結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年11月23日(火曜日)

「勤労感謝の日」の朝刊一面コラム・コンパリゾンとドラッカー「目標管理&時間管理」

「勤労感謝の日」です。

日本国民のほとんどは、勤労者とその家族。
その勤労に感謝する日。

今月の商人舎標語。
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」

この心持ちで、今日を送りたい。

さて、新聞朝刊各紙の一面コラム。
「勤労感謝の日」をどのくらい取り上げているか調べた。

昨日、柳田稔法務大臣更迭事件が起こったばかり。
各紙がどう取り上げたか。

まず読売新聞『編集手帳』
「火災現場でダジャレを言う消防士はいない。
手術中に漫談をする外科医もいない」

勤労と柳田問題を少しからめた。
これがまあ、一番無難な線。

産経新聞『産経抄』
「法相を辞任した柳田稔氏は25歳のとき、
すし職人になるのをあきらめた」

「柳田氏は、板前修業は人生修養でもあった、と語っている。
だとすれば、もう一度挑戦することをお勧めする」

これも柳田と勤労を関係づけた。

毎日新聞の『余録』
「ヘマなことを口走ることを、英語で
『足を自分の口に踏み入れる』という言い回しをする。
日本語でいえば『ドジを踏む』のような表現」

「言わずもがなのことをしゃべる癖を『フット・イン・マウス』病という」

知識を引っ張り出して、揶揄する書き方。

東京新聞の『筆洗』は「本音」をテーマにした。
「<本音を読み取る><心理を見抜く>。
そんなキャッチコピーで売り出されている本が結構ある。
それだけ、世の中には本音を隠して生きている人が多いということなのか」

「柳田稔前法相は、本音をあけすけにする珍しい政治家だった」

ただしこのコラムはひねりも関連付けもない。

さて朝日新聞の『天声人語』
知事選挙真っ最中の沖縄問題を選んだ。
「地元では『沖縄差別』という言葉も噴き出した」
「いまに残るのは、ヤマトによる『無関心』という差別かもしれない」
「小指の痛みは全身の痛み」
沖縄問題に対して「健忘症」になってはいけないと訴える。

しかしなぜ今日の天声人語なのか。
政治好き新聞の「正義感」は法相更迭や勤労感謝を凌ぐのか。

最後に日本経済新聞『春秋』
ここだけ、正面から「勤労感謝」を取り上げた。

ドイツの童話作家ミヒャエル・エンデの『モモ』。
コラムニスト氏はずっと、
勤労感謝の日にはこのテーマを書こうと決めていたに違いない。
だから柳田更迭にも見向きもせず、
ミヒャエル・エンデから入った。

「働くことの意味、人生のあり方を考えさせる童話」
「時間は人間に与えられた財産。
大切な時間を守り、どう使っていくかは結局、
自分で決めるしかない」

「人生の目標は何か、
自分にとって何が大事なのかを
振り返ってみるのも悪くはない」

これ、「目標管理」と「時間管理」。
そう、ピーター・ドラッカー先生の考え方。
従って、私の思考法と同一。

読売・産経の柳田更迭に勤労感謝をからめる書き方、
毎日、東京新聞の柳田問題揶揄型。
朝日の我関せず、政治的正義感振り回し型。
そして日経新聞の勤労感謝と「人生の目標管理」を結び付ける主張。

日経のポジショニングが際立つし、
これは私たち商人舎のスタンスでもある。
背景にドラッカー哲学があるのもいい。

日本国民のほとんどは、勤労者とその家族。
セグメンテーション、ターゲティング、
そしてポジショニングに徹すれば、
「客層」は広がる。

だから日経新聞は、経済新聞でありながら、
どの新聞よりも国民全体に客層を広げることに成功した。
日経の「勤労感謝の日」の一面コラム『春秋』がそれを証明している。

「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」
この心持ちで今日を過ごしたい。

最後に、ユニクロの「創業感謝祭」。
11月20日(土)の日本国内直営全店およびネット販売の売上高。
ユニクロ史上初めて100億円を超え、
1日売上高過去最高。
約101億5368万円。

ユニクロの1日平均売上高が16億円だから、6倍強。

アメリカの「感謝祭」商戦は、
クリスマスの前哨戦と位置づけられる。

ユニクロはまったく、
日本のクリスマス・年末商戦の前哨戦を、
制してしまったことになる。

ここにも「創業感謝祭」がある。

「感謝を表し行動する者に福来る」

<結城義晴>

2010年11月22日(月曜日)

「勤労感謝の日」翌日から売場をガラリとクリスマス・年末商戦仕様に「劇激変」させるのがドラマティック!

