結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年12月28日(火曜日)

コーヒー値上げと野菜の値下がり、総合スーパー&食品スーパー11月販売統計と大塚明専務理事の分析

キーコーヒーが15%前後の値上げを発表。
時期は来年3月1日から。

「いよいよ来たか」
多くの小売業・問屋のバイヤーや現場担当者は、
そんな感慨を持ったに違いない。
これが他の商品群にも広がるのか。

家庭向け、業務用コーヒーの出荷価格が平均15%値上げされると、
このカテゴリーの商品構成を考え直さねばならない。

コーヒーの値上げは2006年4月以降、ほぼ5年ぶり。
当時の値上げ幅は平均12%。

キーコーヒーに誘導されるように、
業界最大手のUCCホールディングスも、
AGFも値上げの検討をしていることを明らかにした。

理由は原材料コーヒー豆の国際相場高騰。
13年ぶりの高値圏にある。
ニューヨーク市場の先物価格は、
2010年頭に比べ、約2倍の値をつけている。
1ポンド230セント前後。
産地における天候不順が最大の原因。
さらにブラジルなど新興国での高品質コーヒー豆の消費量急増も原因の一つ。

一方、野菜はこの年末に、値下がりが始まった。
こちらは天候安定が原因で、出荷量が回復。
レタスやホウレンソウなど葉物の卸値は昨年よりも低くなり、
小売価格はほぼ平年並み。

東京都中央卸売市場の卸値。
レタス1Kg134円。前年同期比で26%の安。
ホウレンソウ12%の安。

年末年始も平年並みの取引価格になる見通し。

あるものは値上がりし、あるものは値下がりする。

商売の妙味が現れる。
もちろんここで私の言う商売の妙味とは、
「儲け」が出ることではない。

環境変化が起こり、時局判断の難しい時こそ、
顧客が喜ぶ商売ができるということ。

さて、11月の販売統計が続々、発表されている。
日本チェーンストア協会の総合スーパーの販売概況と、
3協会による食品スーパーマーケットの販売統計。

日本チェーンストア協会62社、7889店の11月は、
前年同月比0.5%マイナス。
総販売額は1兆0137億円。
食料品販売額がマイナス0.7%、
衣料品はマイナス幅が大きく2.5%。
住関連品は逆にプラスの1.4%、
サービスはマイナス13.4%の大幅減、
その他はプラス0.6%。
住関連の伸びは、家電製品に牽引された。
家電はエコポイント半減を控えて駆け込み需要が生れた。
もちろんニトリやダイソーもチェーンストア協会会員企業で、
両社が住関連部門売上げを引き上げた。
総合スーパーの住関連が良かったとは聞かない。

一方の3団体合同「スーパーマーケット統計調査」。
昨日、東京・日本橋の日本スーパーマーケット協会で記者会見が行われた。
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今回、前半は大塚明専務理事の一人舞台。
後半は川野幸夫会長(㈱ヤオコー会長)の一人舞台。

まず、スーパーマーケットの11月販売統計。

総売上高は前年同月比101.4%。
7321億1830万円で、6カ月連続前年をクリア。
総合スーパーは99.5%だったから、こちらは健闘したことになる。
食品合計で6220億8719万円と昨対101.6%。

生鮮3部門は、青果が111.3%の916億4301万円。
野菜の高騰が数値を押し上げた。
一方、鮮魚は98.1%で660億6177万。
この間、魚が売れない状況が続いている。

畜産は100.3%の765億805万。
惣菜は103.2%で638億4856万、
一般食品その他で100.5%の3240億2579万。
非食品合計は99.2%の1100億3112万円。

青果・惣菜・精肉が好調。
鮮魚・非食品が不調。
明暗くっきり。

スーパーマーケット全体の傾向を見ると、
営業利益は出せる体質になってきた。

粗利益はさほど改善されていないが、
経費に関してはコントロールできるようになったということ。
これは大塚専務理事の分析。
20101228155408.jpg
景気が一つの業界の業績全体に影響を与えることはなくなった。
しかし、個別企業には影響を及ぼす。

さらに重要なことは、
粗利益には景気は影響しない。
ところが景気が低迷しているにもかかわらず、
経費に関しては予定通りという企業、
あるいは想定以上の削減が進んだ企業が多かった。

つまり粗利益で見るか、営業利益で判断するか、
どの指標にフォーカスするかで、結果は違ってくる。
現在の多くのスーパーマーケット企業は、
商品粗利益率向上よりも、
オペレーションの経費削減に向かっている。
だから「アベレージでは判断できない」。
A社もB社もC社も、それぞれに尺度が異なる。
それでよいし、そうあらねばならない。

