米国の自動車販売台数は前年比16%の伸びを見せて、
最悪の昨2009年から大幅に回復。
日本の国内新車販売台数も、
2010年上期は5年ぶりの前年比プラス、
その数値も21.5%増で好調を取り戻した。
その台数265万6828台。
このうちハイブリッド車が1割強。
エコカー減税と新車購入補助金が大きな追い風となった。
しかし日本人は、基本的には、
新車を購入する金を持っている。
少なくとも266万人が新車に金を払う意思決定をした。
世界全体を見渡すと、これはやはりすごいことだと思う。
このうち「登録車」と称する660cc超の車は、
5年ぶりにプラスで、なんと32%増。
上期半年間の伸び率は1968年に統計を取り始めて以来、
過去最高。
一方、「軽自動車」(660cc以下」は6%プラスで、これは4年ぶり。
こうして見ると、エコ減税等の自動車産業優遇政策はあるものの、
消費の潮目は明らかに変わりつつある。
それが日常消費財に及ぶには、
ちょっと時間のずれがあるかもしれない。
しかし、子細にみると、
消費の潮目の転換を観察できるに違いない。
6月最後の日に、日経MJが「2009年の小売業調査」を発表した。
「第43回目小売業ランキング」と銘打たれている。
1位 セブン&アイ・ホールディングス 5兆1113億円。マイナス9.5%。
2位 イオン 5兆0544億円、マイナス3.4%。
3位 ヤマダ電機 2兆0161億円、
ベスト8までではここだけプラス7.7%。
4位 三越伊勢丹ホールディングス1兆2916億円、マイナス9.5%。
5位 ユニー1兆1344億円、マイナス4.7%。
6位 J.フロントリテイリング9825億円、マイナス10.4%。
7位 ダイエー9768億円、マイナス6.2%。
8位 高島屋8778億円、マイナス10.1%。
9位 エディオン8200億円、プラス2.1%。
そして10位 ファーストリテイリング6850億円、プラス16.8%。
経常利益で1000億円を超えたのは4社。
1位 セブン&アイ 2270億円、マイナス18.7%。
2位 イオン 1302億円、プラス3.3%。
3位 ヤマダ電機 1016億円、プラス57.2%。
4位 ファーストリテイリング 1013億円、プラス18.2%。
ファーストリテイリングの売上対比経常利益率は14.8%。
ヤマダ電機はちょうど5.0%。
さてこの統計は本当に価値あるものだが、
今回、日経MJ紙が強調したのは、
一面で取り上げたROAと設備投資額。
この号は誰にとっても保存版。
詳細は新聞で見ていただきたい。
しかし、ROAはReturn On Asset、
すなわち総資本経常利益率であって、
これは投下されている総資産に対する経常利益率を示しているから、
設備投資も当然含まれている。
私はROAを基準に、
企業の成績を評価すべきであると考えている。
それも最低3年間を時系列に分析すべきだ。
5年前、10年前との比較も必要だろう。
この考え方は、渥美俊一先生から教授されたものだ。
そのROAランキングをみると、
小売業の趨勢が一目瞭然。
1位 ポイント33.6%
2位 エービーシー・マート28.3%
3位 ファーストリテイリング23.3%
4位 ニトリ22.9%
この4社が20%を超える。
高い経営効率で、ものすごい勢いで伸びていることを示す。
5位 メガネトップ17.5%
6位 しまむら16.3%
7位 良品計画15.3%
8位 オオゼキ15.1%
ここまでが15%超。
8位にスーパーマーケットのオオゼキが入っている。
9位 ヨドバシカメラ14.8%
10位 サンドラッグ14.4%
百貨店、総合スーパーは5%をはるかに切っていて、
コンビニも10以下となった。
最大の総合業態「百貨店」、
次に巨大な総合業態「総合スーパー」
(欧米ではハイパーマーケットと称する)、
食品における総合業態「スーパーマーケット」、
