結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年12月24日(金曜日)

クリスマス・イブの「ヒット商品番付・小売業編」とユニクロ柳井正の「我々の本来の立ち位置」

今日は、クリスマス・イブ。
世界中で展開されるキリスト教の宗教的イベント。

しかし商業・サービス業はどんな宗教であろうとも、
許容し、活用する。

サイゼリヤ会長の正垣泰彦さんが言った。
「ビジネスをやり続けていると、
それ自体が宗教のようになって、
宗教は必要なくなる」

だとすれば逆に、商売は、
すべての宗教を受け入れることができることになる。

私はむしろ、ギリシャ・ローマ時代の多神教が好きだ。
わが日本はずっと、ある意味で多神教。
だから天皇誕生日がクリスマス・イブ・イブに化ける。

それはそれで、とてもよろしい。

今日の日経MJで「ヒット商品番付・小売り編」
横綱が「都心向け小型スーパー」
大関に「エコ店舗」
小結が「ドラッグコンビニ」

前頭四枚目には「脱・門前薬局」が入っている。
前頭二枚目は「ネットスーパー」。
今年のトレンド、
それは店舗のコンセプトが広がってきたということ。

小売業がつくるものは何か。
荒井伸也先生の持論。
「小売業のプロダクト(製品)は店舗である」

㈱セブン&アイ・ホールディングス顧問となった大久保恒夫さんは、
「小売業は売場をつくるのが仕事」という。

法政大学大学院教授の矢作敏行さんは、
「小売業がつくるものは業態である」と表現する。

私はそのすべてだと考えている。
ただし現在のチェーンストアは、
「フォーマット」をつくるが。

その店舗や売り場をつくるが。

いずれにしても、今年の「小売業編のヒット番付」には、
それが現れた。

ただし、日経MJのヒット番付に登場した店や業態が、
小売業の趨勢に大きく影響する本命ではないが。

この新聞の特徴の一つだが、
そして新聞の特徴の一つでもあるが、
浮遊した現象を捉える。

都心小型スーパーマーケットもネットスーパーも、
ドラッグコンビニもそれぞれの現象ではあるが、
本質論ではない。

日経MJは一面トップの特集に、
「西友“変身”進んだか」を掲載。
「ウォルマート流 7合目」と結んだ。

早稲田大学教授の野口智雄さん、
R2リンク代表の鈴木敏仁さん。
おふたりを伴って、
リヴィンよこすか店を訪れ、
分析・評価。

野口さんの評価が80点の甘口、
鈴木さんは50店の辛口。

「専門家」を称する人たちの30ポイントもの評価の格差。
いかなることになっているのやら。

なにを持って評価するのかがちょっと曖昧だからこうなる。
さらにこの記事で決定的に欠けているのが数字。

改装後1年の現在も、
売上高は「二桁ペース」で伸びているというが、
ディスカウントしてボリュームが増えても、
営業利益が伸びていないのであれば、
それほど意味はない。

マルエツが「魚悦」というディスカウント店舗をオープンさせ、
日経をはじめ様々なメディアでレポートされているが、
こちらも同じこと。

かつて、ダイエーがトポスで失敗した。
イトーヨーカ堂もザ・プライスで失敗した。

西友がウォルマートに変わるのは、
これは当然のことだが、
それさえも、苦労に次ぐ苦労を重ねている。

ディスカウント商法の成否は、
「ハウ・ツー」や「ノウ・ハウ」の問題ではない。

精神の問題である。

石を投げつけられても、
中傷を浴びせられても、
「ディスカウントこそお客が喜ぶ」
「ディスカウントこそ正義だ」

そう思うことができる者でなければ、
成功は絶対にしない。

通常のスーパーマーケットが伸びなくなったから、
ディスカウントでもやろう。
そういった儲けを念頭に置いたディスカウントは、
必ず失敗する。

これは断言しておこう。

したがって西友がウォルマートとして蘇生するか否かは、
西友自身がどこまでウォルマートに成りきれているかにかっかっている。
昨日の日経新聞に、
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さん登場。