Everybody! Good Monday!
[vol47]

最近、私が凝っていること。
“Good Afternoon!”
“Good Evening!”

別れ際にこの言葉を使うこと。

日本語にすると、
“Good Afternoon!”は「こんにちは」
“Good Evening!”は「こんばんは」

午後や夕方、人に出会った時のご挨拶のように考えられているが、
しかし“Good Afternoon!”には、
文字通り「良い午後をお過ごしください」
“Good Evening!”には、
「夕方の時間をよりよく過ごしてください」
そんなニュアンスが込められている。

ちょっと古いイギリスのドラマなど見ていると、
そんなシーンが出てくる。

例えば、アガサ・クリスティ、
コナン・ドイル。

この会話、なぜかとても、いい。

だから今日は一日中、使える。
“Good Monday!”

さて、2010年第47週の始まり。
今週を含めて、あと6週。
雷さんではないが、
「月日のたつのは早いものだ」

今年1年、「今週は第〇週です」といい続けて、
「ウィークリ―・マネジメント」を訴え続けてきた。

ずいぶん理解され、浸透してきた。
そのことが素直にうれしい。

もちろん、1月第1週を「第1週」と決めつける必要はない。
2月末決算の会社は、
3月第1週を「第1週」とすればいいし、
3月末決算の会社は、
4月から「第1週」を始めればいい。

数字というのは不思議なもので、
それだけで一瞬のうちに、ある概念を想起させる。
使い方によっては、
マネジメントにとって極めて都合が良い代物。

「3割」といえば野球選手にとって、
一流の打者であることが一瞬のうちにわかる。

「90」といえば、ゴルファーにとって、
ボギーペースでラウンドしたことがすぐわかる。

「第47週」といえば、
どんな週で、何をしなければならないか、
顧客の生活がどうなっていて、
だから我々はどう行動すれば、
お客様を喜ばすことができるか。

そんなことが一瞬のうちに、
全従業員にわかる。

それが私は理想の組織だと思う。

理想の組織運営のために、
「数字」を上手に使うこと。

これはとても面白いし、
意欲がかきたてられることだ。

さてその第47週の今週。
明日の火曜日11月23日が、
「勤労感謝の日」の祭日。
例によって、1948年に公布され、施行された『祝日法』によって、
趣旨が決められている。
「勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう」
「たっとび」とは「尊び」と書くが、
たっとぶものが「勤労」、
祝うのが「生産」、
そうして「国民互いに感謝しあう」。

ここで現在では「生産」は、
「財」を「生産製造」し、「流通」させ、
「小売り」するところまで含まれてくる。

マーケティング・コンセプトの発展段階は5つある。
故田内幸一先生著『マーケティング』に出てくる。
第1が「生産志向コンセプト」、
第2が「製品志向コンセプト」、
第3が「販売志向コンセプト」、
第4が「マーケティング志向コンセプト」、
そして第5が「社会マーケティング志向コンセプト」。

「勤労感謝の日」 の趣旨にある「生産」は現在、
その(生産志向)の後の「製品志向」「販売志向」から、
さらに「マーケティング志向」「社会マーケティング志向」へと、
展開発展を見せている。

小売りサービス業は、
この「勤労感謝の日」にも勤労する。

だからこそ、他産業以上に、
「勤労感謝の日」の主役の意味が重いんだと思う。

勤労感謝の日のおおもとは、
飛鳥時代・皇極天皇の世に始まった新嘗祭に遡る。
「にいなめさい」あるいは「しんじょうさい」と読む。

1872年の明治4年から戦前の大日本帝国時代まで、
新嘗祭として11月23日に祭日が設定されていたが、
戦後、米国占領軍GHQによって「勤労感謝の日」に改められた。

だから「勤労感謝の日」は、
アメリカ・カナダの“Thanksgiving Day”の日本版でもある。
ウィキペディアは表現する。
「戦前日本と米国の祝日の要素を
密かに併せもつ一種異様なハイブリッド」。

その米国感謝祭は、11月第4木曜日。
「ナショナルホリデーNational Holiday」のひとつ。
日本と比べ物にならないくらい盛大に行われる。
これもウィキペディアの表現では、
「たくさんの親族や友人が集まる大規模な食事会」。

