台風接近。
日本中が雨と風。
立教大学は今日から学園祭。
昨日から池袋キャンパスにはいくつもテントが張られ、
学園祭も最高潮に達するはずが、
台風来襲が水を差す。
私のサービス・マーケティングの講義は休講。
その代り、新座キャンパスの太刀川記念交流会館で、
結城ゼミの第4回合宿。
11月中旬までに、
修士論文・調査研究レポートの仮提出が義務づけられている。
その最終整理の合宿。
結城ゼミは年間に5度の合宿を行う。
それが特徴のひとつ。
これを私は「合宿主義」と呼ぶ。
各自の研究と長編の論文執筆を、
チームワークで乗り切るという考え方。
私がずっと携わっていた雑誌編集部のやり方を、
大学院のゼミ運営に取り入れた。
今回は、結城ゼミ第一期生のゼミ長だった名古屋文彦さんも、
新座合宿に顔を出してくれるとか。
有難いこと。
一方、台風来襲のその中で、
「名古屋議定書」と「愛知ターゲット」が、
議長案に対して歴史的合意。
生物多様性条約第10回締約国会議、
通称「国連地球生きもの会議」あるいは「COP10」。
愛知県は名古屋で開催されていた。
当然ながら、議長国は日本で、
議長は松本龍環境大臣。
「京都議定書」といい、
この「名古屋議定書」といい、
国際社会における日本の役割が果たされて、
誠に有意義なこと。
名古屋議定書は、
「企業が食品・医薬品の開発をする際、
動植物や微生物を利用した場合、
金銭の支払いや共同研究への参加を通じて、
資源がもたらす利益を原産国と分け合う国際ルール」。
生物遺伝資源を利用するときに伴って発生する「利益」。
その「利益配分の国際規定」が合意にこぎつけられた。
一方、「愛知ターゲット」は、
2020年までの生態系保全のための世界共通目標。
先進国と途上国の主張が対立したが、
多くの折衷案が出されて合意。
これも有意義なこと。
この対立と議論と折衷との挙句の合意こそ、
21世紀のあり方だと思う。
さて昨日の私は、首都圏の外環状線上付近を、
1日がかりで駆け巡った。
国道16号線沿いの神奈川・東京・埼玉・千葉。
このところ、中国・上海から始まって、
米国テキサス州オースティンやダラス、
ニューヨーク周辺、
そしてイギリス・ロンドンとフランス・パリまで、
2カ月足らずの間に、経巡った。
そして大都市構造の共通項を実感的に把握した。
昨日、それが日本の東京圏にも完全に当てはまることを知った。
このことが大収穫。
まず、朝から町田市周辺の激戦競合。
スーパー三和のディスカウント型「フードワン森野店」。
三和は2010年度売上高1437億6200万円、
経常利益35億3800万円。
隣接して、競合出店した「オーケーストア町田森野店」。
オーケーは売上高2158億4100万、経常利益113億4000万円。
日本でも最も有名な激戦が繰り広げられていた。
激しい競争は、「自らの強み」を競争者に知らしめる。
それが本当によく現れていた。
さらにこの隣接競合に影響を受けている店。
「サミットストア町田朝日町店」
サミットは売上高2383億3700万円、経常利益38億8300万円。
地下一階にサミットがあり、
地上1階にダイクマ、2階にヤマダ電機。
三和、オーケーというディスカウント勢に、
一歩も引けを取らず、
そのうえでサミットらしさを出している。
さらに「オオゼキ相模原中央店」
オオゼキは年商708億3600万円、
それでなんと経常利益52億3800万円。
昭和の時代、一世を風靡したディスカウンター「アイワールド」。
その1階部分に出店して、原始的ディスカウント商売を展開。
これらに対して、最新店の「ヤオコー相模原下九沢店」。
ヤオコーは年商2063億9600万円、経常利益84億6000万円。
今年2010年10月26日にオープンしたばかり。
ザ・マーケットプレイス相模原という近隣型ショッピングセンター。
こちらは最先端を行くライフスタイルアソートメント型。
アメリカでいえばウェグマンズやホールフーズのタイプ、
あるいはそれを追いかけるセーフウェイのニューライフスタイルのタイプ。
これらの店々が、国道16号線の線上付近、
町田から相模原までのエリアに連なる。
その間に、イトーヨーカ堂とジャスコとの隣接競合地区がある。
「古淵の闘い」として名をはせたところ。
『販売革新』編集長をしていた2000年代初めに、
私は「日本流通イイ戦争」と名づけた。
「イイ」とはイトーヨーカ堂の「イ」とイオンの「イ」。
ちょうどイランイラク紛争が起こっていた。
イトーヨーカ堂の売上げは1兆3878億3100万円、
かつての高収益企業の面影は薄れ、経常利益41億3600万円。
かたやジャスコを運営するイオンリテール、
その売上げは1兆8503億0100万円、
経常利益は173億9000万円。
これだけの店を視察し、価格調査などやってから、
ぐるり展開して、埼玉県越谷に。
「イオン越谷レイクタウン」
秋の日はつるべ落とし。
もう暗くなっていた。
この世紀の大型ショッピングタウンの中の「ジャスコ」
そして日本スーパーマーケット第4位の「マルエツ」。
売上高3369億3800万円、経常利益75億8400万円。
アッパーグレードのスーパーマーケット企業の中では、
唯一といってよいほどの成果を上げて、
超専門店化を実現させた「成城石井」。
越谷レイクタウンから15分ほどで、
イトーヨーカ堂三郷店が現れる。
その背後に西友の三郷物流センターが浮かび上がる。
私たちはさらに車を湾岸線まで走らせて千葉県浦安付近に。
ここには、サミットストアライフガーデン浦安富岡店。
今年2010年の9月15日にオープンしたばかり。
売場面積696坪の標準型。
この浦安付近にはヤオコーが数店、出店しており、
さら新浦安には駅前にダイエー新浦安店があり、
10分ほどでイトーヨーカ堂新浦安店があり、
その商圏内に食いつくように最強力店舗オーケー新浦安店がある。
ダイエーは年商9728億1500万円、
経常利益47億円のマイナス。
ここまで駆け巡って、夜の11時。
残念ながらイトーヨーカ堂、ヤオコー、オーケーは、
閉店していたが、1日で一挙16店。
アメリカやヨーロッパ以上の超ハードスケジュール。
私の天職だと感じるほどのストア・ウォッチング。
「神は現場にあり」
「現場」といっても、意識すべきは、
「自分たちの現場」だけではない。
フィールドワークとは、
「我思う 故に我あり」では、決してない。
現場を知ろうとするときに必要なもの。
「鳥の目」「虫の目」「魚の目」
新旧競合の16店を一挙に駆け巡るのも、
「鳥の目」「魚の目」で現場を見つめるという意味において、
大いに意義がある。
私は、渥美俊一先生を思い出していた。
「亡き父よ 店見るたびに 見るたびに」
皆さんも天職を楽しんで、
良き週末を。
<結城義晴>