【訃報】
渥美俊一先生が逝去されました。
享年83歳。
日本商業の近代化と流通業・サービス業の
チェーンストアづくりに一生を捧げられ、
イオンやセブン&アイ・ホールディングスに代表される
企業群を育てあげられました。
心から哀悼の意を表し、
謹んでご冥福をお祈りいたします。
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毎月第4週には、小売業各協会から、
前の月の営業報告が発表される。
これは小売業界だけの問題ではなく、
消費傾向を読み解くカギとなっていて、
重要な数値。
先週末から今週初めにかけて、
6月の統計が発表された。
これで1月から6月までの上半期のデータが揃ったことになる。
まず日本百貨店協会発表。
調査対象は92社・265店舗。
総売上高は前年同月比マイナス6.0%。
28カ月連続の減少。
大部門では、
食品がマイナス8.4%、
衣料品はマイナス5.8%。
プラスとなったのは商品券10.1%、
家電もわずかながらプラス0.1%。
大幅減少カテゴリーは、
その他食料品マイナス13.1%、
家具マイナス11.3%、
その他衣料品マイナス10.9%。
百貨店は全体の数字で把握する業態ではなくなりつつある。
どんな立地のどんな規模のどの企業の、
どの部門のどのカテゴリーのどの品目が、
どのように売られたから、
誰に、売れたのか。
そんなディテールが重要になってきた。
リテール・イズ・ディテール。
Retail is detail.
百貨店はまさに、そうなってきた。
衰退業態の特性である。
ただし何度も言うが、百貨店が滅びることはない。
繁盛する店の立地や規模がひどく限定されてくる。
それだけのこと。
一方、日本フランチャイズチェーン協会発表、
コンビニエンスストア10社の6月販売統計。
コンビニからトレンドを予測するには、
既存店の動向がポイントとなる。
全店ベース売上高は、前年同月比プラスの0.9%だったが、
既存店は相変わらずマイナス1.5%。
13カ月連続と1年以上も減少し続ける。
客数はプラスの0.04%で、
これは1年ぶり、12カ月ぶりに増加。
平均客単価はマイナス1.6%、
コンビニの客単価549.8円。
19カ月連続減少。
コンビニも完全に、踊り場を迎え、
成熟期に突入している。
だからこそコンビニ統計には、
現在の日本の消費が色濃く反映される。
その基準となる傾向は、
売上高はマイナスの1.5%、
客数はプラスの0.04%、
客単価マイナス1.6%。
すべての小売業が、
すべての業態が、
これをひとつの基準と考えて、
自らの状態をはかればいい。
さて『週刊ポスト』に面白い記事。
「仏教界騒然!お布施定額制は善か悪か」
表紙には「イオン参入でタブーの扉が開いた」
キャッチコピーがある。
私は週刊誌は買ったことがないが、
思わずコンビニに飛び込んで買ってしまった。
昨2009年9月にイオンは、
葬儀ビジネスに参入した。
イオンカードの会員向けの「僧侶紹介サービス」。
菩提寺を持たない顧客のためのサービスだが、
ここで「お布施」の目安額を明示した。
通夜や葬儀などの読経と戒名のセット金額。
段階制で「信士・信女」の普通戒名は25万円、
「居士・大姉」は40万円、
「院号居士・大姉」は55万円。
「主要8宗派の寺院と提携し、約600の寺を紹介」しつつ、
価格体系を明示した。
葬儀ビジネス版「正札販売」
葬祭ビジネス版エブリデー・ロープライス。
利用者からは、「分かりやすい」と大好評。
ただし、当然ながら仏教界からは、大ブーイング。
「布施とは本来、相手への感謝を示すもの」
「施しをするという意味で、労働の対価ではない」
「布施はあくまでも贈与。贈与する側が額面を決める」
「布施が価格になることは宗教そのものの危機」
イオンリテール・イオンライフ事業部の広原章隆事業部長が、
生真面目に率直にインタビューに答えている。
「葬儀事業を行う中で、お客様から、
『お布施は一体いくらだったらいいの?』
『目安だけでも教えてほしい』という声がものすごく多かった。
そういうお客様の問い合わせに対し、
何かできることはないかと始めました」
「お布施はだれが見ても宗教行為であり、
本来はそのお方のお気持ちで決めていただくもの。
だから、あくまでもパンフレットなどには、
目安ですと但し書きをしているのです」
イオンのこの姿勢、まことに正しい。
お客は宗教行為といえども、
お金がかかることには合理的な基準を求めている。
自分の判断のための社会的な基準。
それを知らせずして、
「闇市商法」のごとき「宗教行為」がはびこっていたら、
「正札販売運動」に駆逐される。
もちろん檀家制度の中で、
そういった目安が明らかになっていれば、
問題はまったくない。
「闇市商法」は「正札販売」に打倒される。
これはわれわれ商業者がよく知る事実。
イオンがここに一石を投じたことは、
痛快。
もちろんイオンは、「宗教行為」の領域を侵害しない姿勢を、
誠実に丁寧に示している。
「価格破壊」などと、
気負ったところもない。
それがまた痛快。
これならば、
仏さまの罰が当たることも、
あるまい。
<結城義晴>
[追伸]
日本的な話題を残しつつ、
私は今日からニューヨーク州へ。
コーネル大学RMPジャパン第二期生の卒業旅行。
明日から、ブログ公開時間が、
遅くなることをお許しいただきたい。
こんなブログを書いたからといって、
仏さまの罰が当らないところへ遁走するわけではない。
あくまでも卒業旅行。
今年1年の総決算となる。
ニューヨーク州、マンハッタン周辺の商業最新報告にも、
ご期待いただきたい。
[追伸2]
商人舎ホームページの「おススメ新着ブログ」。
「人を育むストア」
小林清泰の環境デザイン研究
新原稿が届きました。
today!となっています。
第二回目は「walmartロゴマーク変更の意味」。
真の専門家の原稿は、面白い。
ご愛読のほど。