「成長戦略をを描くシリーズ」の第1回。

記者は「衣料品店で世界4位につけた」ユニクロが、
「H&Mなど流行品を低価格で提供するファストファッション」に、
どう対抗するかが聞きたい。

それに対して柳井さんが答える。
「H&MやZARA以上に成長するには、
海外中心に年間300店を新設する必要がある。
実行できなければ、2020年に連結売上高5兆円の目標を達成できない」
ちなみに2010年8月期は年商8148億円だった。

「当社は日本に頼らずに世界中で商売しないと生き残れなくなった。
グローバル企業への脱皮が欠かせない」

「(今年の)売り上げがあまりよくないのは、
ブームの反動もあるが、それ以上にこの1年間、商品政策を間違えた」

「必然性のないデザインものが多すぎた。
あくまでベーシックな服にファッション性があるのが、
我々の本来の立ち位置。
ファッション自体は我々には期待されていない。
商品計画をきっちりつくり、毎週、
生産調整をしていくという地道な作業を改めて徹底させる」

柳井さんの言う「我々の本来の立ち位置」こそ、
私の主張する「小売業のポジショニング」。

来年からの10年は間違いなく、
「ポジショニング競争の時代になる」

ディスカウントでも、新タイプの店舗でも、
「自分の立ち位置」が明確でない限り、
そしてそのポジショニングの正しさ、強さを信じていない限り、
うまくはいかない。

クリスマス・イブそのものを創出したイエス・キリストこそ、
当時の宗教界でユニークなポジショニングを築いた男だった。

<結城義晴>

2010年12月23日(木曜日)

天皇誕生日のクリスマス・イブ・イブと流通問題研究協会忘年会の玉生ホールインワン記念

今日は天皇誕生日の祭日。

イギリス人とフランス人は、
隣国に住むにも関わらず、
犬猿の仲。

百年戦争やバラ戦争など、
歴史的にも血を流しながら争いあい、
干渉しあってきた。

そのフランス人に広くアンケートがとられた。
「イギリスにあってフランスにない、よいことは何か」

いちばん多くて、圧倒的に多かった回答は、
「王室があること」

国際連合の常任理事国のなかでも、
皇室があるのはイギリスだけ。
ヨーロッパでも、フランスだけでなく、
ドイツ、イタリアなどにはない。
アメリカもロシアも、
中国、韓国など、日本の近隣の国にもない。
私は天皇制を積極的に支持するものではないし、
極端に忌避するものでもない。

今上天皇が喜寿の77歳を迎えられた。

しかし平成時代に入ってからの天皇誕生日は、
国民にとっては、クリスマス・イブの前の日、
すなわちイブ・イブの性格が強くなってしまった。

いいことか悪いことか、
いい悪いの価値観の外にある現象ではある。

さて、「鼠小僧だった海上保安官」。
その名は一色正春。
国家公務員法の守秘義務違反容疑で書類送検されたが、
不起訴の方向で決着しそう。
本人は依願退職した。

この件に関して、馬淵澄夫国土交通相ら24人に処分。

一人の人生が変わり、
国家としての判断機能や公務員のあり方という根本課題は残った。
処分が済めば終わりというわけではない。

毎日のように忘年会やクリスマス会。
今年はとても充実していた。
忘年会などでお会いするみなさんとのネットワークの重み、厚みに、
その成果が現れているみたい。

昨日は一日、日暮里で会議。
夕方、高層ビルの谷間から富士がみえた。
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カメラをズームして、
夕焼けの富士の姿を収めた。
冬至の富士。

一年で一番日が短い日の、
その陽が沈む直前の富士。
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その後、機械振興会館6階で、
社団法人流通問題研究協会の忘年会。

16時からのキーノート・スピーチは、
評論家の福岡政行さん。
残念ながら私は、遅れて参加。

最初のご挨拶は同協会副会長の玉生弘昌さん。
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玉生さんは、今年、
ゴルフでホールイン・ワンを記録。
この日の忘年会は、
副会長のホールイン・ワン記念祝賀会の様相を呈した。