多くの州では、木曜日の感謝祭翌日の金曜日も祝日となる。
だから4連休のDay After Thanksgivingとなって、
日本でいえば、「冬休み」「春休み」のかわりの「秋休み」のようなもの。

小売サービス業における感謝祭は、
完全に「クリスマス・セールの前哨戦」。

感謝祭当日の木曜日の翌日・金曜日には、
特別セールが行われる。
この日を「ブラック・フライデー」と呼ぶ。
「黒字」になるから。

そして近年、週明けの月曜日が、
「サイバー・マンデー」と呼ばれるようになった。
オフィスからのネットでクリスマス・プレゼントが売れるから。

日本に適用して考えると、
「勤労感謝の日」の翌日から、
売場をガラリとクリスマス・年末商戦仕様に、
「劇的な激変」をするのがドラマティック。

いかがだろう。

今週は水曜日から、
あるいはちょっと譲っても、
土曜日から「クリスマス・年末年始商戦」が始まっている。

柳田稔法務大臣が辞任したことなど、
気にしてはいられない。

日経新聞調査の「今冬のボーナス」中間集計が、
全産業1人当たり前年比マイナス1.17%となったことも、
さして問題視しなくてよろしい。

一途に、顧客を喜ばせることに邁進する。
そんな冬の商戦が始まる。

今月11月の商人舎標語。
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」
毎日毎日、この心構え。

それが充実した日々を、
私たちにプレゼントしてくれる。

Everybody! Good Monday!

<結城義晴>

[追伸]
五十嵐ゆう子さんのWEB小説「Thank you~命をありがとう~」が、
先週木曜日をもって、40回の連載を終了しました。

五十嵐さんに「命をありがとう」と、
お礼の言葉を贈りたいと思います。

心から感謝します。

〈どこかの出版社の編集者の方、
単行本にしませんか?
結城義晴と浅野秀二が責任を持って販売しますよ〉

2010年11月21日(日曜日)

ジジと小春日和の落ち葉[2010日曜版vol47]

ジジです。
dscn3542-3.jpg

小春日和がつづきます。
「こはるびより」

秋のおわりから冬のはじめに、
おだやかであたたかい日があります。
それを、こはるびよりといいます。

小春というのは、
むかしの暦で10月のこと。
いまでいえば11月です。

春のようにあたたかいから、
ちいさな春とでもいったかんじで、
小春とよばれるようになりました。

こはるびよりには、
ボクは、ねむくなる。
dscn3547-3.jpg

でも、小春になって、
落ち葉がちりはじめました。
dscn3640-3.jpg

地面のうえに落ち葉。
dscn3643-3.jpg

ボクも、落ち葉、
すきです。
dscn3545-3.jpg

木のねもとに、
落ち葉。
dscn3644-3.jpg

パラパラと落ち葉。
dscn3642-31.jpg

落ち葉のもよう。
dscn3641-3.jpg

小春日和の日に、
落ち葉がまいちる。

毎年毎年のくりかえし。

「くりかえされることのなかに、
真理がやどる」

ボクは、もの思いにふける。
dscn3546-3.jpg

あれ?
dscn3548-3.jpg

雨の音。
dscn3629-31.jpg

こはるびよりのなかから、
冬の足音がきこえてきます。
dscn3544.JPG

そうすると、
冬にまっしぐら。
dscn3652-3.jpg

もの思いもそろそろやめにして、
ボクも、冬ごもりのしたくを、
しなければなりません。

<『ジジの気分』(未刊)より>

2010年11月20日(土曜日)

