サンフランシスコでは、
3月1日に入ってまだ5時間程度。
午前5時前。
しかし日本では、
3月1日が終わろうとしている。
その3月の商人舎標語。
「自分の強みを活かせ」
アメリカに来ていると、
ことさら、そう思う。
ピーター・ドラッカー先生の持論だが、
これだけ自分の強みを知り、
強みを主張するアメリカ人に対して、
ドラッカー先生はさらに言う。
「自分の強みを知れ、強みを活かせ」
ドラッカー先生は、
オーストリア生まれのユダヤ系アメリカ人。
私にもオーストリア人の友人が一人いる。
パリ国際食品見本市のシアルドール審査委員仲間の一人。
彼は強い個性をもっていた。
頑として曲げないところがあった。
ドラッカー先生ご自身、
「強みを知り、強みを活かす」ことによって、
生き抜き、成果を上げてきたから、
こう諭すのだと思うが、
奥ゆかしい日本人に対しては、
どれだけ強調しても足りることはない。
だから新年度が始まるときの標語。
「自分の強みを活かせ」
あなたの強みは、何ですか?
即座に答えることができますか?
あなたの店の強みは何ですか?
それをお客様に伝えていますか?伝わっていますか?
あなたの会社の強みは何ですか?
会社全体でそれを意識していますか?
弱みを直そうとするより、
強みを活かし、強みを伸ばす。
どんな人にも、
強みがあり、
弱みがある。
強みがなくて、
弱みしかない人はいない。
強みばかりで、
弱みのない人もいない。
自分よりも、他人のほうが、
強みが多くて、弱みが少ないように、
見えるかもしれないが・・・。
しかし自分でそう思っている者こそ、
自分を強調し過ぎるきらいもあるから、
人間はおもしろい。
「マエデビッチ・ジマンスキー」
ロシア人ではない。
主張は、謙虚でもいい。
自分の強みを知る者は、
謙虚なモノの見方、考え方を知っている。
自信があるからだ。
本来、「強みを知る」ことの意味は、
この謙虚さを生み出すところにある。
「自分の強みを活かせ」
今月の標語。
よろしく。
さて3月。
プロモーションの山は二つ。
3月3日(木曜日)の桃の節句。
3月21日(月曜日)の春分の日。
春分の日は三連休の最後の日。
ひな祭りの桃の節句は、祭日ではない。
桃の花が咲くころ。
桃の花は、啓蟄の頃に咲く、とされる。
今年の啓蟄は3月6日。
毎年、梅の花、桜の花はよく見るが、
生の桃の花には意外なことに、
お目にかかることがほとんどない。
それでも桃の節句。
女の子のお祭り。
例えばスーパーマーケットの場合、
主要顧客は主婦。
ターゲットはそのままひな祭りの主役。
だからこそ効果は高い。
商品にも特徴がある。
第1に、ちらし寿司。
『クックパッド』では、
「えりほのちらし寿司」が、
真っ先にヒットする。
第2に、はまぐりの吸い物。
昔の女の子の「貝合わせ」という遊びに、
はまぐりの貝殻が使われる。
トランプの「神経衰弱」のようなもので、
一対になっている貝以外には合わない。
このはまぐりの吸い物には、
「一人の男と生涯連れ添う」という願いが込められている。
考えてみると恐ろしい願いだが、
ひな祭りの必需品。
第3は、赤・白・緑三色の菱餅。
赤は、厄祓いと解毒作用があるクチナシで色づけされ、
健康を意味する。
白は、菱の実を入れ、清らかさを表す。
緑は、増血効果がある蓬(よもぎ)を入れ、若草を表わす。
春らしい三食だが、
イタリア国旗が赤・白・緑。
何の関係もないが。
第4は、雛あられ。
そして第5に白酒。神様に捧げるおみき。
ひな祭りの桃の節句は、
子どもの日の端午の節句より派手で華やか。
根底には「春の喜び」がある。
目いっぱい盛り上げて、
顧客とともに春の訪れを、愛でたい。
さてアメリカ報告。
今日は、ナゲット・マーケット。
今回のアメリカ視察の目的のひとつ。
カリフォルニア州サクラメント市に本拠を置く小売企業。
スーパーマーケットのナゲット・マーケットを9店、
ディスカウント型のスーパーウェアハウスストア「フード4レス」を3店舗展開し、
2009年度年商2億8800万ドル。
サクラメントに10店舗を展開し、
4.4%のシェアを有する。