ホールイン・ワンのプレゼントに文章が書いてある。
「さる2010年10月11日(体育の日)
富山県の大山カメリアカントリクラブの2番123ヤード・ショートホールで、
初のホールインワンを達成いたしました。
ピッチングウェッジで打った軽いドローボールが、
ピン奥50センチに落ちバックスピンでカップに入りました」

「秋空に 玉生きて 玉入る」<おそまつ (;^_^ゞ)>
すぐに玉生さんとツーショット。
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私も来年早々、ホールインワン保険に入ることにした。

さてその後は、
交流に次ぐ交流。
懇親に次ぐ懇親。

まずは流通問題研究協会会長の三浦功先生(左)と、
小川修司日本ボランタリー・チェーン協会会長。
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日本製粉㈱執行役員の内田宗司さん。
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㈱サンライズ社長の福寺誠一さん。
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そして㈱プラネット副社長の井上美智男さん。
私とともにカスタマー・コミュニケーションズ㈱の非常勤取締役。
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そのカスタマー・コミュニケーションズ㈱代表取締役社長の西川明宏さん。
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さらにカスタマー・コミュニケーションズ監査役の中川浩之さんと、
小川琴美さん。
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最後に大久保恒夫さん。
現在、㈱セブン&アイ・ホールディングス顧問。
ご存知、前㈱成城石井代表取締役社長。
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プラネットとカスタマー・コミュニケーションズに席巻されたような忘年会。
まあ、玉生さんのホールイン・ワンの記念だから、いいでしょう。
みんなで、あやかろう。

忘年会が終わって外に出たら、
東京タワーが見事に美しかった。
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大久保さんと、小腹がすいたので、
麻布台のスンドゥブを堪能。
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大久保さんはよく飲み、よく食べる。
体が強いし、内臓も強い。
心臓も気持ちも、強いが。

それがリーダーや経営者の条件であることは、
論をまたない。

<結城義晴>

2010年12月22日(水曜日)

行政府にこそイノベーションとマーケティングが必須と主張しつつ商人舎クリスマス&忘年会

今日は冬至。
日暮里のスーパーマーケット「マルマンストア」にも、
カボチャの煮付けがおいしそうに並ぶ。

昼が一番長い日なのに、
からりと晴れて、暖かい。

昨夜の激しい雨の後、
地上が洗い清められたうえに、
空気まで新鮮になった感じ。

いい日です。

明日から、日が長くなっていって、
それにつれて希望も湧いてくる。

さて、日経新聞のコラム『大機小機』。
コラムニスト与次郎氏が書いている。
今日の趣旨に、まったくもって賛成。

「人口の動向にかかわらず経済成長の鍵は
イノベーションにある」

そして言う。

「イノベーションの担い手は民間企業だけではなく、
政府も本来はイノベーションの重要な担い手だ」

私は農林水産省に対して、提言した。
「行政にマーケティングが必須である」

ピーター・ドラッカー先生の企業の経営論。
「企業経営において、
必要なことが二つある。
むしろこれしかないというほうが正しい。
マーケティングとイノベーションである」

2011年に向けて、行政府にこそ、
イノベーションとマーケティングが必要である。

さて昨日は、横浜市西区北幸の㈱商人舎オフィスに来客多し。
午後、宮田昇税理士事務所の宮田昇先生来社。
商人舎の顧問税理士。
今年度の見通しと来年度の指針の相談。
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お陰様で商人舎の経営、
3年目も適正の利益を、
余裕を持って出すことができる。

しかも「健全経営」。
宮田先生が顧問をしている会社のなかで、
「最も健全」とお墨付きをいただいた。

有難いこと。
心より感謝。

その後、フリー編集者の二宮護さん来社。
単行本の相談。
こちらも、いい話です。

先日の単行本とは、また異なる企画。
これもほんとうに有難い。
私自身が執筆することはできないが、
全面協力します。

二宮さんと話しているうちに、
高木和成さん、
杉山昭次郎先生、
続々と来訪。

狭いながらも楽しい我が家。
すぐにいっぱいとなって、
短い日が暮れた。

その後、商人舎から1分のフランスレストランに移動。
「シェ・フルール横濱」。
今年からこの店を借り切って、
「商人舎クリスマス&忘年会」
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最初のご挨拶は、
㈱商人舎最高顧問の杉山昭次郎先生。
今年からご就任いただいたスペシャル・メンバーのトップ。

