4位は、ホームデポ。
年商7兆1288億円。前年比マイナス7.8%と低迷。
サブプライムローン破たんから住宅産業は大不振。
その影響を一番大きく受けた小売業がホームデポ。
2274店舗を配置し、米国最大のホームセンターとして、
社会的役割の大きさは変わらない。
そしてウォルマートは今、DIYやアウトドアに力を入れ始めた。
ウォルマートは弱い会社を徹底して、たたく。
ウォルマートの店舗はこれまで、入口は二つだった。
「Market」と書かれた入り口と、
「ホーム&ファーマシー」と書かれた入り口。
最近は第3の入口ができた。
「アウトドア・リビング」。
これはホームデポとロウズをターゲットにしていることを表している。
全米小売業第4位は、ターゲット。
年商6兆4948億円、純利益2214億円。
年商は前年比プラス2.5%、純利益はマイナス22.3%。
この企業も店舗レベルが下がることがない。
1682店舗は、いつも高い水準に保たれている。
しかしウォルマートと真っ向からぶつかる同業。
それにしては、本当によく頑張っていると思うが、
しかしターゲットの戦略は、ウォルマートとの違いを出すことで、
それ自体わかりやすいし、迷いはない。
それがこの企業のポジショニングの良さとなっている。
第6位、第7位は毎年のように、
抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げるドラッグストア。
第6位が、ウォルグリーン。
年商5兆9034億円、純利益2157億円。
どちらも前年比9.8%、5.7%とプラスで、
不況の中、堅実な成長を見せている。
ウォルグリーンもウォルマートが叶わないものを持っている。
「調剤部門」である。
だから不況をものともしない。
第7位は、CVSケアマーク。
店名は「CVSファーマシー」
年商4兆8989億円、店舗数6981。
アルバートソンのドラッグストア部門を買収したりして、
ウォルグリーンのスケールに迫っているが、
その分、店づくりやオペレーションにむらがある。
しかしこの企業も調剤部門では、ウォルマートをしのぐ。
何度も言うが、ウォルマートを凌駕するところを何か、
持っていなければ、成長もないし、存続もない。
第8位はロウズ。
ホームデポに次ぐホームセンタ―第2位。
年商4兆8230億円、純利益2195億円、店舗数1649。
年商の前年比マイナス0.1%、純利益はマイナス21.9%。
こちらもサブプライムローン問題の打撃を受けた。
今回は訪問せず、従って写真はない。
第9位は、シアーズホールディングス。
ご存知、シアーズとKマートを傘下に置く持ち株会社。
年商4兆6770億円、純利益53億円。
売上高の前年比はマイナス7.8%。
純利益は、間違いではない、マイナス93.6%。
シアーズもKマートも惨憺たる店舗状況。
当然、訪れる価値なしで、写真もなし。
そして第10位は、ベストバイ。
家電専門チェーン第1位。
売上高4兆5015億円、純利益1003億円。
店舗数は3942で、 ウォルマートと家電販売領域を分け合っている。
写真は「ギーク・スクワッド」のコーナー。
コンピュータ・サービスコーナーで、
ここで受け付け、バンが走り回って、
顧客サービスを展開する。
これはウォルマートにはないサービス。
こんなソフトウェアを次々に開発しているのがベストバイ。
だからベストバイはウォルマートと共存する。
そのあおりを受けて、
レディオシャックとサーキットシティは、
どちらも経営がおかしくなってしまった。
以上、全米10位までのダイジェスト。
ウォルマートにない特徴を持つ者が残る。
それがない者は衰え、滅びる。
しかしそう考えると、小さな単独店のスーパーマーケットには、
十二分にサバイバルの可能性がある。
小さいだけで、
ウォルマートにない経営資源を持っていると考えられるからだ。
これは日本にも適用できるコンセプトであり、
極めて面白い現象である。
(明日につづきます)
<結城義晴>