上田惇生先生の快気祝いとドラッカーの言葉「常になされるべきことから考える癖をつける」

dscn3620.JPG
ユニクロの創業感謝祭が始まった。
朝日新聞の一面買いきりで広告

今日11月20日(土曜日)から、
23日(火曜日)の勤労感謝の日まで、
実にいいタイミング。

年末商戦のさきがけ、
ボーナス商戦のさきがけ、
立冬から真冬への転換期、
そして勤労感謝の日。

ユニクロとファーストリテイリングの前身は、
「小郡商事」。
その創業が、この時だった。
今年は61周年。
柳井正CEOがそれを最大限に活用した。

利用しただけではない。
活用した。
だから、発展性がある。

今日20日午前6時に来店した顧客には特典がある。
「すぐに使える1000円offクーポン」などのスクラッチカード。
これにはハズレがない。

そして早朝6時先着100名の顧客には、
アンパンと牛乳がふるまわれる。

朝日新聞のユニクロのチラシ広告の目玉は、
スーパーマーケットで展開される
「日替わり」方式。

20日はヒートテック990円。
それとウルトラライトダウン3990円。
初日はインパクトが不可欠。
だから二つの日替わり商品を用意した。

そして21日はマイクロフリース790円、
22日はフランネルチェックシャツ990円。

この「日替わり」のやり方を最初に考えたのは、
サミット㈱の販促担当だった堀さん。

こういったノウハウは大抵、
発案者のなまえが残らない。

だが、考え方や方法は残る。
それでいい。

ユニクロの創業感謝祭。
様々な思いが詰まっている。
それが顧客のマインドをつかむ。

さて一昨日は、
コーネル・ジャパンの講義が終了してから、
大宮に駆けつける。
「ドラッカーの分身」上田惇生先生の、
ご病気快気祝い。

企画者は、
商人舎エグゼクティブ・ディレクター川勝利一さん。
上田先生がこれほど信頼している人は少ない。dscn3606-3.jpg

上田先生、川勝さん、私、
そして日本スーパーマーケット協会専務理事の大塚明さん。

この図は、コーネル・ジャパンの、
「ファカルティ会議」でもある。
上田先生、大塚さんともに講師だからだし、
川勝さんは上田先生のマネジャーのような存在でもある。

会話はドラッカーの思想を展開している実例こそが、
最も大切だという方向で進む。
有意義で、快適な、会話。

上田先生の快気祝いということそのものが、
私たち全員を勇気づけた。

上田先生は私たちにプレゼントをご用意くださった。
dscn3613-31.jpg
ドラッカーの遺作。
『プロフェッショナルの原点』
それを上田先生が加筆しつつ翻訳。

サインもいただいた。
dscn3615-31.jpg
ドラッカー自身が選んだ「95の言葉」
それに解説がついている。

ご一読をお勧めしたい。

私は特別に、上田惇生先生から、
励ましとお勧めをいただいた。
お許しもいただいた。

意義のある夜だった。
特に、この機会を設けてくれた川勝さんに、
こころから感謝。

さて、昨日は、
プラネットユーザー会2010。
東京国際フォーラム。
101119-tokyo-intl-forum.jpg

会場はホールB7。
101119-hallb7.jpg

参加企業数231社、参加人数561名。
過去最多となった。
101119-tamanyu.jpg

まず、玉生弘昌代表取締役社長から開催のご挨拶。
101119-tamanyu2.jpg
EDIを左脳(定型業務)、
バイヤーズネットを右脳(非定型業務)にたとえた。
どちらもプラネットの基本機能。

パソコンを使用した現代の会社の業務について、
玉生さんはいつも考察している。
その主張と結論。
「プラネットはハードウェアでもソフトウェアでもなく、
“流通ウェア”サービス会社である」

基調講演は、
全日本食品㈱齋藤充弘代表取締役社長。
テーマは「小商圏時代のスーパーマーケット経営」
101119-zenishoku-saito.jpg
サブテーマは、
「製配販一体となって行う消費者視点のマーケティング」

不況、高齢化社会の今、
お客様はできるだけ自宅から近くで買い物したい。
短時間で、その時必要な分だけの買い物をしたい。
つまり、日本のスーパーマーケットは、
さらにさらに「小商圏の時代」を迎えている。

それが斎藤さんの講演の趣旨。
途中、実際の詳細なマーケティングの話は
マーケティング担当の佐藤さんにバトンタッチ。
101119-zenishoku-sato.jpg
POSデータをいかによく分析し、
売れ筋商品や適正価格を決めるか。
自動発注システムjを使用し、
いかに適正な数量を発注するか。

顧客カードからデータを収集し、
その顧客の販売頻度の高い商品を提案し、
買いそうな商品の顧客別チラシをつくる。
まったく新しい販促戦略。

これからの時代、データ管理がいかに大切か。
それが存分に語られたセミナーだった。

最後に上田先生からプレゼントされた
『プロフェッショナルの原点』から。
第1章の最初に出てくる言葉。
それはドラッカー自身が遺作の最初の言葉にしたもの。

「なされるべきことをなす」
「成果を上げる知識労働者となるためには、
なによりもまず、なされるべきことは何かを考えねばならない」

「何をしたいかではなく、
何がなされるべきかから考えねばならない。
しかる後に、何が自らの強みに合うかを考えねばならない」

「強みでないものを行ってはいけない。
他の者にまかせねばならない」

ドラッカーの言葉は多大な経験に裏打ちされている。
30代、40代の勢いに乗った人間の発言とは異なる。

しかし95歳まで生きた哲人の言葉。
真摯に、謙虚に、受け止めたい。

「常になされるべきことから考える癖をつける」
いまの私の姿勢そのものである。

<結城義晴>

2010年11月19日(金曜日)

