今回は、時差が抜けない。
地球を逆回転で、太平洋を渡り、
さらに大西洋を越えてから、
シベリア回りで帰国した。
いわゆる世界一周。
初めてのことではないが、
だからだろうか、真夜中に目が冴えて、
無理に寝ようとしてうとうとすると、すぐに朝がきて、
その分、日中、眠気が襲ってくる。
ブログ・アップの時間もずれてくる。
今しばらく、ご容赦のほど。
さて昨日は、富山へ講演旅行。
東京から上越新幹線に乗り、
越後湯沢で特急はくたかに乗り換える。
越後湯沢の駅は霧に煙っていた。
直江津に出ると、そこから延々と日本海沿いを走る。
富山に着くと、じゆう館へ。
大阪屋ショップの取引先の会「清文会」の記念講演。
大阪屋ショップは富山県ナンバー1のスーパーマーケット企業。
私のテーマは「製配販協業の軌道」
ローカル・スーパーマーケットのサバイバルと成長。
そのために、地域の製造業・卸売業といかに協業するか。
私の持論を展開させてもらった。
半月余りの旅行から帰って、
フィジカルコンディションはよろしくはないが、
テンションは上がりっぱなし。
ご清聴を感謝したい。
さて今日は、パリ郊外の世界的巨大店舗のレポート。
カルフール・モンテッソン店。
カルフールは、フランス第1の小売業で、
ウォルマートに次いで、世界では第2位。
年商860億ユーロ、1ユーロ110円換算で9兆5000億円。
2009年度の伸び率はマイナス1.2%。
店舗はフランス国内に5540店ではあるが、
世界33の国と地域に1万5561店を有する。
店舗数だけで見るとウォルマートを凌ぐ。
そのカルフールの国内最大店舗が、このモンテッソン店。
およそ1万2000坪のワンフロア型ハイーパーマーケット。
多層階の百貨店を除けば、世界最大の店舗といえそうだ。
カルフールは1960年にスーパーマルシェ第1号店を出店し、
3年後の1963年には、非食品強化型のハイパーマルシェを開発している。
これが衣食住フルライン型のセルフサービス店舗として完成され、
やがてアメリカではウォルマートのスーパーセンターに進化した。
日本では、ダイエーを始めとする総合スーパーとして発達したが、
日本はいち早く業態の成熟期から衰退期にはいってしまった。
アメリカのウォルマートは現在、 飽和を迎えつつも、
最強フォーマットとして君臨し、
フランスでもハイパーマーケットは必須のフォーマットである。
入口を入ると、モール・スタイルになっている。
各種専門店が誘致されている。
しかし何といっても凄いのが、直営のハイパーマーケット。
「PROMO LIBRE」という一大作戦を敢行中。
フランス国民にとって必須のフォーマットであるものの、
ここ数年、ハイパーマーケットも売上げが上がらなくなっていた。
もともとカルフールは、
「PRODUITS LIBRE」という方式を34年間続けてきた。
「よりどり商品」とでも訳したらよいか。
それを 「PROMO LIBRE」に大転換。
「よりどり値引き」とでも言うべきプロモーション。
「値引き商品を決めるのはあなただ!」と銘打つ。
カルフールでは、お客が自分で値引き品を選ぶことができる。
その原理とは?
競合他社のように、割引き商品をお客に強要するのではなく、
顧客カードを持っているお客に、
割引き商品を自由に選んでもらおうというもの。
ロイヤル・プログラムの一種と考えてよい。
この戦略は今年2月16日から、
1年前に着任した副社長のラルス・オロフソンによって始められた。
対象の650品目から、
お客が3品目選ぶと、
顧客には、その割引差額がキャッシュバックされる。
週ごとにその対象となる棚が変わる。
まず朝食の棚から始まったが、
食品以外の売場でも商品を選ぶことができる。
例えば家電小物は20%引きで提供されている。
カルフールには割高というイメージが出来上がりつつあった。
マクネア教授の「小売りの輪」仮説のようになりかけていた。
しかし、この「よりどり割引き」作戦によって、
価格面において攻撃的に出ることを可能とさせた。
オロフソンは語っている。
「診断は終わった。
我々は今、提案をしているところだ」
カルフールは231店のハイパーマルシェを持つが、
それが売上げ総額の半分を記録している。
そのハイパーマルシェが、
「よりどり割引」によって、回復しつつある。
さて、店内を巡ってみよう。
まず、モール通路からレジを臨む。
店舗左翼の半分くらいが食品。
まず、ベーカリーの売場。
3ユーロのパンが山積み。
これがすごいボリューム。
右手には乳製品、チーズのコーナー。
ベーカリーの奥に精肉売場が連なる。
左翼壁面沿いに対面売場。
その右手がセルフサービス形式のコーナー。
畜種別、メニュー別に、コーナーがつながる。
カルフールは、
重点販売方式といわれる単品強化型のプロモーションを得意とする。
精肉売場の前面には、
平オープンケースの重点販売コーナーが設置されている。
