今日の朝日新聞のコラム『経済気象台』では、
「失われた30年」がテーマとなり、
日経新聞コラムの『大機小機』では、
「世界の成長を日本の成長に」となっている。
コラムニスト山人の朝日はこう、始まる。
「今の日本経済の光景を見ていると、薄ら寒くなる」
「景気が再び停滞感を強めているからだけではない」
「バブル崩壊後20年も経済が停滞基調にあり、
デフレ状態が長期にわたって続いているのに、
そこから脱しようという覚悟が、政府にも民間にも見えないからだ」
ずいぶんと高みに立ったモノ言い。
わからないでもないが、
特に民間には覚悟も意欲もある企業がある。
「民間でも、お上頼み、既得権益擁護の姿勢が目立つ」
これは既得権益を「持てる民間企業」の姿勢。
「政府も民間も、自らリスクをとることなく、
他者や将来世代の負担・犠牲の下で、
現在の自らの利益を守ろうとしている」
「政府、企業、個人それぞれが、
日本がよって立つべき基盤を率直に語り合い、現状を拒否し、
それを変える大きな戦略の下で、
それぞれが自らできることを地道にやり続けることである」
「それができなければ、日本は『失われた30年』に陥る」
こういう「脅し」的な文章の書き方、話し方、訴え方もある。
それで当たり前の結論を導く。
あるいはガンバリズムの非論理的な世界に誘う。
これらは適当に読み流し、聞き流しておけばよろしい。
対して日経は、日本のポテンシャリティの高さを評価し、
「地球人口100億人時代」にも、
日本と日本人が充分に機能することを示す。
「国連は世界の総人口が50年までに、
91億人へと22億人増えると予想する」
「日本の総人口は約3200万人減り、9500万になると予想されるが、
世界的にみれば我が国の人口減少は誤差の範囲である」
その時、「爆発するグローバル戦略を打つことが大切である」
「企業活動に国境はない」
その通り、ジョン・レノンはImagineで歌う。
「国を開き、企業も個人もグローバルな視点に立つことで、
世界の成長を日本の成長にできる」
まるで坂本竜馬だが、
私も、こちら派だ。
男一匹、いざとなったら国を飛び出して、
どこでも生きることができる。
それが翻って母国に貢献することにもつながる。
今年9月、中国・上海を訪れた時、
あの「どや顔」の中国人たちに混じって、
私はここでも、十分以上に生きていける、やっていけると思った。
パリのシアルで、世界のジャーナリスト仲間と再会した時にも、
私は「彼らに絶対に負けない」と決意した40歳の時を思い出した。
グローバルな視点に立ちつつ、
ローカルな問題に対処する。
これが「グローカル」の考え方。
そして商人はすべからくポジティブ派でなければいけない。
うまくいく仕事や会社はみんなポジティブ派である。
さて、きのうの「あした、あした」の今日は、
阪食の最新戦略店舗巡り後篇。
千野和利社長は、生粋の阪急百貨店育ち。
1999年取締役、2001年に阪急オアシス代表取締役社長、
そして2006年9月より、阪食代表取締役社長。
今年10月のコーネル・ジャパン開講講座でも記念講演をお願いした。
「高質食品専門館」の1号店は昨2009年7月、
「阪急オアシス千里中央店」(大阪府豊中市)、
2号店も昨年8月の「阪急オアシス御影店」(神戸市東灘区)、
3号店は今年2月の「阪急ファミリーストア住吉店」(大阪市住吉区)、
そして4号店は、「阪急オアシス山科店」(京都市山科区)。
さらに今年7月「阪急オアシス南千里店」(大阪府吹田市)、
10月「阪急オアシス日生中央店」、
11月「阪急オアシス淡路店」(大阪市東淀川区)、
最後に12月、「阪急オアシス箕面店」。
全部で、8店の新戦略タイプ。
千野社長は、3つのキーワードを具現化した売場を作り続けた。
その3つとは「専門性」、「ライブ感」、「情報発信」。
「専門性」は加工度を上げた生鮮食品に力を入れるほか、
コーヒーやワイン、ナチュラルチーズ、さらにカレーなど、
様々なカテゴリーで幅広い品揃えをする。
「ライブ感」は、主に生鮮食品で対面売場を設け、
顧客とのコミュニケーションを重視する。
そして「情報発信」は、
顧客のニーズ・ウォンツが反映されたメニュー提案、
新たな食生活提案などを続ける。
キッチン・ステーション、ギフトステーション、
そしてキッチン・スタジオも設けられている。
午後は、今年7月リニューアルオープンした南千里店。
この店から阪食の「新戦略」第2段階が始まった。
日本最初の大規模ニュータウンとして、
1962年に開発された千里ニュータウンの南に位置するが、
住民の高齢化が進む商圏でもある。
ショッピングセンターの1階が阪急オアシス南千里店。
入口からすぐにクレートに山積みされた季節の野菜を、
お客は楽しみながら購入している。
