「法人税率5%引き下げ」<朝日新聞>
「法人税5%下げ」<読売新聞>
「法人減税5%」<日経新聞>
一面トップに並ぶ見出しは、
どれも同じようなものだが、
ちょいとだけ違う。
互いに調整が働くのだが、
これが微妙なもの。
あなたはどれがお好み?
私は語調から言って、今回は日経が好み。
まあ、似たり寄ったりのコモディティ状態ではあるけれど。
朝日新聞は、そのわきに「内閣支持続落21%」を報じる。
無作為にしろ朝日が勝手に選んだ回答者数たった2019人のデータが、
でかでかと一流新聞の一面に出る。
法人税は現在、国と地方をあわせた実効税率が40.69%。
それを35.69%に下げる方針を、自称「仮免許」だった菅直人首相が、
野田佳彦財務相や玄葉光一郎国家戦略相に指示したという。
これは企業の税負担軽減を目的としている。
それによって日本経済全体の成長を促し国際競争力をつける。
企業の最終収益が高くなれば、雇用の拡大も望める。
しかし、それでは国と地方自治体の税収が下がる。
そこで政府税制調査会で所得税・相続税の見直しをする。
所得税や相続税は個人に課する税金。
従って菅政府は今回、
法人からの税を緩め、
個人の税を厳しくとる方策に出た。
ただしその個人といっても、
高額所得者や高相続者にターゲットを定める。
その分は5500億円規模。
これは自民党への対抗軸としての民主党の本来のポリシーだが、
時期とタイミングが極めて重要な鍵を握る。
2011年度の税制改正では、はっきり言って遅い。
それが朝日新聞の政府支持率21%にも示された。
さてその朝日新聞のコラム『経済気象台』。
今日のテーマは「インテグリティー」
テーマ自体は最も重要で、しかし誤解が多い。
コラムニスト六菖氏はまず嘆く。
「この国はいつの頃から官民挙げて
規制好きの民族になってしまったのだろうか」
私は、「この国は」といった言い方は大嫌いだ。
「この会社は」はもっと嫌い。
無責任極まりない。
そのくせ自分だけ高みに立っている。
もっと、ともに苦しまねばいけない。
のたうちまわらねばならない。
「経営者にとって必要なことは
企業の高尚な理念や倫理観を
組織に徹底することである」
これは正しい。
「従業員が企業の価値観や目的を共有していれば、
細かな規定は重要性を持たない」
これはおかしい。
会社というものがわかっていない。
理念やビジョン、価値観を共有したうえで、
細かなルールがあれば、
それを守るのが社員である。
それが納得できるものならば、
それによって、社員は大いに救われるのだ。
「社長自身が理解していない規定を
順守させようとすることに無理がある」
こんな経営者は、ハナから失格。
しかし六菖氏の周りにはこんな経営者が多いのだろう。
「マニュアルで社員を統制するのは、
実は経営者の怠慢でしかない。
この手法は、信頼よりは不信を育み、
一体感(われらの会社)よりは対立(やつらの会社)を生む」
本来のマニュアルは、仕事の手順書である。
それは社員の統制に使われるのではなく、
仕事の標準をつくって、業務をしやすくするものだ。
よくできたニュアルは対立を生みはしない。
一体感を醸成する。
「社員が社会人として倫理と清廉潔白さを備え、
企業理念を体現することを
欧米ではインテグリティーという」
役員・社員、みなインテグリティは必須だ。
六菖氏は最後に言う。
「企業に限らずどの組織にもインテグリティーは重要である」
そして予想通りの終わり方。
「政府のインテグリティーへの意識の低さには驚かされる」
これは、ほんとうにつまらないEpilogue。
ピーター・ドラッカー先生はこの面では最高権威。
その有名な言葉。
「マネージャーとして、始めから、
身に着けていなければならない資質が、
ひとつだけある。
才能ではない。
真摯さである」
このくらいのこと、言ってみろ、と言いたい。
だれか知らないけれど。
一方、日経新聞の『大機小機』
タイトルは「真の弱者と真の格差」
コラムニスト隅田川氏は、「真の弱者」を定義する。
「自らの意志ではどうしようもない力によって
大きな負担を強いられる人たち」
故井上ひさしさんが「差別」について10カ条をつくった。
その根本の「差別」してならないこと。
「本人の力ではどうにもならないこと」に関して、
その人や組織を貶めてはならない。
私はこれを私自身の基準にしている。
ここでいう「弱者」も同じ。
隅田川氏は、豊かな日本にも、
「正真正銘の弱者」が存在するという。
「将来世代がそれである」
「現時点で生まれたばかりの新生児世代は
生まれた瞬間に1600万円以上もの生涯純負債を負っている」
「これから生まれる将来世代は
1億円以上の負担を強いられる」
金額で示すところがわかりやすい。
格差についてもコメントする。
「『機会の不平等』によってもたらされる格差である」
「現世代と将来世代との格差がそれである」
「日本で最も守られるべき弱者は将来世代である。
彼らは意思決定に参加できないままに、
重い負担を負わされているからだ。
そして、日本で最も是正されるべき格差は
現世代と将来世代との格差である」
これは、重い。
しかし極めて大事。
「真の弱者、真の格差問題に対応」せよと隅田川氏は諭す。
「それが我々現世代の最大の責務である」
店も会社も、社会も国家も、
組織と呼べるものは共通に、
「真の弱者と真の格差」とを意識化しなければならない。
「真の弱者と真の格差」に敏感にならねばいけない。
権力の横暴は確かにある。
しかしその権力と対峙するかに見えて、実は、
「弱者」の衣を被る現世代こそが、
「真の格差」問題の最大の敵である。
<結城義晴>