2月25日金曜日、午後2時成田空港集合。
5時の便でサンフランシスコに発つ。
ちょうどそのとき、新日本スーパーマーケット協会で、
1月のスーパーマーケット販売統計調査の速報値発表。
総売上高は対前年比プラス1.8%で、
7464億3551万円。
1月の他の業態の動向は、
百貨店マイナス1.1%、
総合スーパーマイナス0.1%、
コンビニはプラス5.1%。
やはりスーパーマーケットは安定しているというか、
百貨店や総合スーパーとコンビニの間。
ただし百貨店の食料品は0.1%のマイナス、
総合スーパーの食料品もマイナス0.4%、
スーパーマーケットはプラス1.8%。
これをどう考えるか。
内訳は、食品合計がプラス2.2%の6312億7000万円。
非食品合計はプラマイ0%の1151億6552万円。
百貨店協会の家庭用品、
日本チェーンストア協会の総合スーパーの住関連品、
日本フランチャイズ・チェーン協会のコンビニの非食品、
揃って、前年対比アップ。
スーパーマーケットは非食品が動いていない。
しかし昨年の10月以降、非食品はずっとマイナスだった。
だからプラマイ0でも健闘したということ。
インフルエンザや大雪対策商品の影響で、上向いた。
一方、生鮮3部門はプラス2.4%の2407億4867万円。
そのうち青果が良くて、プラス3.9%の930億1251万円、
水産はプラス0.5%で、706億0524万円。
畜産はプラス2.4%、771億3093万円、
惣菜もよくて、プラス2.6%の652億7699万円。
そして一般食品はプラス2.0%の3252億4434万円。
すべての項目で対前年比を上回った。
「私が発表するたびに前年を上回る数字が出ている。
とても発表しやすい」
笑顔で語ったのは、
新日本スーパーマーケット協会の増井徳太郎副会長。
1月の数値で特徴的だったのは、水産。
4月にスーパーマーケット統計調査の発表を開始してから
ずっと前年比マイナスだった水産が、
ここにきて、ようやくプラスに転じた。
しかし、目先の不安感は増大している。
不安の種は「原材料価格の高騰」。
食用油、小麦粉、砂糖、コーヒーなど、
投機マネーが関連しているからだけではない。
最近これらを大量に消費するようになった新興国(中国やインドなど)に、
原料が流れているからだ。
需要と供給の関係で、高値がつく。
しかしこればかりは日本がいくら金を積もうが、
解決できない問題。
国内でも海外でも、
食糧に対する不透明感が増している。
続いて、今月のゲストスピーカーは
㈱あおきの榎本太治代表取締役社長。
河津桜で有名な静岡県河津町に本社を置く。
静岡の東部地域を中心に11店舗を展開している。
ただ、地方の衰退を肌で感じたあおきは、
4年前に山越えをして東京に進出した。
それがららぽーと豊洲に出店した噂の「フードストアあおき東京豊洲店」。
順調に売上げを伸ばしている。
あおきは個店主義を貫いている。
店長自ら経営者の感覚を持ち、
お客のニーズにあった品揃えをする。
1店舗に3~4台の冷蔵トラックを置き、
各店舗ごとに青果や鮮魚を市場に買い付けに行く。
すると、粗利益率が高くなる。
しかし、あおきでは特売商品が売れない。
なぜか。
お客はほぼ100%、
何を買うか決めて来店している。
しかもそのうえで買い回りをしている。
お客の中に、
位置づけがなされている感がある。
「安い商品は他のスーパーマーケットで、
良い商品はあおきで買う」
このためか粗利益率は1.5%高くなっている。
そんなあおきでも「先行きは不安だ」という。
今回の原料値上げは、
今までの値上げとはレベルが違うからだ。
しかし値上げに対応するには、
品揃えを多くすること。
「スーパーマーケットに大事なのは
とにかく“人と商品”。
それが原点」
榎本さんは何度も何度も、
“人と商品”を強調した。
さて商人舎企画「春のUSAスーパーマーケット特別視察研修」。