「商業の現代化」のコンセプトをお話し下さった。
40人ほどのみなさんが集まってくださって、大盛況。
杉山先生のお話に耳を傾けた。
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その後、代表取締役・結城義晴のお礼のご挨拶。
これもご清聴いただいた。
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乾杯のご挨拶とご発声は、
西区北幸の隣組、㈱相鉄ローゼンの前社長・春日徹夫さん。
現在、同社顧問として悠々自適。
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春日さんも、私との出会いから話してくださって
とても有難かった。
励ましも受けた。
頑張ります。
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あとは懇親に次ぐ懇親。
商業経営問題研究会の面々。
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左から日中商会㈱常務取締役の謝智慧さん、
リテイルマネジメントオフィス代表の髙木和成さん、
㈱ケノス代表取締役社長の小林清泰さん、
それから杉山先生と藤田春雄さん。

私が『食品商業』編集長に就任した1989年から、
延々と続いている「名人会」の面々。
フィールドマーケティングセンター代表の小森勝さん、
㈱電通ストラテジック・プランニング局の土井弘さん、
㈱アイダスグループ代表取締役社長の鈴木國朗さん。
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日本フードサービス専門学院学院長の林廣美先生と、
㈱リテイルマーケティング研究所代表の浅香健一さん。
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㈱POP研究所代表の中山政男先生と、
立教大学大学院結城ゼミの猪股信吾さん。
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パーティの途中で、
當仲恵子さんへの花束のプレゼント。
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今年、當仲寛哲さんと鹿野恵子さんは、めでたく結婚。
私は勝手に「結びの神」を自称しているが、
自分の子供のことのようにうれしかった。
今年嬉しかったことのベスト5に入るかもしれない。
だからお祝いしたかった。
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おめでとう。
お幸せに。

「幸せになることに努力せよ!」

途中、プレゼント交換会が延々と繰り広げられ、
参加者全員に一言ずつスピーチしていただいた。
商人舎はなんでも全員参加。
それがモットー。
ありがとうございました。

商人舎スぺシャル・メンバーのお二人。
エグゼクティブ・プロデューサーの松井康彦さんと、
チーフ・ツアー・コーディネーターの鈴木敏さん。
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最高顧問の杉山先生とこのお二人のほかに、
特別顧問の萩原政利さん、
海外特別顧問の浅野秀二先生、
そしてエグゼクティブ・ディレクターの川勝利一さん。
6人のみなさんが、商人舎の趣旨にご賛同くださって、
スペシャル・メンバーとして事業活動にご協力下さる。
よろしくお願いします。

中締めは、ブルーチップ㈱専務取締役に昇格した宮本洋一さん。
宮本さんの昇進を参加者全員の2011年につなげたいと考えた。20101222134826.jpg
宮本さんは、同行した常務取締役の松浦克幸さんと、
取締役営業担当の伊藤義明さんもご紹介。
チームワークの良さがブルーチップの社風。

三本締めで、見事に決まった。

参加者全員が途中で帰ることのないクリスマス&忘年会。
私は心から感謝した。

夕方から降り始めた雨で、
3年ぶりの皆既月食を見ることができなかったが、
3年目の商人舎は順風満帆そのものだった。

心から感謝。

<結城義晴>

2010年12月21日(火曜日)

11月の百貨店&コンビニ販売統計の明暗とサイゼリヤ正垣泰彦の「人のために、正しく、仲よく」

今日の夕方5時ごろの皆既月食。
北海道を除いて、全国的に雨模様。

残念ながら、見ることができなくなりそう。

ならば、ジョン・レノンではないが、
「想像してごらん?」

さて昨日は重要な数字が発表された。
百貨店とコンビニの11月販売統計。
最大の大型店業態と最小の小型店業態。

1972年まで三越が日本小売業の王者だった。
それを抜いたのが総合スーパーのダイエー。
当時、SSDDSなどと称した。
「セルフ・サービス・ディスカウント・デパートメント・ストア」
言い得て妙だが、これがこの業態の本質を表している。

