成田を発ってから6日が経過。
もう最終日。
サクラメントに2泊3日。
サンフランシスコに3泊4日。
今回も充実の小旅行だった。
まだこのブログでは、
ナゲット・マーケットの報告しかしていないが、
ほんとうに書ききれないくらいの見聞をし、
議論をし、考察をした。
朝日新聞のコラム「経済気象台」。
「幸福の支出バランス」のタイトルで深呼吸氏が、
消費支出のバランスと幸福との関係を考察している。
消費支出の各項目ごとに国を5つに分類。
第1は、「食料・飲料費が大きな割合を占める国」。
いわゆるエンゲル係数が高い国で、
アフリカ諸国やインドなどがこれに該当。
第2は「医療・保険費の割合が高い国」。
アメリカがその典型。
第3は、、「教育費の割合が高い国」。
これは韓国に代表される。
第4は、「娯楽・文化費の割合が高い国」。
イギリスが代表格で、
カナダ、スウェーデンなど「各種の幸福度ランキング上位の国々」。
幸か不幸か、ここに日本が入る。
そして、第5は、「居住・光熱費の割合が高い国」。
フランス、ドイツなど。
さらに「カナダ、スウェーデン、日本も、
重複してこのグループに入る」。
幸か不幸か。
結びの言葉は、「幸福は消費だけでは測れない。
しかし、消費のバランスが幸福とは何かと問いかけている」
これだけで、結論らしきものは見当たらない。
つまりは娯楽・文化費の割合が高い日本も、
幸福度が高いと言いたいのか。
深呼吸氏にしては、収まりのつかないコラムだが、
私には意味がある。
いま、私は医療・保険費の割合が高いアメリカにいる。
アメリカの家計支出に占める割合は、
食費が6%で、医療費が19%(2009年)。
なるほど医療費は高い。
しかしアメリカ小売業において、
ドラッグストア分野は異常ともいえるくらい発達している。
『ストアーズ』と『フォーチュン』から導き出した米国小売業ランキング。
1位 Wal-Mart 年商4050億ドル(1ドル100円換算で40兆5000億円) 店舗数 4,304店
2位 Kroger 767億ドル 3,619店
3位 Costco 714億ドル 566店
4位 Target 634億ドル 1,740店
5位 Walgreen 633億ドル 7,397店
ここまでの企業は、コストコを除いてほとんどが、
ドラッグ部門をもつ業態を中心に展開している。
そして激しく競争している。
ウォルマートはスーパーセンター、ディスカウントストア、
スーパーマーケットで薬を売っているし、
スーパーマーケットのほとんどは、
いまやフード&ドラッグだから、
クローガーもほとんどの店で薬を売っている。
ウォルグリーンはまさにドラッグストアの王者。
医療・保険費は高いかもしれないが、
その分、小売業がカバーしていることになる。
食費に関連する企業は、
ウォルマート、クローガー、コストコの3強。
ターゲットもスーパーターゲットという総合スーパーでは食品を扱っているし、
ドラッグストアのウォルグリーンも、加工食品や菓子、飲料を売っている。
6位 The Home Depot 592億ドル 1,966店
8位 Lowe’s 472億ドル 1,694店
9位 Sears Holdings 440億ドル 3,519店
10位 Best Buy 373億ドル 1,192店
この4社は、非食品系の業態だが、
それ以外は14位まで、食品関連も薬品関連も扱う企業ばかり。
7位 CVS Caremark 554億ドル 7,025店
11位 Safeway 350億ドル 1,501店
12位 Supervalu 316億ドル 2,349店
13位 Rite Aid 257億ドル 4,780店
14位 Publix Super Markets 245億ドル 1,014店
ライト・エイドがドラッグストアで、
セーフウェイ、パブリクスはスーパーマーケット。
スーパーバリュは半分が食品卸、半分がスーパーマーケット。
くりかえすが、
ほとんどのスーパーマーケットは、
フード&ドラッグだから、
食品関連と薬品関連の店は、
ほんとうに多い。
小売業が充実していれば、
この面での「幸福度」も、
少しは相殺できると考えられないか。
ドラッグ分野に関していえば、小売業、商業は、
社会の「負」からの要請に応えていることがわかる。
医療費・保険費が高いから、
