「異例の不確実さ」
“unusually uncertain”
景気の見通しに関して、
アメリカ合衆国上院の公聴会で証言したのは、
中央銀行総裁役のベン・バーナンキ連邦準備制度理事会議長。
マクロ経済学の学者でもあることから、
この発言は各所に影響を与えた。
米国、日本、ともに金利低下の大きなトレンドが続く。
私たちのいるアメリカの景気は回復基調にあるが、
それとてもなだらか、ゆるやかで、
消費は思ったように伸びず、失業率も高い。
一方、日本チェーンストア協会発表の6月販売統計。
既存店は前年同月比マイナス1.4%。
総売上高はマイナス3.5%で、1兆0073億円。
会員企業62社で7859店のデータ。
コンビニがマイナス1.5%、
百貨店はマイナス6.0%だったから、
コンビニに近い結果となった。
食料品はマイナス1.4%、
衣料品は逆にプラス1.5%、
住関品はニトリの売り上げが含まれているにもかかわらず、
マイナス1.6%。
サービスも、マイナス7.4%。
こちらもまだまだ“unusually uncertain”
さて、ニューヨーク州のイサカ。
コーネル大学スタットラーホテル9階で目覚めた。
「森と♪ 泉に♪ 囲まれた♪」
広大なコーネル大学キャンパス。
快晴。
今日から講義。
その前に7時から、まず、朝の腹ごしらえ。
荒井伸也首席講師と夏原陽平さん。
8時、1階のエール・ルーム集合。
午前中は、ロッド・ホークス博士のレクチャー。
テーマは、「世界食品産業の課題と傾向」
ホークス先生は52歳。
気鋭の学者。
データと現場を見据えた素晴らしい講義だった。
二人の同時通訳がついて、
休憩をはさみながら3時間。
世界的なトレンドは、
先進国、発展途上国ともに、
①人口の都市化
②店舗の飽和化
③企業や資本の集中化
そこで新しいチャネルと新しいフォーマットが登場する。
アメリカではウェグマンズ、アルディ、
そしてウォルマートの動静を中心に、
鋭くて正確な分析。
さらに中国、インド、アジア、中南米、東西ヨーロッパ。
整理は多岐にわたり、なおかつ時代の流れを見据えた。
これをこそ「鳥の目」「魚の目」という。
詳細の紹介は、いずれまた機会を見て。
ホークス先生、10月のコーネル・ジャパン第3期公開開講講座のために、
来日の予定。
その時に、実際に講義を聴いてほしいところだ。
正午になって、昼食。
スタットラー・ホテル2階のレストラン。
セルフサービス方式なれども、
誠に美味。
ロースト・ビーフはシェフがカットしてくれる。
サラダ、スープなど、
日本人の私たちにも本当においしい。
食べているときは、静か。
これがフランスのシアルなどになると、
まずシャンパン、白ワイン、赤ワイン。
それに2時間のおしゃべりがくっつく。
しかし30分ほどで食べ終わって、
自由に時間を費やす。
2階のレストランから見下ろしていたら、
ヤンキー座りの男。
タバコをくゆらせている。
そこに次々と集まる。
「許されざる者たち」(クリント・イーストウッド監督作品)
やがて午後1時、最終講義。
「ストラテジック・プランニング」
戦略計画。
講師は、わがコーネル・ジャパン名誉学長にして、
コーネル大学名誉教授のジーン・ジャーマン先生。
インカムをつけて、実にわかりやすい英語で語り、
質問を引き出していく。
第二期生が積極的に立ち上がって、
質問に答え、自分の意見を開陳していく。
西水啓介さん。
山崎佳介さん。
稲田雄司さん。
夏原陽平さん。
そして柄谷康夫さん。
谷康一さん。
髙井累さん。
島拓也さん。
ジャーマン先生はあらかじめ41項目の事前アンケートを用意し、
第二期生のその回答と、
直前に終了したコーネル食品産業プログラムサマースクール受講生の回答とを、
比較しながら、「流通業の未来を予測」していく。
実は、この質問項目に、
爆弾が仕掛けられている。
ところが第二期生は、
そのトラップにかからなかった。
各人が、自分の現場経験をもとに、
ビビッドな問題としてテーマをとらえ、
率直に答えたからだった。
第一期生は、この罠にはまった。
第二期生は、
「奇跡」を起こした。
私はそう総括した。
慎重さと大胆さ。
それを兼ね備えつつ、
自分の頭で考え、判断する。
それがコーネルの求めるもの。
私もそんなリーダーを育てたい。
まさに「ミラクル二期生」だった。
ジャーマン先生には心から感謝して、
荒井先生からお礼の品を贈呈。
日米最年長のお二人の固い握手。
これにて座学はすべて終了。
あとはストアコンパリゾンを残すのみとなった。
皆さま、ありがとうございました。
コーネル・ジャパン第二期、
目出度く終了です。
そして全員で記念撮影。
エドワード・マクラフリン学長、
ビル・ドレイク主任講師にも加わっていただいて、
嬉しい写真。
皆さん、おめでとう。
私たちの力で、
“unusually uncertain”を、
追い払いたいものだ。
[つづきます]
<結城義晴>