今日、明日まで、暑い日が続く。
秋分の日の23日から、全国的に秋。
やっと秋がやってきた。
果物や野菜の生産は、
この猛暑・酷暑・炎夏で、
明暗くっきり。
リンゴやナシ、クリなどは、
生産量が落ちたり、
例年の品質と違ったり。
ブドウは甘くなって、
良好だとか。
自然を相手にする仕事は、
常に天候との戦い。
良い時もあれば、悪い時もある。
いちいちくさっていたら、埒が明かない。
その意味で、農民は強い。
「生産量は去年の1割くらい」
平気でこんなことを言う。
口蹄疫の問題が発生した時にも、
宮崎県の生産者はすべての飼い牛を失った。
それでも、淡々とした表情を崩さなかった。
東国原英夫知事のほうが、
泣きじゃくっていた。
日本人はもともと農耕民族だった。
だからこの辛抱強さを備えている。
中国と揉めている尖閣列島問題も、
アメリカとの普天間基地問題も、
農耕民族の辛抱強さを活かして、
丁寧に丁寧に解決していくことだ。
「あちらを立てればこちらが立たず、
こちらを立てればあちらが立たず」
それが21世紀の現象の特徴。
だから私の言うオクシモロンの問題解決姿勢が必要。
さて、昨日の日経MJ「総合小売り」欄。
「イオン、新型GMS始動」の記事。
18日の土曜日、イオン幕張店が改装オープンした。
もうそろそろ「GMS」という用語は、
やめにしてもらいたいところだが、それはさておき、
このリニューアルは重要な問題をはらんでいる。
日本の「総合スーパー」は国際的にみると、
ハイパーマーケットに分類される。
コーネル大学でも「ハイパーマーケット」という用語を使っているが、
ハイパーマーケットは「総合便利店」である。
ここで日本のハイパーマーケットという「業態」のライフサイクルは、
とうにピークを越え、平準期に入っている。
衰退期という認識すらある。
ただしイオンですら、
全国に420店のハイパーマーケットが現存している。
この既存の店舗群の「業態」をどう転換するのか。
私は、今年発刊された『小売業界大研究』(産学社刊)で、
初めて、「フォーマット」という概念を意図的に使った。
神戸大学名誉教授の田村正紀先生の『業態の盛衰』に、
「フォーマット」の定義が出てくる。
「業態が分化した様々な形」。
小売業が成熟してくると、業態がフォーマットに変化してくる。
ハイパーマーケットは業態。
ウォルマートのスーパーセンターは、
ハイパーマーケットという業態が分化した一つの形、
すなわちフォーマットである。
それはアメリカのサバーバンエリアの大衆の生活に、
これ以上ないというくらいに適合したフォーマットとなった。
ウォルマートは上海では、
「スーパーセンター」を作っていない。
まだ、ハイパーマーケット段階である。
それが上海というマーケットの現状だから。
翻って日本の総合スーパーというハイパーマーケット。
フォーマットへの特化が求められている。
日本の競争環境の中で、
「総合便利店」としての新しい役割や特徴を、
イオンはいかに考案するのか。
その回答が幕張店に表れる。
コンセプトは「narrow & deep」
「重点分野をより深く」と日本語解釈が付けられている。
2003年、私は商業界ゼミナールのメインテーマを決めた。
「小さく、狭く、濃く、深く」
千葉県の舞浜で行われたゼミナールで、
イオン名誉会長相談役の岡田卓也さんが、
私にコメントしてくれた。
岡田さんは商業界同友会エルダーと呼ばれる重鎮。
故倉本長治の愛弟子たちだけに与えられる呼称。
その岡田さんのコメント。
私は今でも覚えている。
「『小さく、狭く、濃く、深く』はいいテーマだね。
以前、アメリカのコンサルタントが来日して、
『ナロー&ディープ』を提唱したけれど、
あれと、おんなじだ」
私は今回のイオンのハイパーマーケットのフォーマット化実験が、
この「narrow & deep」に定められたことに、
長い潜伏期間があったのだと思う。
コンセプトの発酵期間。
「狭くて、深い品ぞろえ」
すなわち深い品揃えの専門店の集積によって、
「総合便利店」を「フォーマット」として蘇らせるという考え方。
イオン幕張店に導入された専門店。
生活雑貨の「アール・オー・ユー」
ペット用品「ペットシティ」
靴「アスビー」
書籍「未来屋書店」
カジュアル衣料品「トップバリュコレクション」
自転車「イオンサイクルショップ」
化粧品「ザ ボディショップ」
ファッション雑貨「クレアーズ」
ザ ボディショップや未来屋書店は、
もう確立した専門店といえる。
このレベルまで、他の専門店群が昇華できるか。
時間はかかるに違いない。
しかしそれがフォーマットをつくることになる。
田村先生とは違った概念だが、
故渥美俊一先生は早くから「フォーマット」という用語を使ってきた。
「TPOSごとにフォーマットがつくられる」。
「フォーマットは新しい業種」。
イオンが「総合便利店」 のフォーマット化に取り組み始めた。
久しぶりに注目すべき実験といえよう。
ただしこれは一朝一夕には、
完成しないものだと心得てとりかかるべきだ。
<結城義晴>