結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年02月24日(木曜日)

日経MJ記事のサミット社長田尻一「情緒的価値の訴求」と元社長・荒井伸也「作演システム」と結城義晴の解釈

ニュージーランド・クライストチャーチの地震。
心よりお見舞い申し上げます。

私のSIALの友人ピーター・フィリップさんは、
元出版社オーナーで消費産業ジャーナリスト。
オークランドに住んでいて大丈夫なようだが。

ところでニュージーランドの首都はウェリントンで、
オークランドではなかった。
この地震であらためて勉強。

それからフィリップさんと話していてよくわかるが、
ニュージーランドの人々は美しい英語を話す。

オーストラリア人は訛りが激しい。
比較的に若くして亡くなってしまったが、
バリー・フラナガンさんも、
食品流通ジャーナリスト。

大男で、訛りはすごかった。

ニュージーランド人は訛らない。
だから日本人もニュージーランドに語学留学する。

それにしても日本のレスキュー隊の実力を、
今こそ発揮して、人命救助してもらいたいし、
その力を世界に示してもらいたい。
お願いします。

さて、今日発売の『週刊文春』。
週刊誌にしては8ページの大きな特集を組んだ。
「『大合併時代』生き残りウォーズが始まった!」

この中にちょっとだけ、
私のインタビュー・コメントが出ている。
小売業・流通業を体系的に話したが、
こういった週刊誌が好きなのは「派手な話」。
それも仕方ない。

だから小売流通産業で最も派手な業態の、
派手な合併予測話のコメントの一部だけ、
拾って載せた。

まあ、それも仕方ない。
でも和田泰明記者は、
よく書いてくれた。

一方、日経新聞の会社人事欄。
大久保恒夫さんが、
セブン&アイ・フードシステムズの副社長に決まった。
正式には取締役兼執行役副社長。
3月1日付。

頑張ってください。
変わらぬ応援をします。

さて、今週月曜日の日経MJに気になる記事。
もう少し丁寧な解説が必要な記事ではある。
「商品の販促 店舗に裁量」
見出しにはこうあって、サブタイトルは、
「サミット 本部主導の均一運営から脱却へ」

サミット㈱社長の田尻一さんは、
「情緒的価値の訴求」を訴え続けている。

私の持論のノンコモディティ商品は、
二つに分かれる。

農業型商品と情報型商品。
後者に「情緒的価値」「感覚的価値」が含まれるし、
これが実に重要な「位置」を占める。

そう「ポジショニング」に関する役割を果たす。

コーネル大学RMPジャパンでは、
ポジショニングの要素を具体的に5つあげる。
この中には、
ノンファンクショナル・ベネフィットが含まれる。
まさに機能的価値の反対の概念。
これも情緒的価値。

田尻さんがこれからのサミットに必要だと考える政策だ。

しかしこの日経MJの記事は、
そんな情緒的価値を提供するにあたって、
「店ごとに最適な販売促進策を考えさせ、
試食などで顧客に積極的に声をかける」とある。

これがサミットが、
「効率を追求してきた従来の手法を転換」することだという。

このあたりに、記者の理解の浅さがある。

この記事では、次の表現がある。
「本部主導の効率的な店舗運営は、
1994年から2001年まで
社長を務めた荒井伸也氏の信条でもある。
それがサミットらしさであり、
同社の強みとなっていた」

本部主導ではなく、
「本部の役割が『作』で、
店舗の役割は『演』」

本部と店舗が対等であること。
それが「作演システム」の本質だ。

本部が「作曲」し、店舗が「演奏」する。
本部がシナリオを「制作」し、店舗が「演技」する。

情緒的価値や感覚的価値は、
本部の「作」と店舗の「演」の両方のハーモニーによって、
初めてプロフェッショナルな音楽や芝居となって表現される。

現在のサミットが志向していることも、
大筋は当然ながら本部が企画する。

しかし店舗の店長をはじめとするメンバー、
つまりチーフや部門社員やパートタイマーによって、
店ごとに違った味付けをされて、
店らしさが出る。

サミットの店店は、
コンテスト競争で、
それを競う。

良い事例があれば、
水平展開する。

コンテストに参加しているから、
ベンチマークすべきケースかどうかがわかる。

だから水平展開が速い。

それらの一連の活動が、
結果として情緒的価値を創造する。
私はそう考える。

記事は続く。
「これまでサミットは本部が販促活動の内容を決めて、
店舗はそれに従うスタイルだった」
これも、認識は違う。
このブログの読者にはおわかりだろう。

そんなことはないと思うが、
もしかしたらサミットの内部でも、
「作演システム」の考え方が、
風化しているのかもしれない。

「作」と「演」との重さは、
企業によって違う。
時代によっても違う。

しかし「作」と「演」の役割は、
チェーンストアである限り、
なくなりはしない。

私はクラシックとジャズほどにも異なる、
と書いてきた。

クラシックでも、指揮者と演奏者が違えば、
まったく異なる音になる。

コモディティ化現象が進み、
商品が同質化してくると、
演奏者の役割はさらに重要になる。

この記事の本質は、
ここにあるのだと思う。

そしてこの記事は、こう終わる。
「試食販売など販促の巧拙は
従業員の能力に負っている部分が多く、
標準化が難しい。
能力底上げのための仕組み作りも、
必要になりそうだ」

記者によるとサミットの現場は、
能力が低いらしい。

日本でレイバー・スケジューリング・システムを、
完ぺきにマスターしているのは、
サミットの社員である。

それは世界に誇ることのできる「仕組み」であると、
私は考えている。

記者はここでも「標準化」を、
「画一化」と混同している。

もちろん現在のサミットに、
もう一段、レベルの高いアクションが、
求められていることも確かだろう。

そのために店舗からの発想、
現場からのアイデアは、
もっともっと発せられ、
活かされてしかるべきだろう。

サム・ウォルトンが進める6つのこと。

第1、「1度に1店ごとに検討せよ」
<Think one store at a time!>

第2に、「意思疎通せよ!意思疎通せよ!意思疎通せよ!」
<Communicate!Communicate! Communicate!>

第3に、「地に耳をつけよ」
<Keep your ear to the ground!>
私はこれを「小売りの神は現場にあり」としている。

第4に、「現場に責任を、そして力を与えよ」
<Push responsibility-and authority-down!>
”authority”は権限ではない。
力である。

第5に「アイデアを沸き立たせよ」
<Force ideas to bubble up!>

そして第6に、「組織の贅肉を落とせ、悪しき官僚化と闘え
<Stay lean! Fight bureaucracy!>

サミットの改革。
それは絶対に、現場から、
発想されたものであるに違いない。

この記事はそのことを物語っているのだと思う。

さて先ほど、今年度の結城ゼミの山本知己さんから、
電話が入った。
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科
「ドクターコースに合格しました!」

「おめでとう」。

そして来年度の結城ゼミのメンバーも確定しつつある。
<3月12日・13日、キックオフ合宿です>

みんな頑張れ。
私も頑張る。

「最初になすべきことから始めよ」
今月の商人舎標語。
明日からアメリカ。
私はアメリカで頑張る。

<結城義晴>

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