2000年に、そのダイエーの売上高を抜いたのが、
コンビニのセブン-イレブン。

かくて1店当たり最大面積の業態から最小面積の業態へと、
日本小売業の主役は移り変わってきた。

11月は明暗が分かれた。
2カ月ぶりに暗の百貨店と明のコンビニ。
百貨店は地方店舗が低調で、2カ月ぶりに前年割れ。
コンビニはタバコ販売額が回復基調で、2カ月ぶりに前年クリア。

その全国の百貨店91社・261店舗の11月売上高は、
前年同月比マイナス0.5%で5556億円。
総店舗面積は2.9%減って643万7641㎡、
総従業員数も6.2%減って9万3570人。
面積が減り、従業員が減る。
売上高が減ることよりも、
社会的には大きな意味がある。

ただし、明らかに衰退業態の百貨店。
「衰退業態は立地が限定されていく」
これ、結城理論のひとつ。

百貨店は大都市圏型の業態。
だから地方都市の店舗が落ち込むのは当然。
衰退業態は立地が限定されるからだ。

主要カテゴリー別で増えたもの。
家庭用品が2カ月連続増。
婦人服・洋品、その他家庭用品、菓子2カ月連続増、
家電5カ月ぶりの増、
化粧品24カ月ぶりの増。

一方、コンビニの既存店はプラス1.1%。
客数もプラス1.9%。
しかし平均客単価は依然としてマイナス基調で0.8%減。

店舗数はプラス1.4%の4万3291店、
客数はプラス3.3%の11億4952万人。

そして重要な平均客単価569.2円で、これもマイナス0.2%。
いつも言うが、コンビニの平均客単価は、
日本人の生活価値観の最重要数値。
なぜならコンビニを利用しない日本人はほとんど存在しないからだ。
まさにエブリデー・ストア、エブリボディ・ストア。

そのコンビニの焦点は、増税したタバコの動向。
急減した販売金額は回復基調。
高額になっても、本当のタバコ愛好者は減らない。

誠に過激なたとえだが、麻薬はいかに高額でも、
中毒患者は無理をしてでも購買する。
タバコはその軽症の商品。
だから高くなっても、
止められない者はその高額品を買い、
だから数量ベースでは大きく減り、
金額ベースでは元に戻る。

そのコンビニの11月の商品構成比。
日配食品が5.5%プラスの34.4%、
加工食品が4.4%プラスの30.1%。
非食品だけ1.0%マイナスの31.0%、
サービスも3.4%プラスの4.5%。

弁当・惣菜は日配食品に含まれる。
これが中食の代表で、
外食産業と競合している。

百貨店とコンビニの明暗。
12月がどう推移しているか。
問題はこちらだ。

さて昨日は、午前中、
東京・秋葉原で単行本の打ち合わせ。
4月に発刊される予定。
ご期待ください。

その後、立教大学大学院結城ゼミの渋木克久さんと、
埼玉県東武野田線野田市駅で待ち合わせ。
外食産業の雄、㈱サイゼリヤ吉川本社を訪問。
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吉川工場が併設されている。
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1階の階段を上がると、
ラファエロ・サンティの「アテナイの学堂」。
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ここでサイゼリヤ代表取締役会長の正垣泰彦さんに面会、
の予定が、行き違い・勘違いで、東京・浜町の東京Officeへ。
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渋木さんは「外食産業の海外戦略」を研究している。
ベースはジョン・ダニング教授のOLIパラダイム。
そのケーススタディとして、
世界のマクドナルド、日本からは吉野家とサイゼリヤを研究。

サイゼリヤは創業者の正垣泰彦会長自ら、
ヒアリングに応じてくださった。
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インタビューは夕方5時過ぎから始まって、7時近くまで。
1時間の予定が、正垣さんのご厚意で、
2時間近くまで延長して、盛り上がった。

サイゼリヤは、売上高994億円(2010年8月期・連結)、
店舗数888店舗(国内842店 海外46店/2010年8月期・連結)

