本格的な帰省ラッシュ。
お盆休みの「国民大移動」復活。
小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。
これが日本国民の大半が求めるもの。
つまりエブリボディ・ニーズ。
それに応えるのが、
小売業・サービス業。
それにしても自民党参議院議員会長選。
中曽根弘文氏と谷川秀善氏の間で争われ、
40票の同数の結果、
規約でくじ引き。
中曽根参議員会長誕生となったが、
小学生の学級委員選出のようで、
かわいいというか、
情けないというか。
けしからんというか、
どうでもいいというか。
7月の日本国の参議院選で勝利した自民党の、
その参議院のリーダー選出がくじ引き。
まったく、というか。
その間、円高は進み、
瞬間的に84円台に突入。
15年1カ月ぶり。
しかし15年前とは、状況はまるで違う。
1995年段階は、日経平均株価1万6800円、失業率3.1%、
現在は株価9300円、失業率5.3%。
「経済一流政治三流」が、
「経済三流政治五流」に、
堕してしまっている。
そんな中、国民のエブリボディ・ニーズは、
小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。
さて日経新聞が昨日の夕刊でスクープ。
「イオンとマルナカ、包括的業務提携」
イオンはご存知、
セブン&アイ・ホールディングスと並ぶ日本最大の小売業グループ。
全国にマックスバリュをはじめ、
カスミ、ベルク、いなげや、マルエツなど、
1200店のスーパーマーケットを配する。
一方、マルナカ・グル-プは、
中四国最大のスーパーマーケット企業。
総店舗数210店、総年商3300億円。
香川に本拠を置く四国のマルナカと、
岡山に本部を持つ中国地方の山陽マルナカ。
両者で瀬戸内リージョナルチェーンを構築。
近く、ホールディングカンパニーをつくる予定。
マルナカ社長は中山芳彦氏、
山陽マルナカ社長は、その長男でマルナカ専務の明憲氏。
包括的業務提携は、
今のところ商品がらみの内容。
イオンのプライベートブランド「トップバリュ」の提供、
メーカー商品の共同調達、
物流・情報システムの相互活用など。
マルナカ専務中山明憲さんは、発言している。
「現時点では資本提携は考えていない」
私には、この発言をした時の中山さんの表情が浮かぶ。
一方、イオンは坂野邦雄SM事業最高責任者が発言。
「中四国で確固たる地位を築きたい」
これも、表情が浮かぶ。
坂野さんは、構想している。
「範囲の経済におけるクリティカル・マス」を。
私の持論でもある。
この包括的業務提携の意義は大きい。
第一に、食品スーパーマーケットの業務提携であること。
イオンはスーパーマーケットに最大の力を入れている。
だから全国の食品スーパーマーケットに大きなインパクトを与える。
第二は、中四国エリアの「クリティカル・マス」突破を狙っていること。
「マルナカよ、お前もか!」ではない。
「これも一局」である。
バックに三菱商事が絡むこともあって、
この提携、若干の資本提携に進むに違いない。
その後は、カスミやベルク、いなげや、光洋と同方向を志向する。
ただし、私は思う。
少なくともアメリカのクローガー方式を採用すべきだ。
間違ってもアルバートソン型に至ってはいけない。
さて昨日は、東京・平和島。
モノレールの流通センター駅で降りて、
㈱菱食本社へ。
菱食・中野勘治社長インタビュー。
月刊『マーチャンダイジング』の連載企画で、
宮崎文隆編集長が同道。
宮崎さんは㈱商業界の『販売革新』前編集長。
中野さんは、1939年7月七夕生まれ。
ニチレイ専務、ユキワ社長、アールワイフードサービス社長を歴任し、
2006年菱食副社長を経て、2008年3月社長就任。
就任と同時に、「創造的破壊」を推し進め、
菱食改革の陣頭指揮を執る。
20世紀的な食品卸売業から、
21世紀の中間流通業へ。
そのために新しい機能創出を志向する。
規模の論理から、機能とマーケティングの論理へ。
「リテール・サポート」はもちろんのこと、
「コーディネートの役割」を果たさねばならない。
そこで「フードコーディネート本部」をつくった。
私は、パーティなどで中野さんにはよくお会いする。
しかしこうしてゆっくり、じっくりお話しする機会はなかった。
中野さんは実にエネルギッシュで、
イノベーションの意欲に燃えていた。
第一声は「この異常な暑さは、神風だ」
目下の最大の話題は、「4社経営統合」。
菱食を中心に、三菱商事傘下の食品卸売企業3社の経営統合。
㈱明治屋商事は酒類に伝統があり、強い。
㈱フードサービスネットワークは低温商品の機能を持つ。
そして㈱サンエスは菓子問屋として強力である。
もちろん菱食は加工食品だけで1兆円のスケールを持つ。
それぞれの機能において、
製造業にも小売業にも十分な役割が果たせる総合化を成し遂げる。
中野さんによると、それは、
「生活編集能力の高い生活者のライフスタイル多様化に対応」するために、
新しい中間流通として必須の機能である。
菱食1兆3993億円、
明治屋商事3051億円、
フードサービスネットワーク3129億円、
サンエス2035億円。
トータル2兆2000億円の日本最大の食品卸売業。
しかしそれは、
単に巨大な卸売業が誕生するというだけのことではない。
私は日本人の生活は、
どんどん個性化していると考えている。
一人ひとりが個性化を志向する。
それが結果として多様化現象を起こす。
これは「自己編集能力」の獲得である。
生活者のライフスタイルの多様化を意味する。
従って小売業は『コンシューマー』(消費者)発想から、
『カスタマー』(顧客)志向に変わらねばならない。
小売業と共闘する卸売業は、
多様な業態を対象に取り組みするわけであるから、
生活者のライフスタイルの多様性を知ることができる。
ここに中間流通としての存在意義がある。
メーカーのマスマーケティングのコンシューマーにも、
小売業の自社・自店のカスタマーにも、
卸売業としての「生活者のライフスタイル」の把握と対応は、
十二分に貢献することができる。
中野さんは「スマート(賢い)な生活者」を強調する。
さらに女性の登用を力説する。
その菱食の女性スタッフが中心となって、
長期計画「Evolution21」が出来上がった。
廣田正特別顧問や後藤雅治会長がつくりあげたミッションの上に、
「Innovation by FCM」のビジョンと、
6つのOur Promise。
21世紀の菱食の姿がくっきりと展望されている。
中野さんは、本当にうれしそうに語った。
70分ほどの時間は、一気呵成。
中野節に終始した。
こんなインタビューもいいなあ、と私は思った。
最後にカメラマンに求められて固い握手。
イオンとマルナカの包括的業務提携、
菱食を中心とする4社経営統合。
単なる数合わせ、スケールの追求ではうまくはいかない。
それはまさしく20世紀発想である。
21世紀には、
規模をもとにした新しい機能が求められる。
その根本に、
顧客志向と生活者発想がなければならないことは、
論をまたない。
<結城義晴>