多くの業態でフォラッグ関連商品を売り、
ドラッグ関連サービスを充実させる。
では、食費が安いから、
食品小売業は充実していないのか。
それは違うと思う。
アメリカでも食品分野に、
コモディティ化現象が進行していることは、確かだ。
だから価格競争は激しくなる。
そしてコモディティ・グッズは寡占化される。
その中で、いかに「ポジショニング」を確立していくか。
それがアメリカ食品小売業の課題であり、
我々のテーマでもある。
さて、ナゲット・マーケットを第1の目的にして、
このアメリカに乗り込んだ。
同社が展開する2フォーマット12店舗のうち、
2フォーマット6店舗を訪れて、
その目的は達した。
第2のターゲットは、「ホールフーズ・マーケット」。
4タイプの店を吟味して訪れた。
古い店をいかに活かしているかのモデル。
この店は地域になじんでいて、
とても良かった。
ホールフーズは全米41位のチェーンストアで、
スーパーマーケットでも第10位に入る。
昨年11月オープンの新店。
年商80億3200万ドル、伸び率1.0%。
店舗数は273店。
オーガニック&ナチュラル・スーパーマーケットとしては、
世界第1位で、独壇場。
サクラメントの新店。
左のシェリルさんと右のルーカスさんが、
丁寧に質問に応答えてくれた。
第3は、トレーダー・ジョー。
「ファースト・メイト」と呼ばれるアシスタント・マネジャーのアランさんが、
インタビューに応じてくれたうえで、記念写真。
サンフランシスコのトレーダー・ジョー。
これら以外にも、ポジショニングを明確にし、
しかも客層を広げることに成功している企業や店舗を狙って訪れた。
逆に、ポジショニングが不明確だったり、前時代的だったりして、
極端に客層が狭くなっている企業や店舗も見た。
ディスカウントタイプでは、
ウォルマート・スーパーセンターの環境対策店舗。
ご存知、世界最大の企業。
米国小売産業は、
ウォルマートを中心に回るメリーゴーラウンド。
ディスカウントタイプのもう一つは、ウィンコ・フーズ。
78店で、50億ドルのスーパー・ウェアハウスストア企業。
倉庫型ディスカウント・スーパーマーケットと理解すればいいだろう。
新しいフォーマット「ファーマーズ・マーケット」では、
まずヘンリーズ・ファーマーズ・マーケット。
37店舗のファーマーズ・マーケット企業。
そしてスプラウツ・ファーマーズ・マーケット。
アリゾナ州フェニックスに本部を置き、
現在、カリフォルニア、コロラド、テキサスに出店し、55店。
ファーマーズ・マーケットのフォーマットでは最強の企業だ。
両者は、合併する。
そして92店のチェーンストアへと成長を果たす。
セーフウェイは、ニューライフスタイル2型。
この店は、日本のスーパーマーケット企業でも手が届きそうで、
その意味で大いに学ぶ価値がある。
もう見るも無残なセーフウェイのコンベンショナル型。
さらに小型店の「ザ・マーケット」。
レイリーズも、ニュータイプと古い「ベル・エア」。
レイリーズは2010年年商35億3500万ドル。
店舗数は133店で、サクラメント第1位のシェアを持つ。
アシスタント・マネジャーのシェリーさんが、
店内ツアーをしてくれて、
その上で握手。
ベルエアは、レイリーズの傘下にあるが、
私たちに停滞することの恐ろしさを教えてくれた。
反面教師企業は、
ドレーガーズ。
高級スーパーマーケットの面影は残すが、
客層が限定され、苦しい。
現在4店舗で、年商約5000万ドル(50億円)。
アンドロニコス。
スタンフォード大学のスタンフォードショッピングセンターにある。
立地はいいが、この店も時代に取り残されている。
そしてモーリー・ストーンズ。
全9店舗で、オーガニックなど扱うワンウェイコントロール型の店。
しかしその青果部門が完全にホールフーズに後れをとっている。
そして最後に、
商売の原点を教えてくれるバークレー・ボウル。
オーナーのグレン・ヤスダさんに丁寧にご案内いただいて感激。
もう帰国の朝を迎えつつあるが、
振り返ってみても、良い勉強ができたと感じる。
私はいつも最後に言うが、
「すべてのアメリカ小売業とそこに働く人々、
それを経営する人々に心から感謝したい」
反面教師の企業にも、
感謝しなければならない。
「存在するものすべてに意味がある」
<結城義晴>