「人のために、正しく、仲よく」
この理念が海外戦略にも中国戦略にも貫かれている。
正垣さんのモットー。
だから中国・上海の1号店でも、
「中国の人たちに喜んでもらいたい」というのが出店の動機だった。

しかし最初はまったく売れなかった。

そこで正垣さん自ら意思決定し、
7割引きの価格を出した。
貧しかった中国人にレストランに来てもらうためだ。
原材料も現地調達。

やがてお客たちも、働く人たちも、
「正しく、仲よく」を理解し、信じ始めた。

1日100人の客数だった店が、
3000人にも増えた。

反日デモのときにも、
デモに参加する人たちが、
サイゼリヤの店に集まり、
サイゼリヤの店にもどってくるほどになった。

「あそこの店は安くておいしい」
その実現だけを考えてビジネスをしてきた。

渋木さんのインタビューが終わりに近づくと、
故渥美俊一先生の思い出、
チェーンストア経営の理論、
アメリカ流通業の話題、
オーストラリアのエピソードなど、
テーマはどんどん広がった。

久しぶりに、私は同志と巡り合った気がして、気分が良かった。
そして固い握手。
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「不況は商人を鍛える」
倉本長治は言った。

しかし海外進出も商人を鍛える。
ドラッカーの言う「企業の目的」は「顧客創造」である。
中国に顧客をつくる仕事は、
サイゼリヤにふたたび、その原点を教えた。

私は、思った。
来年は、もう一度、原点に戻る年だと。

正垣さんに、心から感謝。

<結城義晴>

2010年12月20日(月曜日)

皆既月食、冬至、クリスマス・イブまでのロマンティック週間

Everybody! Good Monday!
[vol51]

2010年という区切りのよい年もあと2週間。
今年51回目の週です。

10年の区切りのことを、
ディケードという。
decadeと綴る。

意味は、「10個1組, 桁, 歳代, 一昔, 十年」など。
20世紀は、西暦1901年から始まって、

2000年に終わった。
その間に、10のディケードがあった。
10×10で、100年。
100年を1世紀という。

2001年から始まった21世紀は、

今年で最初のディケードが終わる。
今年がどうだったかを考えることも大事だが、
この10年がどうだったかを顧みることも大切。

自分の10年、
会社の10年。
店の10年。

私にとって、この10年は、
まさに「蛻変」のディケードだった。


2001年には、
㈱商業界の取締役編集担当兼『販売革新』編集長だった。
2002年に同専務取締役編集統括に就任し、
2003年には代表取締役に昇格した。
そして2期4年後の2007年に、退任。
2008年に㈱商人舎を興した。
2008年からはコーネル大学RMPジャパンが発足し、
副学長に就任。
2009年からは立教大学大学院MBAの教授になった。

雑誌や書籍をつくり、販売する仕事から、
人に教える仕事に変わった。

しかし、「なに」をつくっていたか、
「なに」を売っていたか、
そして「なに」を教えているか。

その中身は変わっていないし、
有難いことにむしろ、
発展・進化していると思う。
そんな10年間だった。

だからこれからの10年間は、
きっとこうなるに違いないと、わかる。
十年一昔というが、
まさにこの10年が、私にとって大事だった。
それまでの50年はみな、
この10年のためにあったようにも感じられる。

さて今週は、
ロマンティックな1週間。

まずは明日21日の夕方17時
3年ぶりに、
日本列島ではほぼ全面的に、
皆既月食を見ることができる。
店で働いている人は、
それどころではないかもしれないが、
皆既月食が日本を覆っていることは、
知っておいていい。

人びとの気持がロマンティックになっている。
そして明後日22日水曜日が冬至。
一年で昼間が一番短い日。

ただし、何度も言うから耳タコかもしれないが、
夕方に日が暮れるのは少しずつ遅くなっている。
朝の日が昇るのが遅くなっていて、
トータルすると、冬至の日が一番、昼が短い。
冬至の日には柚子湯に入る。
私はこれを大事にしている。