コーネル・ジャパンの荒井伸也・大久保恒夫・廣田正講義

ゼネラルモーターズが、再上場。
20世紀のアメリカの象徴の復活。

ウォルストリートに「GMのエンジン音」が響いて、
「アメリカの自信」が蘇りつつある。
1月から9月までの利益が3500億円と完全に復調。
しかし、国がかりの再建は、
国家と企業、企業と国民の関係性を、
私たちに考えさせることとなった。

私たちは、考えねばならない。
よくよく、考えねばならない。


昨日は、コーネル大学RMPジャパン第3期11月の2日目。
東京・市ヶ谷のお堀沿いの法政大学ボアソナードタワーも、
晴れ晴れとした容姿。
dscn3599-3.jpg

25階の私たちの教室の窓の下に、
東京の街が広がる。
dscn3602-3.jpg

午前9時、荒井伸也首席講師の講義。
「スーパーマーケット原論1」
dscn4724-3.jpg

荒井先生のこの講義も、
コーネル・ジャパンを特徴づける内容。
すなわちあくまで論理的に、
あくまで問題解決的に、
スーパーマーケットを考察し、
企業や事業、仕事を考える姿勢。

dscn4726-3.jpg

荒井先生の講義は、ダイエーの大型店は、
果たしてスーパーマーケットだったのか、というところから始まる。
林周二『流通革命』やダイエーと西友の赤羽戦争。

セルフサービスとチェーンストア。
それらの本質を解き明かしつつ、
「スーパーマーケットとは何か?」を明らかにする。

その間に「産業の理論」と「小売業」の関係性、
「小売業の業態」の社会的機能に基づいた分析。

毎回聞くけれど、毎回、目からうろこ。

荒井先生のスーパーマーケット論は、
「日本における小売業発展の特色」を時系列に整理し、
完璧な定義に至る。
「『家庭内で食べる食』を総合的に品揃えしている店」

この講義は、今後も様々な人に聞いてもらいたいと思う。

次の講義は、大久保恒夫先生。
㈱成城石井前社長にして現在、セブン&アイ・ホールディングス顧問。
その大久保先生は、コーネル・ジャパンの第1期生。
そのことを紹介する。
dscn4736-3.jpg

大久保先生の講義テーマは、
「スーパーマーケット・マネジメント」
dscn4741-3.jpg

「小売業にとって一番大事なのはマネジメント」
「小売業の目的はお客様に喜んでいただくこと」
「挨拶を良くするだけで5%経常利益が上がる」

「実行のマネジメント」こそ大久保先生のモットー。

これまでも何度もいっしょにセミナーを開いたり、
講義をお願いしたりした。

これまでの講義や講演も秀逸だった。
しかし今回はその中でも最高だった。

第3期生は幸せだと思った。

「実行の第3期生」が「実行のマネジメント」の、
最高の講義を聞くことができたからだ。

大久保さんの心境は、
「志定まれば、気盛んなり」
私はそう読み取った。

あっという間に昼食。
窓の外は小春日和。
dscn4743-3.jpg

午後1時15分、講義再開。
「ディスカッション」とタイトルしたが、
荒井先生、大久保先生への質疑応答。
dscn4744-3.jpg

私が司会を務め、
もちろん私も発言する。

すぐに質問が出始めた。
dscn4750-3.jpg

大久保先生が淡々と、しかし的確に答える。
dscn4754-3.jpg

荒井先生も経験に基づきつつ、
総括的に答える。
dscn4757-3.jpg

さらに質問が広がる。
論点が変わる。
dscn4765-3.jpg

大久保先生が答える。
荒井先生が解説する。
副学長が整理する。
dscn4779-3.jpg

今度もあっという間に90分は過ぎた。
dscn4784-3.jpg
荒井先生と大久保先生に共通すること、
それは21世紀の日本のスーパーマーケットや小売業にとって、
不可欠の経営機能である。