今回はスーパーマーケット4社のトップ・幹部が参加するクローズド企画。
総勢25名のツアーとなる。
成田空港会議室でいつもの通り、結団式。
参加の皆さんに、
出来上がったばかりのテキストを渡して、
今回のツアーの目的とスケジュールをガイダンス。
「ポジショニングとは何かを学ぶ研修会。
この4社の化学反応で、必ずや、
それぞれに新しいフォーマットが創造されるに違いない」
私の直感。
それを率直に語った。
この直感は、当たる。
参加していただいた企業トップの方々から、
出発に先立ち、一言ずつご挨拶いただく。
はじめに㈱阪食社長の千野和利さん。
阪食からはグループ企業を含め6人の参加。
次に㈱サンシャインチェーン本部社長の川崎博道さん。
サンシャインからは4名が参加。
㈱エブリイ社長の岡崎雅廣さん。
同じく4名の皆さんとご一緒に参加。
そして最後に㈱ハローデイ社長の加治敬通さん。
笑いを誘いながら挨拶してくれた。
ハローデイからは7名の参加。
商人舎ツアー恒例。
無事成功を祈念してビールで乾杯。
いよいよ出発です。
9時間のフライトでサンフランシスコに到着。
フライト中も原稿執筆で、
やや疲れ気味。
でも、楽しみだ。
専用バスの前で、
阪食常務の松元努さんと㈱エブリイの皆さん。
早速、サクラメントに向けてバスで移動。
雨の予報が覆って、よい天気になった。
少し肌寒いが、サンフランシスコのダウンが美しい。
金門橋を渡り、10分間だけ展望台で観光。
サンフランシスコ湾は素晴らしい眺めだった。
一服組も満足げ。
名残惜しい景色だが、いざサクラメントへ。
皆を乗せたバスは一路、
ナゲット・マーケットの待つサクラメントへ。
GO! GO!
今回の事前テキストの冒頭に載せた。
「模倣と創造」
1
あなたには何か、成功体験がありますか。
そのサクセスストーリーを思い浮かべることができますか。
そして次の瞬間、それをすべて捨て去ることはできますか。
しかしなぜ、過去の成功体験を捨てなければならないのか。
時代が変わり、環境が変化したことに対応しなければならないからか。
あるいはそれが経験法則の列に加えられるべき成功体験ではなかったからか。
2
「ベストプラクティス」とは、最良の実践成功例を意味します。
だからベストプラクティスは常に、必ず、
その手法を、さまざまな他者から学びとられてしまいます。
学ぶ側は、最良の実例と同じ手順を踏むことで、
同じような結果を享受することができます。
ノウハウの学習と蓄積によって、
時間短縮と経費削減の成果が生まれます。
しかし、成果獲得の結果主義に頼りきってしまうと、
今度は停滞と後退が訪れます。
突き詰めればそれは、模倣だからです。
模倣には、失敗の経験がありません。
創造の苦しみもありません。
百を目指している限り、決して千にも一万にもならないのです。
3
それでは私たちはなぜ、歴史が好きなのでしょう。
なぜ歴史を学ぶのでしょう。
そこには経験的法則と進化の軌跡が存在するからです。
4
そうです。
まず、現状を否定してかかる。
現状を肯定的に支えている成功要素を拒否してみる。
同時に、身近な事例の歴史に学び、小さな経験法則を探る。
すべては現状を客観化するために、
過剰に現実を評価するところから始まる。
そのうえで、模倣によって、スピードアップとコストダウンの改善を果たす。
創造によって、市場の拡大と技術の革新を図る。
5
模倣と創造。
イミテーションとクリエーション。
そしてイノベーション。
経営のスピードと運営のコスト。
成功体験と経験法則。
6
進化とは、階段をひとつ登っては、
しばらく停滞することの繰り返しによって、
成し遂げられるものです。
そのために私たちは、模倣を過度に恥じることはないし、
創造だけをことさらに尊ぶこともないのです。
<『メッセージ』(商業界刊)より>
こんな姿勢の中から、
必ず画期的なイノベーションが生まれる。
<結城義晴>