便利な総合業態「コンビニ」。
これらの業態の成長率が、
発祥が古い順に、
明らかに鈍化し、下落してきた。
ひとつは「業態の時代」から「フォーマットの時代」に移ったこと。
フォーマットとは「業態の分化した様ざまなかたち」(田村正紀)
もうひとつは、現在の日本のマーケットでは、
「総合」から「専門」に主導権が移りつつあること。
時代は「総合」から「専門」に大きく変わっている。
もちろん、この「総合」と「専門」との競い合いは、
長いスパンで見ると、上になったり下になったりする。
2010年の現状では、「専門」に傾斜していることは明らか。
従って、例えばスーパーマーケットでは、
「専門店」になる政策が有力だ。
これは㈱ヤオコー会長の川野幸夫さんの主張。
日経MJの「小売業調査」。
まだまだ論じなければならないポイントは多い。
しかし今日はもっとも重要な論点だけ。
これから、何度も、このデータを取り上げることと思う。
乞う、ご期待。
さて、昨日7月1日は対談の日。
午前中は東京・日本橋1丁目1番地。
国分株式会社。
専務取締役の國分晃さんと対談。
国分は今年、298年を迎える。
もともとは伊勢松坂の商人だったが、
四代目國分勘兵衛のときに、
関東に出てきて醤油醸造を始める。
その後、製造業よりも資金回収が早い卸売業に転身。
明治維新の後のことだった。
現在は、年商1兆4273億円で、
日本最大の食品酒類卸売企業。
國分晃さんは専務取締役。
お父上の國分勘兵衛さんは第13代。
その晃さんとの対談。
メディアは『月刊マーチャンダイジング』。
日野眞克さんが主幹で、
宮崎文隆さんが編集長。
ともにかつて㈱商業界に属した。
私から見るとまだまだ若い二人の経営専門雑誌。
今のところドラッグストアを主な対象にしているが、
大いに将来性を感じさせる雑誌経営をしている。
その『月刊マーチャンダイジング』の連載対談。
國分さんは、市場縮小時代の戦略を的確にとらえていた。
「フルライン・フルチャネルの地域密着ナンバー1卸売業」
従って、国内では、既存の市場を押さえつつ、
伸長するマーケットを狙う。
すなわち扱いカテゴリーの拡大。
「医食同源」を目指す。
一方、東アジアへの足掛かりも着ける。
総合商社とも連携するが、
卸売業ができる機能を、
アジア各国で確立することこそ、
国分の役割だと考える。
いつもそうだが、晃さんと話していると、
どうしても応援したくなる。
そんな人柄。
実際に小売業からも製造業からも、
支援者、応援者は多い。
日本の「中間流通」の社会的機能を、
さらに高度化、強化に努めてくれることと思う。
午後は、日本スーパーマーケット協会事務所に立ち寄り、
そのあと東神田。
リスパック東京支社会議室を借りて、
CDオーディオセミナーの収録。
私にとって、今週2回目の仕事。
ゲストは、マーケッターの松本朋子さん。
㈱マーケティング・ハピネス代表取締役社長。
著書は『あっ、買っちゃった』『買わせる技術』。
消費の現場を起点にして、マーケットを考える人。
松本さんは、はじめにPOSデータの分析からこの世界に入った。
次に、1996年から「レシート調査」を続けている。
その挙句に至ったのが、
「カスタマー・ハピネス」という概念。
これを提唱している。
顧客の幸福は、
「期待する幸福」と「浸る幸福」とから成る。
前者が購入する時に感じるもの、後者は使用する時に感じるもの。
この二つの局面を一瞬にして、
同時にイメージできるのが女性。
購買の主役を担う女性の買う気を誘う考え方、 アイデアなどが語られた。
活躍を期待したい人だ。
今週はあとひとつパネルディスカッション。
帝国ホテルで日本スーパーマーケット協会総会後の討論会。
エキサイティングで、スリリングな展開が予想できる。
私が生きている証を感じる時だ。
こうして結城義晴は、確実に若返ってゆく。
心から感謝。
<結城義晴>