大久保先生は、来年1月の湯河原合宿での講義が最後となる。
来年からはしばらく教壇を降りる。
dscn4785-3.jpg
心から感謝しつつ、固い握手。

3人の質疑応答の後の最後の講義は、
「双葉の前に双葉なく、双葉の後に双葉なし」の、
菱食最高顧問・廣田正先生。
dscn4786-3.jpg

テーマは「食品卸売業からの提案」

dscn4817-1.jpg

廣田先生は、1955年に社会人となった。
食品の中間流通に属する。
その7年後に林周二著『流通革命』が大ブーム。

しかし、卸売業や中間流通の社会的機能を果たしつつ、
廣田先生は会社を1400倍に成長させた。

dscn4825-3.jpg
「メーカーにとって卸売業が顧客ではない。
卸売業にとって小売業が顧客ではない。
メーカーも卸売業も小売業も、
コンシューマーが共通の顧客だ」

最後に「食品流通業の先輩として」5つの提言。
1.成長と膨張は違う(田島義博)

2.不満足領域の継続は新産業を生む。

3.企業の利益はその企業が果たした社会貢献の対価である。

4.「脱皮」には「単純脱皮」と「変態脱皮」がある。

5.構造変革期にはリーダーの役割がより重要。
「志」を持った指導者になってほしい。

素晴らしい講義だった。
「食品産業の将来を支える人たちに、
ミッションを与えてほしい」
私のお願いは十二分に果たされた。

75分の講義が終わると、
質疑応答。

真っ先の質問は、国分㈱千木良治さん。
dscn4827-3.jpg

そして三井物産の小竹経一さん。
dscn4831-3.jpg

千木良、小竹、両君が質問したところが、
何よりも、いい。

廣田先生も、質問に丁寧に答えてくださった。
dscn4834-3.jpg

コーネル・ジャパンは食品産業全体のための、
教育機関であることが証明されたわけで、
私はことのほか嬉しかった。
dscn4838-3.jpg

廣田先生にも、心から感謝したい。

講義が終わるころ、
窓の外の「スカイツリー」も喜んで、
私たちのクラスを覗きこんでいるように見えた。
dscn4839-3.jpg

ゆうぐれの富士も、
美しかった。

荒井先生が最後につぶやいた。
「こんなにいい授業はそうそうない。
でも最初からこんないい講義ばかりで、
来月から見劣りしないだろうか」

荒井先生が、ほんとうに心配されている様子に、
私はほほえみを禁じえなかった。

コーネル大学RMPジャパン、
快調です。

「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」

<結城義晴>

2010年11月18日(木曜日)

コーネル大学RMPジャパン11月の「商業の基本理念と現代化の思想」

昨夏の参議院選挙の1票の格差、
昨日17日の午前と午後、
東京高等裁判所で「違憲」と「合憲」の反対の判断。

実は各地で同じような訴訟が起こされていて、
高裁の裁定や判決が出そろったところで、
最高裁判所が判断を下す。

正反対の判断が、高裁レベルで分かれる。
いかにも21世紀的な事件として、面白い。

ただし、最大5倍の1票の格差は、
それだけとらえると、
不平等・不公平であること甚だしい。

ハーバード白熱教室のマイケル・サンデル教授の「正義論」のように、
議論して、煮詰めていっても、最後の判断が、
高等裁判所ですら分かれるような問題。

そんなことは企業や事業では、
日常茶飯に起こる。

さてそんな問題が発生したら、
あなたはどう考え、どう判断するか。

事業においていちばん大切なことは、
自分で考え、自分で判断することだ。

もっともいけないのは、
自己判断を停止し、他人に委ねる態度。

そんな経営者がいなくなることを目的に、
昨日は、コーネル大学RMPジャパン第3期11月講義。
リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン。

ところは、東京・市谷の法政大学ボアソナードタワー。
イノベーション・マネジメント研究センターのセミナー室。
ここが私たちのフランチャイズ。
dscn4673-3.jpg

お昼には全国から「実行の第3期生」全員が揃った。
dscn4685-3.jpg

開講前に、事務局会議。
先月はコーネル大学の先生のレクチャー主体だったが、
今月から日本の講師陣による講義が始まる。
dscn4676-3.jpg
副学長の私と首席講師の荒井伸也先生、
そして村尾芳久さん、中間徳子さん、太田美和子さん。
ことしも1年、よろしくお願いします。