だからスーパーマーケットでは、
明日は柚子が必須のアイテム。

カボチャも食べる。
大好きというほどではないが。
これも大事。
カボチャも必須。
皆が買うわけではない。
こぞって買うわけでもないだろう。
しかしそこに、その店の色が出る。
私は、お客様の暮らしに、
細かく、丁寧に応えていくような色をもってもらいたいと思う。
私がトップマネジメントになったら、
そんな店を創る。
そんな会社を創る。

そして、23日天皇誕生日。
この日はクリスマス・イブ・イブ。

そして24日の金曜日がクリスマス・イブ。
金曜日がクリスマス・イブなんて、
ロマンティックでよいものだ。

一般のサラリーマンは、
「今日の仕事が終わり、
今年の仕事がほぼ終了。
あと1週間で今年が終了」
その家族も同じ気分。

小売流通業やサービス業は、
逆にこの時期が書き入れ時。

顧客の気持ちになれば、
ほっと一息つく12月24日の夕方。
クリスマス・イブが訪れている。

ついでにこの日は、
25日土曜日の前倒しの給料日。

このニーズに対応する。
ロマンティックな顧客に、
ロマンティックに応える。
そのうえ懐は暖かい。
いいもんです。

そして土曜日25日、日曜日26日。
一気に年末の「際モード」。

しかし消費と購買の傾向は、
ほとんど普段と変わらない。
ここでも辛抱辛抱。
クリスマス商材は、この日、
ギリギリ消費で売れる。

いかがだろう。

今週1週間をイメージしてみる。
シミュレーションしてみる。
ロマンティックで、心温まる7日間を、
みなさんの顧客は過ごすことになる。

小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。

私が言い続けている、
日本消費者の最大公約数的なニーズ。
菅直人首相は「最小不幸」を言うが、
私は最大公約の幸福を訴えたい。
それが小売流通業・サービス業の仕事、役目。

小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。

それが今週、
私たちが自分の顧客に提供するものの目標。
目標を掲げたら、それを実現させねばならない。

今月の商人舎標語。
「実践躬行」

今年最後から2番目の週、
是非とも「実践躬行」してもらいたい。

今週の私のスケジュールは、
比較的おだやか。
忘年会シーズンは続くが。
その間に、勉強し、人に会って、
単行本の執筆準備と結城ゼミ生の論文のチェック。

今週も、「今日も一日、優しく、強く」。

では、
Everybody! Good Monday!

<結城義晴>

2010年12月19日(日曜日)

ジジの「さらば寅年」[2010日曜版vol51]

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ヨコハマは今日も、
あたたかい。

こはるびより。

今年の夏は、
ひどく、あつかった。

だからでしょうか。
ことしの冬は、
こはるびよりの日が、
よくあります。

ネコとこはるびより。
よく、にあう。

ジジです。
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でも、すこしずつ、
なにかが、
かわってきた。
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なにかがかわる、というよりも、
だれかが、やってくるかんじ。
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そういえば、トラくん。
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ことしは、
おせわに、
なりました。
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キミたちの年でしたからね。
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らいねんは、なに年?

でも、ほんとうに、
ごくろうさまでした。
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キミたちは、ただ、
すわっていただけだろうけれど。

そうです。
だれかがやってくるかんじの、
だれかというのは、
あたらしい年です。
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もうすぐ、
そこまで、
きています。
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トラくんたちと、
あたらしい年がやってくるのを、
まっていましょう。

<『ジジの気分』(未刊)より>

2010年12月18日(土曜日)

「命令好き」「3分間マスター」志向を廃し「脱グライダー」を目指せ!

あっという間に週末。
これを今年、50回繰り返し、
あと2回と迫った。

ギリギリ消費の傾向は、
ますます激しくなる。

クリスマス商戦も、24日、
ほぼ1日中通常の売れ行きで、
夕方からどっとクリスマスの商品が売れていく。

年末31日も同様。

今年の歳末商戦、
商人たちに辛抱競争を強いているようだ。

もちろん、身も蓋もない話ではあるが、
もう既に勝負は決している。

12月商戦は1年の総決算。
お客様は、1年間、
あなたの店、あなたの会社を見てきて、
その最後の決断として、
歳末にあなたの店を訪れ、
あるいはあなたの店から去る。