さらに乳製品の裏側には、対面のデリ売場。
グルメの国フランスだけに、デリカテッセンは豊富な品揃え。
1万2000坪のハイパーマーケットだけに、
重点販売方式をとりながら、そのうえで品揃えが深く、広い。
小型パックのソーセージがエンドに積まれている。
ロテサリー・チキンの売場。
簡便商品のコーナー。
キャセロール料理などが並ぶ。
こちらはホットデリ・コーナー。
ハムの塊が並んだ平ケースのエンド。
ベーカリーから始まって、精肉や乳製品、デリ、鮮魚とくる。
そのあとで、店舗中央あたりに、
一大ファーマーズマーケットのように青果部門が位置付けられている。
「よりどり割引」展開の野菜売場。
キュウリもクレートに盛り付けられている。
売場で盛んに使われているクレートは、EU共通。
葉物野菜も重点販売方式。
すなわち単品大量販売。
単品大量で、作業効率の良い売場づくり。
陳列棚の前面にさらにクレート陳列。
手前はピーマン、パプリカ。
向こうは柿。
青果部門の最後に、サラダ・パックは多段ケースに並べられている。
青果部門が終わったら、グロサリー。
ながーい奥壁面沿いのコーナー展開と、内側のゴンドラ・アイルとを、
交互に覗きながら1万2000坪のハイパーマーケットを歩いてみよう。
よく売れている菓子売場。
エンドにはスーパーマリオのキャラクター菓子。
エンドはヴィッテルの水のエンド。
カルフールの重点販売が良く表れた売場。
壁面は同じく、ペットボトルの水の売場で、呼応させている。
リカーコーナー。
前面に高級ワインを詰め込んだアイランドケースが立っている。
本場フランスワインのコーナー。
エンドには箱入りビール。
エビアンもフォークリフトで運ばれ、そのままパレット陳列。
フランス人は飲料をよく飲む。
ソフトドリンク売場も巨大だ。
酒・ソフトドリンクの一角が終わると、いよいよ雑貨から非食品に入っていく。
このエリアが、スーパーマーケットと異なり、
生活全般にわたるワンストップショッピングを可能としている。
雑貨のゴンドラの先には、いよいよ衣料品売場。
雑貨と衣料の間に、冷蔵の飲料ケースがあり、
さらにその隣に搬入口がある。
店舗奥壁面沿いを延々と、店舗右翼の方まで、
実用衣料の売場が伸びている。
壁面に上下2段のハンガー陳列。
その対面のエンドには室内履きやスリッパのハンガー陳列。
アウター衣料の一部も品揃えされている。
その前にハンガーにかかった紙袋。
内側の売場には、これもリングハンガーで 女性用のニット。
アイルにはTシャツがボリューム陳列。
そして奥主通路の壁面沿いに試着室がある。
園芸用品売場も、奥主通路にめり込んだ形でコーナーがとられている。
玩具売場はハイパーマーケットの核カテゴリーのひとつ。
「oui」は「ウィ」。
「yes」。
中通路には「oui」だらけ。
自転車売場も定番で、壁面から内側に向かって設けられている。
奥壁面には、搬入口が直接、設置されている。
外には在庫スペースはない。
だからほとんど全商品を店頭に陳列していることになる。
家具は、軽家具ともいうべき品揃え。
ぬいぐるみもゴンドラ陳列。
店舗右翼に向かって最後の一角はウッディな床。
ここに家電コーナーが設けられている。
ゴンドラアイル内を見ると、書籍雑誌コーナー。
子供たちが座り込んで、読んでいる。
「立ち読みではなく、座り読み」。
奥壁面にテレビ売場がみえる。
映像機器は売場のマグネットになる。
1万2000坪のハイパーマーケットの奥壁面沿い。
向こうの端まで見渡せない。
そして店舗右翼面。
家電売場によって構成されている。
白物家電は、店舗のレジに向かった側に広いコーナーどり。
ベッド売場も店舗を縦断している。
そして「ソルド」のコーナー。
セール品の売場。
これはいわゆる「バーゲンセール品」
店舗を右翼から左翼に横断する中通路はやはり広い。
店舗中央の入口に向かって、非定番のシーゾナル島陳列が続く。
客層は極めて広い。
フランスにはイスラム教徒も多く住んでいる。
ハイパーマーケットは最も広い客層を飲み込んだフォーマットである。
世界最大級のハイパーマーケット・モンテッソン店。
売上げが上がりにくいといっても、
この店は例外だ。
パリ郊外の新都市ラ・デファンスの、
さらに外側の新興住宅地。
そこで独占に近い状況で商いし続ける。
フランスには1996年に施行されたラファラン法という出店規制法がある。
このモンテッソン店は、厳しい規制の中で誕生した最大店舗。
しかも、典型的なサバブ立地。
繁盛しないはずはない。
地上駐車場は当然のこと、
地下駐車場も満杯。
今年度から始まった「よりどり割引」作戦への大転換は、
この世界最大ハイパーマーケットにもうひとつのパワーを与えた。
「繁盛」とは何かを、
まざまざと見せつけてくれる店。
この店舗を訪れるだけで、
元気の素を分けてもらったように感じられる。(つづきます)
<結城義晴>