朝日新聞のコラム『経済気象台』。
私が好きなコラムニスト遠雷氏が、
「格差が変革のバネである」と題したコラムを書いている。
誤解されそうなことを、
あえて取り上げ、本質を突く。
遠雷氏にはそれがある。
まず「七・五・三現象」を語る。
「中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が、
3年以内に離職すること」
その中で、大企業の離職率は低い。
「従業員が1万人を超える大企業では(中略)、
入社後3年たっても早期退職者数が1%から2%にすぎない」
ここで大学生の数は、
1985年185万人から、2010年288万人に増えた。
進学率は、85年26.5%、2010年54.4%。
ところが大企業の採用数が増えていない。
そこで「入り口」が狭くなり、
「大卒」がかつての「高卒」「中卒」の職場に回される。
小売商業は、もともと「高卒」「中卒」の多い業種だった。
しかし、彼らは大いに戦力となり、
会社に貢献した。
さらに「大卒」も、
どんどん現場に配置された。
遠雷氏は大はやりの「格差論」に反論する。
「格差を論じる人たちは、『かわいそうな若者』を例示し、
問題の所在を、社会や会社の側に求めるが、
『恵まれない若者』がいることがそんなに悪いことだろうか」
遠雷氏は断じる。
「いつの時代でも格差はある」
「残念なことだが、
それが変革へのバネの一つになってきた」。
小売商業は、この格差の中で、
人材を採用し、戦力にしてきた。
「格差がバネ力を生む」
私も賛成だ。
「失われたのは若者のハングリー精神である。
「若者自身に怒りが乏しいことこそが危機である」
結城義晴のひとこと。
「怒りのエネルギーはコンプレックスのエネルギーより、
数段健全なのだ」
さて昨日16日は、東京・台場・タイム24会議室。
「儲かる惣菜マーチャンダイジング」
商人舎主催セミナー。
まずはご参加くださった皆さんに感謝申し上げたい。
日本フードサービス専門学院長の林廣美先生をゲストに迎え、
結城義晴との二人のビッグセミナー。
林先生は惣菜分野の第一人者として
30年以上にわたり小売業、メーカー、卸売業を指導されてきた。
その経験と林先生の旺盛な好奇心が、
常に新しい情報とノウハウを形づくってきた。
林先生の話はいつも、
具体的で役に立ち、しかも面白い。
午後1時からスタートした第1講座は、
結城義晴の「食品マーチャンダイジング2010年の総括と2011年の展望」
さまざまな数値を提示しながら、
2011年の課題と、持論を90分間、展開させていただいた。
とりわけ、「業態」から「フォーマット」へと、
マーケットや産業構造が変貌を遂げたことを強調したが、
いかがだったろうか。
私はいま、何か新しい理論が生まれつつあることを実感している。
もうちょっとというところまで到達した。
本当に、もうちょっと。
本当に、もう少しの努力。
元気は沸いてくる。
「志定まれば、気盛んなり」
第2講座は今回のセミナーの肝。
林廣美先生の独壇場。
「儲からない惣菜売場を儲かるようにするテクニックと戦略」
惣菜の売り方が変化しているのに、だれも気付いていない。
鉄砲の本体ではなく、弾の強化が大事。
惣菜は仕入れ業ではなく製造業。
そのために惣菜のデザイナーが必要。
120分間、あっという間に過ぎた。
「やっぱり時間が足りなかった。テキストの量が多かったか」
林先生の一言。
林先生には、参加者に伝えたいことが、
あふれんばかりにある。
コーヒー休憩のときには、すっかり日が陰ってきた。
東京はこの秋一番の寒さ。空気が澄んでいて夕焼けがきれい。
そしてセミナー最後のまとめ。
第3講座は二人による徹底討論。
「スーパーマーケットは店全体を惣菜化せよ」
スーパーマーケットは「椅子のないレストラン」。
あらゆる売場を一歩調理に近づける努力が必要。
林先生の主張は明快だ。
明快だが、そのテーゼは重い。
「つくってから、売る」のではない。
「売れたら、つくる」
このジャスト・イン・タイムの仕組みを構築する。
そうすれば、不況の時代にも対応できる。
顧客にも満足を提供できる。
最後は、林先生のお土産。
「クリスマス対策」
「大晦日対策」
「年始対策」
そして「切り落とし量販のすすめ」
実に具体的で実践的なコンサルティング指導が、
マス・カスタマイズで、参加受講者に授けられた。
午後1時から6時までの5時間にわたり、
90名ほどの方にご清聴いただいた。
関西スーパーマーケット柄谷康夫番長とその仲間たち。
横浜市西区北幸の隣組・相鉄ローゼンの安達高志隊長とその仲間たち。
心から感謝したい。
「スーパーマーケットは、椅子のないレストラン」
この林先生の言葉が心に残った。
林先生に心から、感謝。
<結城義晴>