じたばたしても、もう遅い。
やれることだけやり遂げよう。

40歳代に、私は少年ソフトボールの監督をしていた。
試合の後半になると、いつもいつも同じように言って励ました。

大敗しているとき。
「試合を投げるな、あきらめるな、楽しめ」
大勝しているとき。
「徹底的にやっつけろ、
相手が顔も見たくないと思うくらいに叩きのめせ」

拮抗しているとき。
「練習のつもりでやろう、
一人ひとりの役割を丁寧に果たそう」

やがて私のチームは、
「あの縦じまのユニホームは見たくない」
こう言われるようになった。

さて、朝日新聞のコラム『経済気象台』
私の好きなコラムニスト遠雷氏の登場。
タイトルは「ビジネス書と賃上げ」

書店にあふれるビジネス書は、
「自己啓発やスキルアップの本」、
「会社が飛躍的に発展するかのような経営指南の本」。

しかも「『…しなさい』という命令形と『3分で…』という短時間型が圧倒的だ」。

こんな本ばかりで、
「『いいかげんにしなさい』といわれないのだろうか」。
遠雷氏は嘆く。
「それとも古典落語と同じで、
読者は同じ話を聞きたいのだろうか」。

これは確かにある。

命令調のほうが好まれる。
たとえ間違っていても、
行動提起してもらうことを喜ぶ。

3分間でできそうなことが求められる。
たとえ、間違っていても、
すぐにできそうなことの方が選択されやすい。

私は外山滋比古さんに学んで、
「脱グライダー」的な考え方をお勧めしている。

それは「命令」してもらったり、
子供だましのプラモデルづくりをするような、
安易な仕事ぶり、生き方を否定するものだ。

遠雷氏は、労働組合による賃上げに対してもモノ申す。
「生活改善方法が遠くなったことが、
個人による自己啓発の努力を促している一因だ」

「勤労者はもっと怒ってもよいのだ」

「仲間をつくり集団で争うことも、
時にはビジネス書を読むより健全だ」

「賃下げが消費意欲の減退を招き、
それが物価の下落を促し、
そのことがまた賃下げへとつながる負の循環が、
断ち切られるのはいつだろう」

よく働き、よく稼ぐ。
賃上げもできるように、
よく働き、よく稼ぐ。

そのためには「脱グライダー人間」が増えることだ。
2011年もこれは変わらない。

さて昨日は、午前中に、
㈱髙山の常務取締役・髙山時光さん来社。
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菓子問屋として日本第3位の髙山は、
1923年創業で、戦前は菓子小売チェーンストアだった。
戦後、菓子卸売り業に転換し、
現在、年商1900億円直前。

髙山さんはその4代目。
今年の商人舎USA研修会に参加してくれて、
その時に私が教えたこと、
自分で考えたこと、
さらに学んだことを、
自らまとめた。
そして、質問に来た。

2時間近く、私は全力で答えた。

髙山さんが、脱グライダー人間になれると見立てたからだ。

卸売業マンとして「荷物担ぎ」から初めて、
今、将来ビジョンを策定する。
自分の会社はもとより、
食品産業を背負ってもらいたい。
そんな志を持ち続けてほしい。

そう思って、
本にサインした。
「鳥の目 虫の目 魚の目 心の目」

その後夕方、東京・表参道。
博多料理「なぎの木」。
立教大学大学院結城ゼミ2009年度卒業生の忘年会。
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左から紅一点・星山朋子さん、
ゼミ長の名古屋文彦さん、
私の右が柿沼将人さん、
いちばん右が田村直純さん。
みんな元気で活躍中。

もうひとり高橋修一郎さんは、
仕事を抜けだして参加し、
早々と仕事にもどって行ったため、
写真におさまれず残念。

苦しかった修士論文や調査研究レポート執筆の思い出話に、
花が咲いた。

しかしゼミ生が仕事で大活躍し、
その忙しい中をぬって、忘年会を開いてくれる。
うれしいことだ。

みんな悩める「脱グライダー人間」。
それでよろしい。

「命令好き」や「3分間マスター人間」では、
人生がつまらなくなる。

<結城義晴>

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