すべての企業、すべての店が、
「こうあるべきだ」という時代では、
断じてない。

大塚専務理事はこのことを強調した。
私も、まったく同感。

大塚さんはコーネル大学RMPジャパン講師でもあって、
「マーチャンダイジングの原則」を講義してくれている。
私の見る限り、現状、どのコンサルタントよりも、
この面では、理論的で、公平で、優れた見識を持っている。

「売上げを上げよ」、
「粗利益を最大化せよ」。
それもよいだろう。
ある店においては、
ある企業においては。

しかし大半の企業、
大半の店にとっては、
いま「営業利益を確保せよ」がふさわしい。
それが現在の日本の小売業界。

だから、あなたの店、あなたの企業は、
自分の力を見定めて、
それぞれにどうあるべきかを考えなさい。

ピーター・ドラッカー先生のいう「自らの強みを知れ」

大塚専務の分析は続く。
日本スーパーマーケット協会のこの7年の部門別動向を見ると、
2008年までは水産物以外全部門が伸びた。
ところが2009年以降は全部門が悪くなった。

その中で、農作物は相場に左右される。
だから原価をそのまま売価に転嫁する傾向が強い。
お客も許してくれる。

しかし肉、魚は、許してくれない。

特に水産物は7年間低迷を続けている。
惣菜、加工食品も月によっては低迷する。

つまるところ、
小売業に大転換が始まった。
集物型小売業・集客型小売業の時代から、
顧客に近づく小売業の時代へ。

百貨店、総合スーパーの時代から、
スーパーマーケット、コンビニ、ドラッグストアの時代へ。
さらに都市型小型スーパーマーケットやネットスーパーへ。

特に大ブームの都市型には3つのパターンがある。
1.レギュラーサイズの600坪をコンパクトにしたタイプ
2.成城石井、クイーンズ伊勢丹のように、
やや高い、こだわり商品を提供するタイプ
3.コンビニ・タイプ

ネットスーパーは、売上げの前年対比では伸びた。
しかし利益は上がっているのか。
日本スーパ―マーケット協会会員企業でも、
売上げだけは上がっている。
しかし利益構造がどうなるかは予断を許さない。

店舗形態だけでなく、
品揃え、サービスでも顧客に近づいていかなければならない。
「売ること」を「買うこと」から発想しなければ、
皮肉なことに、売れない。

まず「コンシューマー」を「カスタマー」にする。
そのカスタマーは、「ショッパー」と「コンシューマー」の両面を持つ。

顧客には「購買局面」と「消費局面」の両面があり、
「購買局面」から「販売局面」を考え直さねばならないということ。
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大塚専務の分析する「成功している企業」の4つのタイプ。
①地域対応を徹底している
②首都圏市場で面積生産性技術を持っている
③ソリューション対応している
④EDLP型で 安く売れる構造をつくっている

この第4のタイプは利益が出るようになって、
その利益を再投資できる企業となってきた。

地方のローカル・スーパーマーケットは、
経費を抑えて損益分岐点を下げて、
「生き残る」戦略をとる。
それは「勝ち残る」ではない。

かつては商圏人口が6500人から7000人を割ると経営できなかった。
しかし今、スーパーマーケット、総合スーパーを合わせた店数で、
日本人口を割ると、7000人に1店ということになる。
だから特に地方企業は、
「全商品を買って下さい」という店にならざるを得ない。

そんなことを考えると、
ローカル・スーパーマーケットは、
それぞれの地域ごとに1社になりそうだ。

さらに利益構造や生産性の問題も変貌してきた。
この20年間で坪効率は半分になった。
スーパーマーケットで1坪100万を投資して店をつくると、
600坪タイプで6億円となる。
その損益分岐点は、3倍の売上げの18億円か、
同じ粗利益6億円となる。

そのうえ1人当たり生産性も伸びない。

だから商品を仕入れて、ただ売るだけでは利益は出ない。
商品をつくる、あるいは何らかの商品の組み合わせをする。

そこで考えられるのは、3つの戦略。
これしかない。
第1が、縦軸の問屋、メーカーの利益をとる。
第2は、商業集積をつくって賃料で利益を出す。
第3は、中国はじめ海外に出ていく。

いずれも、リスクを張って、
自分たちで利益をつくっていく。

かつては、サービスがいいか、立地がいいか、
商品ならば安売りしかなかった。

60年前はレジスターを入れて、セルフサービスに取り組んだ。
30年前は、POSレジが導入され、商品動向を把握する仕組みを追求した。
いま、新しい第3のビジネスの萌芽が始まっている。

そして過去60年、30年にはモデルがあった。
アメリカ企業、優れた国内企業を、
ベンチマークすれば改革できたし、成長できた。
これから先はまねすることができない。
自分たちで考えねばならなくなった。

「自分で考える」という意味において、
大きな転換期に入っている。

大塚専務理事の分析は、
私の認識と一致している。

年末最後の記者会見ということもあって、
出血大サービスの「講演会」。
感服、脱帽。
(明日につづきます)

<結城義晴>

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