その独特の店づくりとホスピタリティは、
規模は小さいながらも全米小売業界で知らぬ者がいない。
2月25日に最後に訪れたデイビス店。
夕闇が迫っていたが、
素晴らしい青果部門がまず、
我々を迎えてくれた。
鮮度が良くて、プレゼンテーションも素晴らしい。
その上、「安さ」を打ち出す。
さらに、ホスピタリティ。
店を出たところで、
高齢のご婦人客に出会った。
「どこから来たの?」
「日本ですよ」
高校生のアルバイトの女の子が、
杖をついたご婦人客に付き添って、カートを押していく。
そして車のトランクにショッピングバッグを丁寧にしまいこんだ。
女の子はご婦人と、ずっと話している。
まるで本当のおばあさんと孫のよう。
これがナゲット・マーケットのホスピタリティ。
店や売場の素晴らしさは、ナゲットの特長。
価格の安さも、ナゲットの武器。
それ以上にホスピタリティがナゲットの生命線。
9店舗あるナゲット・マーケットの中で、
「エル・ドラド店」を紹介しよう。
2008年オープンの最新店。
ナゲット・マーケットは、
すべての店が1店1店、
違った顔をもつ。
ファサードも異なる。
ロゴのナゲットとは「金塊」の意味。
このエル・ドラドからは砂金が出た。
ファサードはヨーロッパの街のよう。
店内は芸術品のようだ。
とりわけて入り口正面の青果部門。
このアートのような野菜売場から、
顧客は丁寧に、丁寧に、
芸術作品からピースを抜きとるように、
商品を買ってゆく。
天井には採光システムが導入されている。
青果部門サイドの果物。
青果売場のサイド。
店に入るとすぐ左手に花売場。
フローラルのインショップ。
その後ろにコスメティクスの売場。
ここが素晴らしい。
真ん中に石造りの什器。
石鹸のプレゼンテーションも美しい。
壁面のコスメティクス。
青果部門からリカー部門への導入スペースに、
島陳列。
店舗左手はワイン売場へと続く。
店舗左翼壁面は、ワインボトルでデコレーションされている。
ワイン、シャンパン、ビール、ハードリカー。
フルラインの展開がなされる。
日本のコンビニのように冷蔵ケースでビールやワインが売られている。
グレードの高いワインは特設什器に陳列。
品揃えの幅は広い。
冷凍食品売場のリーチインケース。
ウェット・ルックの床。
すなわち濡れたように見える床の輝き。
奥主通路沿いのエンド陳列。
ボリューム感いっぱいの大量陳列。
「STOP」はナゲット・マーケットの「特売」。
エンドが高々と積まれ、
真ん中に「STOP」のPOP。
青果部門の裏側の菓子売場。
コーヒーのプレゼンテーションにも、
目を引く仕掛けがある。
加工食品のゴンドラ・アイルは長い。
手前は波型什器で変化をつける。
ただしナゲットの政策はナショナル・ブランドの安売り。
競合店がプライベートブランドに特長ある商品を揃えてくると、
ナゲットの特性は消されてしまう。
それが問題。
ナゲットにも積極的なプライベートブランド開発の季節がやってきそうだ。
乳製品から、店舗右手のフードサービス部門へ。
店舗右翼は「フードサービス」コーナー。
つまり惣菜デリの対面売場が連なる。
まず、寿司売場から。
中央にセルフサービスのサラダバー、スープバー、
大皿デリ売場のアイランドがあって、
壁面は対面売場。
惣菜デリの味の面で、
ナゲットには今一歩上のレベルが要求されている。
惣菜デリの向かい側にある簡便商品売場。
エル・ドラド店を訪れる日本人は少ない。
しかし、ここにはナゲット・マーケットにしかないものが満ち溢れている。
壁に掲げられたミッション・ステートメント。
そしてナゲット・マーケットの象徴。
羽根の生えた豚。
不可能を可能にする意味が込められている。
店舗背後には新興住宅が並ぶ。
典型的なサバブ立地。
その中にナゲット・マーケットを核店にしたショッピングセンターが、
ヨーロッパの都市のように展開されている。
この光景そのものが、
芸術品のようだ。
店や売場の芸術性は、ナゲットの特長。
価格の安さも、ナゲットの武器。
ホスピタリティもナゲットの生命線。
そしてこれらの総合力こそが、
「ナゲット・マーケットの強み」なのである。
<結城義晴>