日本の百貨店とコンビニ。
かたや最初の業態にして、最大面積の店舗の小売業態。
かたやもっとも成長著しい業態にして、最小面積店舗の業態。
その百貨店とコンビニの2010年の総売上高が、
それぞれの協会から発表された。
日本百貨店協会の2010年の売上高は6兆2921億円。
これは前年同期比マイナス3.1%。
一方、日本フランチャイズチェーン協会コンビニ部会10社の総年商。
全店ベースの年間売上高は8兆0175億円、プラスの1.4%。
既存店ベースでは7兆3947億円で、こちらマイナス0.8%。
10社の内訳は、セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、
ファミリーマート、サークルKサンクス、
そしてデイリーヤマザキ、ミニストップ、
さらにココストア、スリーエフ、セイコーマート、ポプラ。
それ以外にもコンビニはあるのだから、
8兆1000億円か、8兆2000億円か、8兆5000億円か、
コンビニの総売上高は商業統計の発表を待つしかない。
百貨店協会には全企業が参加しているから、
これは商業統計を待つまでもない。
コンビニは新規出店分が0.6ポイント、
総売上高に貢献している。
百貨店はご存知のように、閉店が相次ぎ、
既存店の統計を出す必要がない。
明暗くっきりの最大店舗小売業態と最小店舗業態。
この間に様々な業態が社会的機能を見出し、
それが分化してフォーマットが出現している。
さて昨1月20日木曜日は、コーネル・ジャパンの湯河原合宿2日目。
朝から温暖な日差しが中庭にさしこむ晴天。
私たちの会場は大研修室。
廊下にも朝日が溢れている。
朝食を取ったあと、8時30分から第一講座。
昨夜は11時過ぎまで懇親会だったが、
一人の遅刻者もなく全員がそろう。
第一講義の講師は大久保恒夫さん。
テーマは「スーパーマーケットの経営効率と生産性」。
大久保さんはご存知、㈱セブン&アイ・ホールディングスの顧問であり、
㈱成城石井前社長。そしてコーネル・ジャパン伝説の第一期生の一人。
今日の講義を最後に、しばらく講演活動を自粛する。
それだけに力のこもった素晴らしい内容だった。
データは実行のためのツール。
実行計画目標が予算であり、
その経営管理に必要なデータとその見方。
同じ帳票を見、問題を共有し、行動を具体化する。
データでのコミュニケーションの重要性などを
これまでの経験をもとに語ってくれた。
第二、第三講座の講師は當仲寛哲さん。
USP(Universal Shell Programming)研究所所長。
テーマは「情報システムとデータ分析、その基本と応用」
システムとは、会社を維持・発展させる「仕組み」であり、
経営者はもっともシステムを理解している。
コンピュータは単なる道具(記録+電卓+電話)にすぎない。
経営者の仕事は、会社のシステムに、
「コンピュータを、何の目的で、どこに導入したら、何がよくなるか」を、
考え、判断すること。
その視点において、経営者に必要なコンピュータリテラシーとは何かを、
はじめに解説。
そして、流通・小売業の情報システムとは、商売の基本となる
単品管理の実現と生データの整理・蓄積にあると強調。
優れた情報システムをつくるための考え方、
内製化の意味と効用、採用技術の選び方、
技術者の育成と活用の仕方などを分かりやすく説明してくれた。
事例を紹介しながら、
次々に情報システムの誤解を正していく。
第二講義を終え、全員で昼食。
第三講義は、単品管理の実現に必要な情報システム化のポイントの話のあと、
いよいよLinuxのコマンドを使った、デモンストレーション。
あるスーパーマーケットの1カ月間の売上げ明細データを、
集計・加工していくという内容。
もちろん担当は、今年も鹿野恵子さん。
3000万のPOS明細データを、
20ほどの簡単なコマンド入力で、次々に集計していく。
3年目ともなると鹿野さんのパソコン操作も、説明も慣れたもの。
3000万のデータ処理が、4万円のパソコンで
わずか16秒で処理できるという実演に、3期生も驚きの表情。
當仲さんの三期生への講義は、これまでで一番分かりやすかった。
講義を終えた當仲さんと感謝をこめて握手。
合宿最後の第四講義の講師は、宗像守。
「改正薬事法によって変わるマーケットとマーチャンダイジング」
宗像さんは日本チェーンドラッグストア協会事務総長であり、
㈱日本リテイル研究所所長。
改正薬事法の概要説明から始まって、
セルフ・メディケーションの推進、
さらにヘルス&ビューティケア・マーケットの成長のなかで、
ドラッグストア産業10兆円構想まで、
一気に語ってくれた。
ドラッグストアは2000年に2兆6628億円だった業界が、
2009年5兆4430億円への成長を遂げ、
2010年には5兆6000億円マーケットとなった。
2015年には10兆円を構想する。
それは狭小商圏タイプが中心となる。
まさにドラッグストアにはフォーマットの時代がやってきている。
いや、ドラッグストア産業のリーダーたちは、
フォーマットに時代を自ら演出している。
その結果、コンビニのように、
ドラッグストアが配置されるというイメージが描かれている。
宗像さんはこの、一種の社会革命を推進している。
百貨店、コンビニ、そしてドラッグストア。
あたらしい時代はもう、やってきている。
<結城義晴>