朝日新聞の「高齢者の所在不明問題」調査。
全国すべての市区町村への取材で、
「100歳以上の不明者は少なくても279人」と判明。
兵庫県112人、大阪府88人、京都府21人、さらに東京都は13人。
大都市部に集中、なぜか関西にも集中。
東北、北陸など地方の26県は皆無。
全国約1万6000人のホームレスは、
「不明高齢者予備軍」という。
一面コラム『天声人語』も皮肉る。
「長寿大国の名が泣く怪事である」
「子や孫に囲まれて暮らすお年寄りばかりではない。
独居はつらい。さりとて弔いもないまま、
役所の書類棚で生かされ続ける高齢者は悲しすぎる。
お盆に帰るに帰れず、あの世でぼやいている人も多かろう」
今日13日は、「お盆の入り」。
先祖の霊を弔う日。
そんな日に、長寿大国の名が泣く怪事。
高齢化社会が問題視されてばかりの現今、
「長寿社会」を誇りにしようと訴えている私だが、
その「長寿」社会の数値的根拠が揺らぐ。
自分の親、祖父母、近親者との関係が薄れてくることは、
自分に対する関心の希薄さを示す。
すなわち厭世的な空気。
人間として、人間社会として、
最も避けねばならないこと。
しかし、これは国の問題とばかりは言えない。
会社も店も同じ。
社内に厭世的な気分が蔓延し、
若い、優秀な人が辞めていく。
毎日の基礎的な仕事がおろそかになり、
「数値的根拠」が揺らいでくる。
やがて衰退し、崩壊に進む。
お盆商戦真っただ中の今だが、
むしろ売上げづくりよりも、
実地棚卸や在庫管理が大事だ。
1品1品の商品を、自分の親・祖父母のごとく愛で、
大切に扱い、大切にお客さまに提供する。
そんなお盆商戦でありたい。
同じ朝日新聞のコラム「経済気象台」。
稲泉連のノンフィクション『仕事漂流』(プレジデント社)から紹介している。
「デパートの洋菓子売り場の舞台裏が書かれている。
型くずれしたケーキや、売れ残りを店員が買い取るのだ。
しかも『すいません。これだけしか買えなくて』と謝りながらである。
なんと悲しい風景だろう。
もともと安い賃金が実質的にまた下がるのである」
コラムニスト遠雷氏は、つぶやく。
「ネガティブで憂鬱(ゆううつ)な『競争』である」
私は、前向きで、活気のある競争を奨励するものだ。
お客様を喜ばせる競争。
そんな競争からイノベーションが生まれる。
この気分を失ったら、
小売流通業やサービス業から去ったほうがいい。
小売流通業やサービス業は本来、楽しいものだ。
先週末、私が座長を務める商業経営問題研究会(RMLC)で、
店舗クリニックを行った。
夏季合宿。
楽しかった。
参加者はいずれも小売業現役経営者またはOB。
全員が、実に楽しそうに店舗視察を楽しんだ。
初日6日は、 既報の通り、千葉駅に集合し、
ベイシア、ヤオコー、マックスバリュ、
sendo&MrMax、ビッグハウス、カスミ、
そしてベイシアとメガ・ドンキなど、駆け巡った。
翌日は、 まずトライアル。
躍進するディスカウンター。
マルエツが苦労していた店に居抜きで入居し、
徹底したローコスト運営と特異な集荷方法で、
収益を絞り出す。
次に、RMLCのメンバーでもある加藤勝正社長の㈱セイミヤ多古店。
800坪の意欲的実験店。
額賀瑞穂常務(右)、黒畑聡志店長と写真。
RMLCメンバーで記念写真。
小売業やスーパーマーケットが楽しい職場であることは、
二枚の写真が示してくれている。
昼食は、手打ちそば「おにざわ」。
さらにセイミヤ鉾田舟木店。
ここでも、額賀常務、橋本貴之店長と写真。
「よい店によい店長あり」。
さらに水戸まで足を延ばして、
ヨークベニマルの新店を視察。
水戸浜田店。
この7月にオープンしたばかりの実験店。
私は、この店でベニマルは、
「店舗全体の惣菜化」に取り組んだと見た。
それは逆に「量販の放棄」である。
しかしその代りにプライベートブランドの量販は志向する。
新しい時代に入った。
最後に、マルト笠原店。
茨城県いわき市にドミナントを築くマルトが、
水戸市まで南下してきた店。
ショッピングセンターの中で、
マルトらしいリアリティのある商売を展開している。
クリニックは楽しい。
店を巡ることは楽しい。
それは店が楽しいところだからである。
厭世的な気分は、
たとえお盆といえども、
排除したい。
お盆は、祖先の供養をするもの。
それは、現世の肯定につながる。
今月の商人舎標語は、
「現状を否定せよ」
だたし、現世は肯定しなければいけない。
現世を肯定し、現状を否定する。
人間として生きるのは、むずかしい。
<結城義晴>