結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年08月12日(木曜日)

イオン&マルナカ包括的提携と中野勘治菱食社長の「規模と機能」

本格的な帰省ラッシュ。
お盆休みの「国民大移動」復活

小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。

これが日本国民の大半が求めるもの。
つまりエブリボディ・ニーズ。

それに応えるのが、
小売業・サービス業。

それにしても自民党参議院議員会長選。
中曽根弘文氏と谷川秀善氏の間で争われ、
40票の同数の結果、
規約でくじ引き。
中曽根参議員会長誕生となったが、
小学生の学級委員選出のようで、
かわいいというか、
情けないというか。
けしからんというか、
どうでもいいというか。

7月の日本国の参議院選で勝利した自民党の、
その参議院のリーダー選出がくじ引き。

まったく、というか。

その間、円高は進み、
瞬間的に84円台に突入。
15年1カ月ぶり。

しかし15年前とは、状況はまるで違う。
1995年段階は、日経平均株価1万6800円、失業率3.1%、
現在は株価9300円、失業率5.3%。

「経済一流政治三流」が、
「経済三流政治五流」に、
堕してしまっている。

そんな中、国民のエブリボディ・ニーズは、
小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。

さて日経新聞が昨日の夕刊でスクープ。
「イオンとマルナカ、包括的業務提携」

イオンはご存知、
セブン&アイ・ホールディングスと並ぶ日本最大の小売業グループ。
全国にマックスバリュをはじめ、
カスミ、ベルク、いなげや、マルエツなど、
1200店のスーパーマーケットを配する。

一方、マルナカ・グル-プは、
中四国最大のスーパーマーケット企業。
総店舗数210店、総年商3300億円。
香川に本拠を置く四国のマルナカと、
岡山に本部を持つ中国地方の山陽マルナカ。
両者で瀬戸内リージョナルチェーンを構築。
近く、ホールディングカンパニーをつくる予定。
マルナカ社長は中山芳彦氏、
山陽マルナカ社長は、その長男でマルナカ専務の明憲氏。

包括的業務提携は、
今のところ商品がらみの内容。

イオンのプライベートブランド「トップバリュ」の提供、
メーカー商品の共同調達、
物流・情報システムの相互活用など。

マルナカ専務中山明憲さんは、発言している。
「現時点では資本提携は考えていない」
私には、この発言をした時の中山さんの表情が浮かぶ。

一方、イオンは坂野邦雄SM事業最高責任者が発言。
「中四国で確固たる地位を築きたい」
これも、表情が浮かぶ。
坂野さんは、構想している。
「範囲の経済におけるクリティカル・マス」を。
私の持論でもある。

この包括的業務提携の意義は大きい。
第一に、食品スーパーマーケットの業務提携であること。
イオンはスーパーマーケットに最大の力を入れている。
だから全国の食品スーパーマーケットに大きなインパクトを与える。
第二は、中四国エリアの「クリティカル・マス」突破を狙っていること。

「マルナカよ、お前もか!」ではない。
「これも一局」である。

バックに三菱商事が絡むこともあって、
この提携、若干の資本提携に進むに違いない。
その後は、カスミやベルク、いなげや、光洋と同方向を志向する。

ただし、私は思う。
少なくともアメリカのクローガー方式を採用すべきだ。
間違ってもアルバートソン型に至ってはいけない。

さて昨日は、東京・平和島。
dscn1924-3.jpg

モノレールの流通センター駅で降りて、
㈱菱食本社へ。

dscn1925-1.jpg

菱食・中野勘治社長インタビュー。

dscn1931-1.jpg

月刊『マーチャンダイジング』の連載企画で、
宮崎文隆編集長が同道。
宮崎さんは㈱商業界の『販売革新』前編集長。

dscn1937-1.jpg

中野さんは、1939年7月七夕生まれ。
ニチレイ専務、ユキワ社長、アールワイフードサービス社長を歴任し、
2006年菱食副社長を経て、2008年3月社長就任。

dscn1928-1.jpg

就任と同時に、「創造的破壊」を推し進め、
菱食改革の陣頭指揮を執る。

20世紀的な食品卸売業から、
21世紀の中間流通業へ。
そのために新しい機能創出を志向する。

規模の論理から、機能とマーケティングの論理へ。
「リテール・サポート」はもちろんのこと、
「コーディネートの役割」を果たさねばならない。
そこで「フードコーディネート本部」をつくった。

私は、パーティなどで中野さんにはよくお会いする。
しかしこうしてゆっくり、じっくりお話しする機会はなかった。

dscn1938-1.jpg

中野さんは実にエネルギッシュで、
イノベーションの意欲に燃えていた。

第一声は「この異常な暑さは、神風だ」

dscn1935-1.jpg

目下の最大の話題は、「4社経営統合」
菱食を中心に、三菱商事傘下の食品卸売企業3社の経営統合。
㈱明治屋商事は酒類に伝統があり、強い。
㈱フードサービスネットワークは低温商品の機能を持つ。
そして㈱サンエスは菓子問屋として強力である。
もちろん菱食は加工食品だけで1兆円のスケールを持つ。

それぞれの機能において、
製造業にも小売業にも十分な役割が果たせる総合化を成し遂げる。

中野さんによると、それは、
「生活編集能力の高い生活者のライフスタイル多様化に対応」するために、
新しい中間流通として必須の機能である。

菱食1兆3993億円、
明治屋商事3051億円、
フードサービスネットワーク3129億円、
サンエス2035億円。

トータル2兆2000億円の日本最大の食品卸売業。
しかしそれは、
単に巨大な卸売業が誕生するというだけのことではない。

dscn1929-1.jpg

私は日本人の生活は、
どんどん個性化していると考えている。
一人ひとりが個性化を志向する。
それが結果として多様化現象を起こす。

これは「自己編集能力」の獲得である。
生活者のライフスタイルの多様化を意味する。

従って小売業は『コンシューマー』(消費者)発想から、
『カスタマー』(顧客)志向に変わらねばならない。

小売業と共闘する卸売業は、
多様な業態を対象に取り組みするわけであるから、
生活者のライフスタイルの多様性を知ることができる。

ここに中間流通としての存在意義がある。
メーカーのマスマーケティングのコンシューマーにも、
小売業の自社・自店のカスタマーにも、
卸売業としての「生活者のライフスタイル」の把握と対応は、
十二分に貢献することができる。

dscn1939-1.jpg

中野さんは「スマート(賢い)な生活者」を強調する。
さらに女性の登用を力説する。

dscn1927-1.jpg

その菱食の女性スタッフが中心となって、
長期計画「Evolution21」が出来上がった。

廣田正特別顧問や後藤雅治会長がつくりあげたミッションの上に、
「Innovation by FCM」のビジョンと、
6つのOur Promise。

21世紀の菱食の姿がくっきりと展望されている。

中野さんは、本当にうれしそうに語った。
70分ほどの時間は、一気呵成。
中野節に終始した。

こんなインタビューもいいなあ、と私は思った。

最後にカメラマンに求められて固い握手。

dscn1943-1.jpg

イオンとマルナカの包括的業務提携、
菱食を中心とする4社経営統合。

単なる数合わせ、スケールの追求ではうまくはいかない。
それはまさしく20世紀発想である。

21世紀には、
規模をもとにした新しい機能が求められる。

その根本に、
顧客志向と生活者発想がなければならないことは、
論をまたない。

<結城義晴>

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.