毎日書くが、夏の甲子園大会準決勝。
ベスト4の対戦ともなると、
夏も終わりに向かっていることを意識させられる。
明日は、とうとう決勝。
今夏は、強豪校が比較的順当に残った。
中学生の頃からか、高校生の頃からか、
甲子園大会の決勝戦が終わってしまうと、
何かぽっかりと心の中に穴が開いた気がした。
それとともに気分はもう秋。
夏休みも、あとは宿題を済ませるだけの「消化期間」となった。
そんなことを覚えている。
さて今日が、商人舎秋のアメリカ視察「スペシャル編」の締め切り。
急遽、キャンセルが出たりしているが、ほぼ満員御礼。
来週以降、どうしても参加したいと申し込んで来られる方には、
航空券と宿泊部屋確保のための特別な対応をします。
昨日は、百貨店協会7月の売上高概況が発表された。
調査対象92社・263店舗。
売上総額は前年同月比マイナス1.4%。
店舗数調整後の比較で、29カ月連続の減少。
昨日、このブログで取り上げた日経MJ「百貨店調査」では、
2009年度は、全国233店の百貨店のうち、
なんと3店しか前年をクリアしていなかった。
それでも、1.4%のマイナスと、
7月の減少幅は1%台。
関西弁で「ぼちぼち」まで、
回復してきたと見ることができるか。
しかし百貨店にこそ、渥美俊一先生の格言が必要。
すなわち今月の商人舎標語。
「現状を否定せよ!」
29カ月連続で売上高がマイナスとなると、
店舗の大半は、「現状を否定」してかからねばならない。
セブン&アイ・ホールディングスの総帥・鈴木敏文さんは、
「過去の成功体験を捨てよ」
と言い続けているから、
百貨店売上高順位138位、年商139億円、一等立地の西武有楽町店を、
今年クリスマスに閉店することを決めた。
最新の『広辞苑』第六版によると、
「現状」の意味は「現在の状況」で、
そのあとに「――維持」とだけ使い方が記されている。
最も頻繁に使われる四字熟語がここに掲げられているだろうから、
「現状」には「維持」がつきもの。
つまり日本人は「現状」と考えると、
すぐさま「維持」を思い浮かべる。
それを「否定」に逆転させるには、
よほどの意志力が要求されるということか。
だから、渥美先生は敢えて言う。
「現状を否定せよ」
鈴木敏文さんは繰り返す。
「過去の成功体験を捨てよ」
私には面白い経験がある。
レイバースケジューリングの権威・村上忍さんは、
私が『食品商業』編集長のときに、
レギュラー号で1年間連載記事を書いて、
それをまとめて『レイバースケジューリング原理』という単行本を上梓した。
2年後だったか、ふたたび1年ほどの連載記事をまとめて、
第二弾の単行本を出した。
『チェーンオペレーション・バイブル』というタイトルがついた。
2冊の本のあとがきには、私への感謝の言葉が記されている。
1冊目と2冊目の間に、
村上さんはコンサルティング活動を積極的に行って、
実例を蓄えていた。
だから2冊目が内容としては優れているが、
1冊目には著者の思いのようなものが込められていて、
感動的である。
ただし2冊の間には、きわめて重要な変化があった。
1冊目には「現状を肯定せよ」と説かれていたが、
2冊目では「現状を否定せよ」に変わっていた。
私は、村上さんの現場実績が、
「現状肯定」を「現状否定」に変えさせたのだと判断した。
ご承知のように、 レイバースケジューリングの導入期には、
現場に入って、ストップウォッチを持って、
一つひとつ、作業時間を測定調査する。
その意味において、「現状肯定」をしなければ、
レイバースケジューリングは始まらない。
しかし作業とオペレーションの時間管理を始めると、
現状の作業の手順や仕組みを改革、改善・改良しなければなくなる。
従って、「現状否定」となる。
私には、同じ筆者の連続した単行本の鍵を握る考え方が、
180度転換していることが面白かった。
そしてこれはあらゆる実務上の問題に関連することだと考えた。
今月の商人舎標語。
「現状を否定せよ!」
ここには「現状肯定」という真反対の概念が、
隣り合わせになって横たわっている。
昨日は、午後から、
一般社団法人パチンコチェーンストア協会の第34回経営勉強会。
私は、第二部で講演。
この協会は、発足の時に、
故渥美俊一先生に支援していただいた。
記念講演もお願いして、快諾してもらった。
だから私は今回、
「渥美理論」のダイジェスト版を、
できるだけ分かりやすく語った。
そのことに努力した。
「渥美理論」は、
まず商業の復権と産業化の理念・ロマンをベースにしていること。
そのために「チェーンストア産業づくり」と「流通革命の実現」を目標としていること。
はじめは皆、小さな店であった。
そこで準備段階として「ビッグストアづくり」を果たし、
その後、「チェーンストアへの転換」を果たすというシナリオが描かれたこと。
基本にあるのは「数字による科学的経営」と「マネジメント」の二つの考え方。
この二つの基礎理論のうえに、「店舗と商品」の技術論がのっていること。
最後は、「商品がすべて」であること。
最近私には、「渥美理論」を語れ、書け、
という要望が数多く寄せられている。
できるだけ応えるようにしている。
渥美先生への恩返し。
そしてこれは、改めて「渥美理論」の勉強をし、
私なりに再整理することに役立つ。
そして「渥美理論」を発展展開させることにも、
極めて有益である。
1987年、㈱商業界40周年記念事業として、
渥美俊一著『商業経営の精神と技術』が発刊された。
この本は、10数時間の渥美先生とのデスマッチのごときインタビューの挙句、
渥美語り下ろし、結城書き下ろしで、
誕生したものだった。
その時に贈られた渥美先生からの言葉。
「この書物は、すべてあなたの努力でできました」
印刷のインクの匂いの残る最初の本を届けた時に、
渥美先生がサインしてくださった。
私の宝物。
今も手元に残っている。
だが、この本は、
故倉本長治商業界主幹の『商店経営の技術と精神』を主題として、
渥美流解釈を加えた、当時の「現代版」であった。
それだけ渥美俊一は、倉本長治を研究し、学んだ。
私自身にも、この姿勢は必要だと思う。
「渥美理論」を聞きかじって、
渥美批判をする者が多い。
それは批判の精神に反している。
今こそ、渥美俊一の再勉強をしてもらいたい。
手元に渥美本がある人は、是非、
この夏の間に、再読をお勧めしたい。
まだ渥美先生の魂がわれわれの近くにいるうちに。
効能新たかであることは、私が保証しよう。
<結城義晴>
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