午後1時、いよいよ講義開始。
dscn4677-3.jpg

司会は、事務局の太田美和子さん。
dscn4678-3.jpg

第1講座はガイダンス。
シラバスを見ながら、1年の講座の全体像、
コーネル・ジャパンの目的、
講座への参加の注意点などなど。
dscn4688-3.jpg
手に持っているのは「コーネル・ノート」。
コーネル大学が開発した使い勝手のいいノート。
みなさんにもお勧め。ロフトで売られている。
荒井伸也首席講師の最初のレクチャー。
dscn4691-3.jpg
「経営はプラクティス」
それが荒井先生の主張。

FMIジャパン事務局長にしてコーネル・ジャパン事務局の中間徳子さん。
今夏、コーネル大学の食品産業プログラムのサマースクールに参加した。
その内容を報告。
dscn4696-3.jpg
コーネル大学サマースクールのカリキュラムと、
コーネル・ジャパンのカリキュラムは詳細なところは異なる。
日米の小売業の構造やマインドの違いもある。
しかし、根本の考え方は共通している。

新日本スーパーマーケット協会営業本部長の村尾芳久さんは、
このコーネル・ジャパンを主催する協会の責任者。
dscn4699-3.jpg
ガイダンスは1時間で終了。

第2講座は、「商業の基本理念と産業化の思想」。
講師は結城義晴。これは2時間。

dscn4708-3.jpg
商業近代化の歴史から世界産業の中の小売業の位置。
働きたい企業ランキングと「顧客満足・従業員満足」。
さらに「戸籍のないスーパーマーケット産業」の実態。
そして「小売業現代化」のイメージ。
それは「知識社会の知識商人」によって成し遂げられる。

今回、私は新しいテーゼを出した。

食品産業が一致して存在価値を主張する方向性。
それは「食の楽しさを正義とする」こと。

いま、「安心・安全が正義」となっている。
しかし、それは、当然のことであって、
それが一体となるテーマではない
フランスの食品見本市「シアル」では、
常に「プレジャー」を大テーマに置く。

アメリカでもヨーロッパでも、
「食はたのしい」こそ正義。

だれでも食べることは楽しい。
食べることによって命をもらう。
本能的に食べることは楽しさ、喜びに直結している。

これを食品産業全体の正義にせずして、
サプライチェーンの構築も何もない。

いかがだろうか。
第3講座は、河津司さん。
経済産業省流通課長を経て、
経済産業研究所総務ディレクター。
コーネル大学RMPジャパン第1期生でもある。
dscn4711-3.jpg
流通産業の位置づけと経済産業省の流通政策の系譜。
それに実際にかかわった河津さんにしか語ることができない充実した内容。
最後に、コーネル第1期生として学んだことをもとに、
「官民一体となった産業化」の提案をしてくれた。

最後の講座は、「F&Bマーケティング」。
講師はふたたび結城義晴。
午後6時15分から始まって、
最後は8時まで長引いてしまったが、
私が立教大学大学院で担当している「F&Bマーケティング」のエッセンスを、
90分で語るのだから大変。
dscn4719-3.jpg
Fはフード、Bはベバレッジ。
日本では食品産業といわれるが、
私は内食・外食・中食の三つのカテゴリーから、
マーケットの動静をダイジェストした。

マーケティングは、消費者に近いところから発想する行為。
だから内食・外食、そして拡大の一途をたどる中食を分析すると、
流通も生産もマーケティング視点になる。

食べることは喜び。
食べることは楽しい。

だから食品マーケティングは楽しい。

こんなテーゼを再発見して、
私は楽しい。

心から、感謝。
<結城義晴>

2010年11月17日(水曜日)

スーパーマーケットは「椅子のないレストラン」<林廣美>

朝日新聞のコラム『経済気象台』。
私が好きなコラムニスト遠雷氏が、
「格差が変革のバネである」と題したコラムを書いている。

誤解されそうなことを、
あえて取り上げ、本質を突く。
遠雷氏にはそれがある。

まず「七・五・三現象」を語る。
「中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が、
3年以内に離職すること」

その中で、大企業の離職率は低い。

「従業員が1万人を超える大企業では(中略)、
入社後3年たっても早期退職者数が1%から2%にすぎない」

ここで大学生の数は、
1985年185万人から、2010年288万人に増えた。
進学率は、85年26.5%、2010年54.4%。

ところが大企業の採用数が増えていない。
そこで「入り口」が狭くなり、
「大卒」がかつての「高卒」「中卒」の職場に回される。

小売商業は、もともと「高卒」「中卒」の多い業種だった。
しかし、彼らは大いに戦力となり、
会社に貢献した。

さらに「大卒」も、
どんどん現場に配置された。

遠雷氏は大はやりの「格差論」に反論する。
「格差を論じる人たちは、『かわいそうな若者』を例示し、
問題の所在を、社会や会社の側に求めるが、
『恵まれない若者』がいることがそんなに悪いことだろうか」

