世界の農産物価格が高騰している。
その影響は食品のみならず、
衣料品や生活用品にまで及ぶ。
クリスマス・年末年始商戦に向けて、
「価格高騰」は大きな与件となってきた。
いかに取り組むか。
さて昨日、補正予算が成立した国会。
仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案が可決。
菅直人内閣、どんどん追い詰められている。
いま日本に、絶対に必要なのは、「長期政権」。
そのもとで、一貫した施策を実行し続けねばならないと思う。
会社でも同じ。
危機の時には、実行力のある長期的な経営陣が、
一貫したシナリオのもとに改革を続けねばならない。
次々に経営者が変わるのでは、
危機からの脱出はできない。
そんな中、昨日、プロボクシングに、
二人の世界チャンピオンが誕生した。
朝日新聞文化欄では、
「イクメン」や「草食系男子」のことを記事にしている。
その一方で、最もきついスポーツでの世界王者誕生。
フェザー級の長谷川穂積とスーパーフェザー級の栗生隆寛。
ともに2階級制覇のチャンピオン。
草食系男子とボクシング世界王者。
日本の若者には二通りの生き方があるのだろう。
それはそれで頼もしいことだと思う。
11月17日のこのブログで取り上げた「格差」。
朝日新聞のコラム『経済気象台』のコラムニスト遠雷氏は、
「格差がバネ力を生む」という。
「失われたのは若者のハングリー精神である。
若者自身に怒りが乏しいことこそが危機である」
遠雷氏は、こう、訴える。
しかし、この日本に現在、
プロボクシング世界チャンピオン6人。
「怒りやハングリー精神を持ち合わせた変革の担い手」が、
存在しないわけではない。
頼もしい限りだし、
「格差」を一概に無くすばかりがいいわけではない。
「格差そのものを差別視すること」こそ、
避けねばならない。
その点、商売はいい。
顧客を差別しない。
1673年の日本、「越後屋」を創業した三井高利が、
1683年に「店前現金無掛値」を訴えた。
「今度私工夫を以て呉服物何よらず格別やす値に売出し申候間、
私店へおいで御買上げ下さる可く候。
何方様えも持たせやり候儀は仕らず候」
「何方様えも」とは顧客を差別しない宣言だ。
1930年のアメリカでは、マイケル・カレンが、
スーパーマーケットを創業した。
カレンがロングアイランドの日刊地方紙に出した広告。
『最新型高級車にお乗りの方も、うば車をお引きの方も、ご来店歓迎。
流行遅れのお召物でも、そのままお気軽に、さあ、さあ、どうぞ!
金曜午後九時、土曜午後十時まで営業』
これも顧客を差別しないことの宣言だった。
商業の革新者二人のモットー。
「格差」の中で「差別」せず 。
さて昨日は午前中に、㈱いなげやの面々が揃って、
商人舎オフィスを訪ねてくれた。
私の隣から、吉野繁美さん、
小森俊幸さん、
押木昌巳さん、
そして高橋一郎さん。
小森さんが私の著書『メッセージ』をご持参下さったので、
サインした。
「心は燃やせ、頭は冷やせ」
最近はこの言葉、大好きだ。
午後は、「スーパーマーケット販売統計調査」の記者発表。
東京・神田の社団法人新日本スーパーマーケット協会。
一昨日の日本フードサービス協会の発表と見合わせると、
「10月の内食と外食の動向」が鮮明になる。
「10月の販売統計調査と11月の景況感調査」を、
まず協会副会長の増井徳太郎さんが流暢に報告。
10月の総売上高は、7492億1083万円で、
前年同月比102.1%。
食品合計は6424億4609万円(前年同月比102.6%)、
非食品合計は1067億6474万円(前年同月比98.9%)。
注目すべきは生鮮3部門。
3部門の合計は2419億2903万円で、
前年同月比104.2%だった。
そのなかで青果が前年比109.9%の993億3856万円。
これは、野菜の相場が高騰したための実績。
水産は相変わらず苦しく、前年比99%の659億4864万円。
そして、秋冬物の商材として畜産が売れ、
766億4183万円、前年比102%。
「昨年の年末は単価の低いものを発注しすぎて、
チャンス・ロスを出した。
この年末をどう乗り切るか。
昨年から学んでいれば、
各社知恵を絞るだろう」
続いて、株式会社マルトの安島浩代表取締役社長。
マルトはいわき市において圧倒的シェアをもつ。
安島さんの販売動向についての話は、
謙虚ながらも、自信にあふれていた。
マルトは地元シェア50%を誇るスーパーマーケット企業。
いわき市内では3kmおきに店舗をかまえ、どの道を通っていても、
必ずマルトの店舗に行きつくような展開がなされている。
「マルトが大切にしているのは、健康な食品を売ること。
そのため、マルトのお弁当は腐ります。
温かいお弁当はおいていません」
「先ほど販売統計の説明では、
水産が苦戦しているとの話だったが、
マルトでは魚は売れている。
昨対で129%伸びている。
これはちゃんと品揃え、商品づくり、アピールするなど
手間をかけた結果」
「経常利益は昨対で3割伸びた。
これは昨年が悪すぎたのと、
あいみつを取るなど、基本をしっかりしたから」
「しかし、マルトは地域密着企業。
多少値が高くても、地元を大事にします」
「たとえば、ヨーグルトや乳製品は120%伸びている。
地元の味を大事にしながら売る。
しっかり根付いているから売れているのです」
一方の、日本フードサービス協会。
「10月の外食産業市場動向調査」。
全体で前年同月比プラス2.7%。
4カ月連続の前年同月クリア。
内食の2.1%プラスを0.6ポイント上回った。
外食は内食の水先案内人。
外食の落ち込んだ部分を内食がかすめ取るといった構図からは、
一刻も早く抜け出して、内食・外食協力して、
「食の喜び」「食の楽しさ」を日本中の消費市場に知らしめたいもの。
10月の外食の客数はプラス4.4%、客単価はマイナス1.7%。
とはいっても客単価も、
9月の前年対比マイナス3.4というレベルから抜け出しつつある。
外食産業で唯一、伸び続けてきたファストフード。
10月の売上高プラス2.7%。
外食全体のトレンドと同じ水準。
客数はプラスの5.4%、客単価はマイナス2.6%。
ずっと悪かったファミリーレストランは、
リニューアル効果が実って売上高3.5%増。
客数がプラス3.5%、客単価はプラマイゼロ。
ディナーレストランも売上高プラスの4.2%。
客数3.1%、客単価1.1%、ともにプラス。
10月の統計で見ると、
コンビニ既存店の売上高は前年同月比マイナス5.9%。
総合スーパーを中心としたチェーンストアは、
前年同月比マイナス0.3%。
たしかに、生活の何かが変わりつつある。
「格差が差別」につながらないことだけを祈りたい。
良い週末を。
<結城義晴>