入口左手は野菜コーナー。
野菜も果物も市場スタイルで、クレート陳列。
広島産不揃い大葉98円。
こういう訳あり商品の訴求は購買意欲をそそる。
季節の野菜が並び、
その先の壁面にはフルーツバーが設けられている。
阪急の木箱を使った市場感あふれる陳列。
フルーツバーの先には、
お得意の量り売り・バラ売りコーナー。
その先がシーフード・デリと鮮魚売場の対面コーナー。
鮮魚売場のセルフコーナーは広いコンコースの真ん中で展開。
年配のお客もカートショッピングするのに十分な通路幅がある。
鮮魚売場の先は精肉売場。
写真は逆から写したところ。
精肉売場の先にあるキッチンコーナー。
試食・試飲をお客は楽しんでいる。
ワイン&チーズの売場。
ワインとチーズを始めとする「つまみ」「前菜」を、
組み合わせて提案する。
ワインクーラー室が奥に設けられている。
ご奉仕品と冷凍食品のコーナー。
午後2時過ぎというわけでもなく、高齢者のお客が多い。
惣菜売場は「DELICATESSEN」のロゴ。
手前からおでん、皿盛りおかずバイキング、手作りだし巻き玉子、
フライてんぷらバイキング、スナックコーナー、
ふんわりお好み焼きと見やすいサイン。
サラダ、おにぎり、弁当のセルフ・コーナー。
調味料売場の中のスパイスコーナーでは、
手作りドレッシングを提案。
ちょっとリッチに洋風、濃厚な中華風、さっぱり和風とくくり、
スパイス、塩、オイルだけでなく、
レシピ本、ボールなど雑貨を関連陳列する。
阪食では高齢者でも見やすいように、
プライスカードの文字を大きくしている。
一時、電子タグも導入したが、お客視点でこの方法に変えた。
赤色の文字はお値打ち価格。
卵コーナーでも「たまごワールド」と称し、
たまごキャラクターの調理器具を関連販売。
「ガーデンレタスオアシス」は、
ショッピングセンター1階の広場に設けたレストルーム。
お客の憩いの場になっている。
千里ニュータウンといいながら、
オールドタウン化しつつあるこの立地。
阪食の「新戦略店舗」はニューファミリーばかりを相手にするものではない。
むしろ高齢者、熟年の客層をしっかりとらえて、
そこに新メニューや掘り起こした食生活を提案するのだ。
最後の視察は、淡路店。
東淡路商店街の端に位置する700㎡の都市型小型店。
インストアベーカリーの厨房がガラス張りで外から見える。
都市型小型店の実験店の位置づけ。出入口は1カ所。
入口を入ると季節の野菜がクレートで並ぶ。
小型店でも生鮮3品は強化している。
青果売場の先に鮮魚売場が見える。
小型店でもバラ売り、量り売りコーナーは欠かせない。
青果部門の左壁面に日配売場。
鮮魚売場は、寿司、刺身などのシーフードデリを対面販売、
切り身パックは平ケースで販売する。
鮮魚売場から精肉売場に続くコンコース。
小型店でも通路幅は広い。
精肉売場は壁面で展開。
精肉売場で関連販売されるグッズ。
こうした食提案の試みが随所にある。
精肉部門の奥には、ミートデリコーナー。
さらに惣菜部門へと続く。
キッチンステージも小スペースながら設けている。
「毎日の食卓を美味しく、楽しく!」とサインが見える。
食は楽しむものというメッセージはすごくいい。
店内奥主通路に置かれた販促商品。
ミートデリから続く惣菜売場。
そしてデリとインストアベーカリーの売場。
自店製造のデリと食パンで作ったサンドイッチを訴求。
インストアベーカリーの前にあるホールセールパンのコーナー。
小型店といえども酒売場は欠かせない。
エンドで展開されているクリスマス・パーティ用の菓子と飲料。
レジから出口へ向かう一角には正月商材のプロモーション。
ゴンドラ1本で展開する花卉コーナー。リースも並ぶ。
レジは6台ながら、年商十七億円ベースで推移する。
レジ横にはサービスカウンター。
もちろんラッピングサービスを行う。
都市型小型店は阪食でも大きなテーマ資源。
それをしっかりととらえ始めた。
狙いは「アッパーミドル」層で、アッパーとミドルの中間をコアにする。
しかし大事なのは、このあたりをコアにしながら、
客層が広がりつつあることだ。
すなわち、新しい飯食のポジショニングが、
確立されつつあるわけだ。
2010年度はグループ年商が1000億円を超える。
千野社長は今年度を「第2の創業」と位置づけ、
この「新戦略店舗」の進化と既存店への「水平展開」を基本方針としている。
私がうれしいのは、そのうえで、
「お客さまからの信頼を得つつ、
従業員が働きがいと誇りの持てる企業」を、
実践躬行しようとしている点。
そういえば、千野さんも松元努常務も、
国際派で、「グローカル」を信条とする。
この日のクリニックの翌日、
社長・常務を中心とする数人のチームは、
イタリアに向かった。
私も同行したいくらいだった。
<結城義晴>