遠雷氏は断じる。
「いつの時代でも格差はある」
「残念なことだが、
それが変革へのバネの一つになってきた」。

小売商業は、この格差の中で、
人材を採用し、戦力にしてきた。

「格差がバネ力を生む」
私も賛成だ。

「失われたのは若者のハングリー精神である。
「若者自身に怒りが乏しいことこそが危機である」

結城義晴のひとこと。
「怒りのエネルギーはコンプレックスのエネルギーより、
数段健全なのだ」
さて昨日16日は、東京・台場・タイム24会議室。
「儲かる惣菜マーチャンダイジング」
商人舎主催セミナー。
dscn4586-11.jpg

まずはご参加くださった皆さんに感謝申し上げたい。
日本フードサービス専門学院長の林廣美先生をゲストに迎え、
結城義晴との二人のビッグセミナー。
dscn4646-1.jpg
林先生は惣菜分野の第一人者として
30年以上にわたり小売業、メーカー、卸売業を指導されてきた。
その経験と林先生の旺盛な好奇心が、
常に新しい情報とノウハウを形づくってきた。

林先生の話はいつも、
具体的で役に立ち、しかも面白い。

午後1時からスタートした第1講座は、
結城義晴の「食品マーチャンダイジング2010年の総括と2011年の展望」
dscn4589-11.jpg

さまざまな数値を提示しながら、
2011年の課題と、持論を90分間、展開させていただいた。dscn4597-11.jpg

とりわけ、「業態」から「フォーマット」へと、
マーケットや産業構造が変貌を遂げたことを強調したが、
いかがだったろうか。
dscn4616-11.jpg
私はいま、何か新しい理論が生まれつつあることを実感している。
もうちょっとというところまで到達した。

本当に、もうちょっと。
本当に、もう少しの努力。

元気は沸いてくる。

「志定まれば、気盛んなり」

第2講座は今回のセミナーの肝。
林廣美先生の独壇場。
「儲からない惣菜売場を儲かるようにするテクニックと戦略」
dscn4623-11.jpg

惣菜の売り方が変化しているのに、だれも気付いていない。
鉄砲の本体ではなく、弾の強化が大事。
惣菜は仕入れ業ではなく製造業。
そのために惣菜のデザイナーが必要。
dscn4630-1.jpg

120分間、あっという間に過ぎた。
「やっぱり時間が足りなかった。テキストの量が多かったか」dscn4639-1.jpg
林先生の一言。
林先生には、参加者に伝えたいことが、
あふれんばかりにある。

コーヒー休憩のときには、すっかり日が陰ってきた。dscn4643-11.jpg

東京はこの秋一番の寒さ。空気が澄んでいて夕焼けがきれい。
dscn4644-1.jpg

そしてセミナー最後のまとめ。
第3講座は二人による徹底討論。
「スーパーマーケットは店全体を惣菜化せよ」dscn4649-1.jpg

スーパーマーケットは「椅子のないレストラン」。
あらゆる売場を一歩調理に近づける努力が必要。
林先生の主張は明快だ。
明快だが、そのテーゼは重い。

「つくってから、売る」のではない。
「売れたら、つくる」
このジャスト・イン・タイムの仕組みを構築する。
そうすれば、不況の時代にも対応できる。
顧客にも満足を提供できる。
dscn4652-1.jpg
最後は、林先生のお土産。
「クリスマス対策」
「大晦日対策」
「年始対策」

そして「切り落とし量販のすすめ」

実に具体的で実践的なコンサルティング指導が、
マス・カスタマイズで、参加受講者に授けられた。
午後1時から6時までの5時間にわたり、
90名ほどの方にご清聴いただいた。
dscn3590-3.jpg
関西スーパーマーケット柄谷康夫番長とその仲間たち。

dscn3591-3.jpg
横浜市西区北幸の隣組・相鉄ローゼンの安達高志隊長とその仲間たち。
心から感謝したい。

「スーパーマーケットは、椅子のないレストラン」
この林先生の言葉が心に残った。
dscn3598-3.jpg

林先生に心から、感謝。

<結城義晴>

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.